こんにちは、新入りボードゲーマーのまつながと申します。東中野のプレイ&イベントスポット、ディアシュピールでキャストをしております。ボードゲームを始めて約半年、まだまだプレイしたことのない魅力的なゲームがたくさんあるのでは!?と思っていました。
色々調べていくと、どうやらボードゲームはドイツで発展してきたことを知ります。これはきっと、ドイツ語が分かれば魅力的なボードゲームを遊べる可能性が広がると考えました。
結論だけ先に伝えると「あれ?結構いける!とりあえず続けてみよう!」といったところです。早速、順を追いながら振り返ってみたいとおもいます。
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実験の趣旨と内容
ドイツ語のルールが読めるようになれば、ドイツで買ったボードゲームを自分で翻訳でき、ボードゲームライフがさらに充実する!という私の目標に対して、少しずつ成長していく語学力の「最初の状態」でどこまでボードゲームを楽しめるのかのレポートになります。
勉強を始めた時は知らなかったのですが、どうやら「ドイツ語検定5級」というものがあることを知ります。これの合格をとりあえずの目標に、のんびり勉強してみました。ちなみに5級合格に必要な勉強はたったの約30時間ほどだそう。本記事の執筆時点で勉強開始からわずか2ヶ月ほどです。「ふ~ん、30時間でここまでなれるなら勉強してみるかなぁ」とか思ってくださると嬉しいです。
(私のマイボードゲームから確認すると、2016年6月で初めてプレイしたボードゲームはちょうど50個でした。まだ海外から直輸入でボードゲームを集めているわけでもなく、エッセンシュピールに行く予定も今のところありませんが、そのうち言語を気にせず世界中のボードゲームを遊べるようになりたいなぁ~なんて思っています。)
というわけでのんびり勉強スタート
4月に定番のNHKラジオからドイツ語学習を始めました。
5月からは文法テキストに着手。細かいスケジュールやルールは決めず時間が空いたらのんびりです。
規則性のない文法規則を暗記したり、問題を解いたりしていました。mondlyという学習アプリも見つけ、隙間時間に遊び感覚でいじっていました。そんな中ドイツ語検定の存在を知り、6月26日に受験。学習開始から2ヶ月と少しで、無事5級を取得しました!
ただしあくまでもドイツ語検定「5級」です。ここで最初の目標である「ドイツ語のルール読解」を実践してみました。(英語検定5級を想像してみてください。中学1年生で習うレベルです。)
最初は「スカルキング」を選択
スカルキングは2013年に発売されたブレント・ベック(Brent Beck)の作品で、海賊をテーマにしたトリックテイキングです。各ボードゲームショップで取り扱いがあり、値段も1500円と気軽に手に取りやすくなっています。ルールはシンプルですがゲーム中盛り上がるポイントがいくつもあり、私の好きなボードゲーム五本指に入ります。
「カタン」や「ハゲタカのえじき」くらい歴史的な作品を取り上げたほうがわかりやすいのかもしれませんが、それほどの有名作であれば完全日本語版がメーカーから発売されており、ドイツ語のルールは含まれていません。スカルキングは日本語のルールがついているもののドイツ語版も付属しているため、取り上げました。
そもそもルールを知っているゲームでルール読解というのはどうなのか、という観点もありますが、今回はご容赦ください。プレイしたことのないゲームを扱い、正解がわからないまま読み解くにはまだ早いように思います。
また、以降のドイツ語に関する情報は誤っている可能性があるのでご注意ください。
というわけで、いつもと違う感じで箱を手に取る。ドキドキ。
「ドイツ語を読むぞ!」というつもりでいざ手にとって見ると、ちょっと不思議な感じ。箱を開け、数枚入っているルール冊子のなかから、ドイツ語のものを探します。
あれ……意外とこの段階で難しい!
日本語・英語はすぐわかります。残り3つのうちどれかがドイツ語……。じっと眺めて、知っている単語がいくつか見つかり無事判別することができました。あとから気付いたのですが、普通に国旗が書かれていました(笑)アルファベットのためフランス語やイタリア語との違いは一見区別がつきません。
よし、マニュアルを開いてみよう…ゴクリ…
“Das piratenstarke Stichspiel von Brent Beck für 2-6 Spieler ab 8 Jahren”
…おお…読める! 読めるぞ!
