こんにちは、まつながです。
ボドゲーマは2016年の3月にサービスを開始し、約1年半経過しました。一区切りということで、ボードゲーム業界を長くに渡り牽引しているボードゲームのデータベースサービス、play:game代表の佐藤朗さんとボドゲーマとの橋渡しをしてくれた彼葉さんをお呼びして、座談会を行いました。
ボドゲーマの開始にあたっての出来事を振り返ったり、play:gameを通して得られた運用ノウハウを語っていただきました。play:gameをご存じで、ボードゲーム歴の長い方にこそお楽しみいただける記事になっていると思います。
せっかくなので、おふたりにボドゲーマに対する要望も伺ってみました!ボドゲーマのこれからの開発について、少し話しています。
play:game:2004年に開始された、ボードゲーム(主にドイツボードゲーム・カードゲーム)の情報交換を目的としたファンサイト。play:gameボードゲーム・データベースでは、BoardGameGeek(※)を参考に、ボードゲームに関する情報・画像・ファイルなどをまとめて管理し、いつでもその情報を閲覧できるような仕組みを提供しようと開発された。
BoardGameGeek:アメリカの、ボードゲームのデータベース。世界中の約100,000のボードゲームが登録されており、基本的に英語だが、多くの日本人ボードゲーマーも愛用している。レビューや動画の投稿なども活発にされている。
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play:gameとボドゲーマの連携
ボドゲーマ代表の若狭です。本日はよろしくお願いします。
play:game代表の佐藤です。よろしくお願いします!
今回の座談会のテーマですが、歴史あるplay:gameボードゲーム・データベース(以降「play:game」)と、後発である私たちボドゲーマが座談会をしたら面白いトークになるんじゃないかって思いまして。
あと風の噂で聞いたのですが、play:gameとボドゲーマが対立構造になっていると考えている方がいるようです。
対立構造!そんなの全然ないのに。でも、僕も聞いたことあります。
オープン当初は今ほど機能はなく、play:gameとボドゲーマは分かりやすい比較対象に見えたと思います。誰かが「対立してるかも!普通に考ればそうだ!」と言い出し、それが独り歩きしてしまったのかも?
実際、いくつかお問い合わせが来た中に「あなたはplay:gameを知らないんですか」「BoardGameGeekの方が便利ですよ」という内容もありました。善意で諭してくれてるわけではなく、存在を否定したいという温度感でした。一人ひとり丁寧にビジョンやコンセプトを説明したら、理解していただけた方が多かったのは救いです。
ただ、この反応は氷山の一角だと思うと、比較対象として、対立構造としてふんわり認識してる人は、少なくないんだと思います。
今回、ボードゲーム王とplay:game創始者のお二方と対談させていただくことで、払拭できるものがあるんではなかろうかと思っています。
ボードゲーム王:2017/8/20にすごろくや主催で開催された「ボードゲーム王選手権2017」で、彼葉さんたち3人のチームが優勝。
えっ、だとしたら遅すぎませんか!?(笑)
ボドゲーマはもうだいぶ市民権を得ていると思いますよ。
えっ、今更感ありましたか?あまり実感なくて
ボドゲーマとplay:gameは提携したらいいんじゃないですか?って僕たちをつなげて紹介してくれたの、彼葉さんでしたね。
いやあ、さっき若狭さんがおっしゃった問い合わせですが、例えば僕に聞こえてきたのは、「ボドゲーマは1からデータを作っているんだろうけどplay:gameがあるから無駄だ」といった内容ですね。
じゃあ提携すればいいんじゃないの?って思ったから声をかけただけですよ。
とてもありがたかったです。後日佐藤さんに主旨やコンセプトを説明し、データベースを共有していただくことができました。
レビューや会員データを除く、ボードゲームデータやメカニクス等の管理・ヒモ付情報を継承しています。
足りないデータはひとつひとつ手で入力して作ったんですか?
そうです。コワーキングスペースにこもって、ボードゲーム関連の書籍や雑誌を15冊くらい見ながら入力していたのですが、本によってフォーマットも違うし、データが抜けてるのもあるし、腱鞘炎になりそうになりながら入力していました。
ちなみに、若狭さんからplay:gameに「声をかけてみよう」とならなかったのは、やっぱり言いづらかったからですか?
「声をかける」という発想がなかったです。頂いた問い合わせ通り、客観的に見ると、どう考えてもplay:gameとボドゲーマは競合サービスとして括られるのが自然です。
法人事業に重ね合わせると考えやすいですが、御社の資産であるサービスのデータベースを当社に共有してください、みたいなこと、考えもしないですよね。最初から連携してくれるなんて思いもしませんでした。
コンセプトの違いが実際にサービスとして表面化するまで、コンタクトを取ろうと思っていなかったです。
まぁ、そうですよね。きっとそうなんじゃないかなーって思って、声を掛けてみようと思ったんです。
類似した新しいサービスができることに対する拒否感やマイナスイメージは、正直ありましたか?
いやそんな、全然ありませんでしたよ。ほんとに。
会員情報は個人情報なのでもちろん渡せませんが、ボードゲームのデータは外に出す了承をユーザから得ているので、使えるものは使ってほしいんです。
ボドゲーマ以外からもデータを分けてほしいという話が来ることはあるのですが、なかでも印象的だったのはデータベースの権利を売ってほしいっていう話です。話を聞いてみると「カジノの情報サイトやっているので権利売ってください」「アフェリエイトでちょっと利益を得たいので」とか。さすがにそれは無理です、って断りました。
play:gameについて色々質問
開発は佐藤さんがおひとりでされているんですか?
開発は自分ひとりですね。
コンテンツの認証や管理は、共同アドミニストレータの方々であるけがわさん、ふうかさん、Karokuさん、小野卓也さんに助けてもらっています。
どういった思いで作り始めたんですか?
単純に「あったら便利なんじゃない?」って思って作りました。海外のボードゲームのデータベースはBoardGameGeekがあって、日本にもビデオゲームのデータベースはあったので、ボードゲームのデータベースもあったら便利だなって思い。
2003年から半年くらいかけて、仕事の隙間をみて個人的に作っていました。データは有志の方が入力してくださいました。
2004年にサービスはオープンしました。そのころはWebページのデザインを設定する"Stylesheet"がやっと一般化しはじめたころで、Webブラウザがぎりぎりサポートし始めたころでした。作りはサービス開始当初から今までほとんど変わってません。
HTMLを見ていただけるとわかると思うんですが、2005年くらいで追加の開発も終わって、以降基本的に開発は行っていません。
現在のplay:gameのデータベース登録内容はどれくらいですか?
会員:1500名
ゲーム:8,000個
デザイナー:940名
イラストレーター:340名
メーカー:530社
ユーザ評価数:94,000件
コメント:24,000件
です。
会員数はここ数年でほとんど増えていないので、結局のところ、昔からのボードゲーマーが使い続けている状態です。僕も、昨