これはかなりうれしい驚きです。「たくましい海賊たちのトリックテイキング Brent Beckから 2~6人用 8歳以上」と読むことが出来ました。最初なので、できる範囲で細かく説明を入れてみましょう。読み飛ばしてもらって構いません。
【Das】ドイツ語は名詞に性別があります。”Das”は中性名詞につく定冠詞(英語のtheのような単語)です。
【piratenstarke】この単語はそのままでは辞書に載っていませんでした。”pirat”は「海賊」、”stark”は「強い」という形で載っていました。
【Stichspiel】Stichは辞書の7番目に「【トランプ】(で勝って)札を取ること」と書いてありました。spielはボードゲームなどの「ゲーム、遊び」を指す言葉です。エッセンシュピールのシュピール。ディアシュピールのシュピール。
【von】この単語は「から」という意味です。例えばvon Brent Beckで「Brent Beckから」という意味になります。
【für 2-6 Spieler】この単語は、英語でいうforのようなものです。Spielerはシュピールする人。というわけで、für 2-6 Spielerは日本語で「2~6人用」となります。
【ab 8 Jahren】これはちょっと分からなかったのですが、英語版で確認すると「8歳以上」という意味のようです。
(辞書を引きつつではありますが)好きなボードゲームの原文を読み解くことができて、ちょっと楽しくなってきました。
意気揚々と読み進めていこうと思っていた矢先!
この調子で他の文章も・・・と思い、目を移した最初の章。いきなり罠が!
出てきたのはこちらの”?intergrund”。うーん、思いもしない罠です。最初の一文字が変わったフォントになっていて、何のアルファベットなのかすらわかりません。日本語を学ぶ外国人の方が、達筆で書かれた「な」が「た」なのか「は」なのか分からないのと同じかもしれません。
とりあえず、文字の感じと最初の章に使われているということから、単語の意味にあたりをつけ、なんとか辞書でHintergrundという単語にたどり着きました。これは英語でいうBackground、つまり日本語で読むなら(物語の)背景という意味でした。
(背景も大事だけど)とりあえずルールを読み解いてみる
ちょっと時間が掛かってしまうので背景(Hintergrund)の読解は飛ばします。さっそく本記事の趣旨でもある、ルールに近い2番目の章を読んでみます。
Spielzielにかかれていた内容。Der Wettstreit der Piraten geht über 10 Durchgänge. 続けて In jedem Durchgang müssen die Spieler anzeigen, wie viele Stiche sie in diesem Durchgang gewinnen wollen. という2つの文。
辞書を引きつつ和訳すると「ゲームの目標:海賊の10ラウンドを通した戦いです。毎ラウンド、プレイヤーは勝って取るつもりのトリック数を宣言しなければなりません」。なんとか形にはなりました。(誤訳の可能性あり)
ルールの複雑さにもよりますが、他の文章でも辞書を引きまくるとある程度理解できるのではないか、という感覚ですが、実はこのたった2文、訳すのに30分以上かかってます。やはりドイツ語検定5級レベルだとちょっと大変なようですが、時間を掛ければいけるようです。
次はハイパーロボットで試してみた
1999年発売のハイパーロボット(Rasende Roboter / Ricochet Robots)を見てみます。デザイナーのアレックス・ランドルフ(Alex Randolgh)は、今でもよく遊ばれているハゲタカのえじきやドメモ、ガイスターも作っています。ハイパーロボットのルールも確認してみました。
冒頭からいきましょう。Von Alex Randolph für eine beliebige Anzahl von Spielern. あれ、スカルキングと違って全然わからない。辞書を引くと、beliebigが「任意の」、Anzahlが「数、人数」なので、「何人でも対象の」という意味でした。
(ハイパーロボットは、壁に当たるまでまっすぐにしか進めないロボットが何手でゴールまで進めるかを頭の中で考える、パズルのようなゲームです。みんなで詰将棋をするような感覚でプレイ感は地味ですが、コンポーネントはかっこよく、何人でも同時に遊べるというのはボードゲーム会でのつなぎにとても便利です。)
最後にフンギでも試してみた
最後に2012年発売、ブレント・ポヴィス(Brent Povis)のフンギ(Fungi)で試しました。二人用ゲームはギスギスした雰囲気になりがちですが、このゲームは違います。森にキノコ狩りに出かけておいしく調理しましょう、というテーマのため、始終和やかにプレイできます。絵がたいへん美しく、眺めているだけでも癒されます。
冒頭の文章は、Ein schmackhaftes Kartenspiel für 2 Spieler ab 10 Jahren von Brent Povisです。
für 2 Spielerは「2人用」、ab 10 Jahrenは「10歳以上」、von Brent Povisは、スカルキングに出てきた書き方と同じで「Brent Povisから」となります。schmackhaftesは辞書を引くと「美味しい」という意味で、Ein schmackhaftes Kartenspielで「美味しいカードゲーム」という意味でした。(日本語ルールでは「味のあるカードゲーム」と紹介されていて、こちらのほうが洒落を利かした正しい表現(意訳)なのかもしれません。)
ちなみにフンギでは、他のゲームでは出てこないであろう単語がたくさん出てきます。Hallimasch、Judasohr、Schopf-Tintling、Klapperschwamm…。どれもキノコの名前です。なぜかシイタケはShiitakeです。
3作品を参考に頻出する単語をまとめてみる
さて、3つのゲームのルールに目を通したところで、ボードゲーム頻出単語トップ5(今の体感値より算出)です。単語を知っていれば、早見表のような短い文章なら和訳シールを貼らなくても理解できそうです。
【1位】Karten:カード。Sonderkartenは「特殊カード」です。
【2位】Punkte:点。Pluspunkteは「加点」、Minuspunkteは「減点」です。
【3位】Durchgang:一回り、ラウンド。
【4位】Uhrzeigersinn:時計回り。
【5位】Ziel:目的、目的地、目標。
ボードゲームライフにおけるドイツ語の必要性
ここまできて正直に言ってしまうと、英語版ルールがついている限りドイツ語は必要ないとルールを読んでいて思いました。英語が苦手な人でも、これからドイツ語を英語の読解力以上にまで上達させるのは結構大変です。ドイツ語の単語は英語と似ていることがあり辞書を引かなくてもわかるときがあるのですが、それならばそもそも英語で読めばいいという話になってしまいます。
しかしドイツ語を学ぶことが全く無駄かというと、そんなこともないと思っています。英語版ルールすらつかない、ドイツで発売直後のゲームを遊びたくなることがこれからあるかもしれません。エッセンシュピールをゲームマーケット感覚で楽しめるようになるかもしれません。
また、意外だったのは、ドイツ語検定5級という初級レベルであっても、ある程度ルールを読み解くことはできるということです。5級でも文の組み立てに最低限必要な主語(“ihr”:「あなたたち」)や動詞(“sein”:英語でいうbe動詞)は学べます。ドイツ語は単語の並び順が英語と若干異なるので、少し勉強して文構造も押さえておくことは大事でした。
※ただし、複雑なルールのボードゲームは未知数です。今回の実験対象がスカルキング、ハイパーロボット、フンギだった上での感想だということを思い出してください。
私はモチベーション維持のためにドイツ語検定を受けましたが、特に受ける必要はありません。5級の取得目安学習時間は30時間とのことです。趣味の学習なら期限もありません。のんびりいきましょう。一回学んでしまえば、エッセンシュピール、ドイツからボードゲーム直輸入という夢が広がるので、私は引き続き勉強してみようと思っています!
あとがき
私は冬にも検定を受けようかなあ、と思っています。いつか本当に日本では知られていないボードゲームを翻訳できればいいですね。(あくまでボードゲームのプレイ自体に支障がない程度に、ですが。)
普段はボドゲーマにてプレイしたボードゲームのおすすめレビューを書いたりしておりますので、どなたでもフォローお待ちしております。
管理人から一言
ボドゲーマのオープン当初から応援してくださっている、まつながさんにご寄稿いただきました。実はまつながさんには今回の執筆だけでなく、動作テストやバグ報告、改善提案までしていただいたりと、いつも感謝しています。
ついには執筆までいただくことになり、せめてもの御礼として、今後のボードゲーム業界における活動を少しでも円滑化できるように、「ボドゲーマ公認キュレーター #1」という肩書みたいなものと、専用の名刺をご提供させていただいています。
もし会う機会がある方は「ドイツ語の記事おもしろかったよ!」と一言お声掛けしていただければ幸いです。書きたいネタが既にいくつか控えているようですので、次回も乞うご期待くださいm(__)m
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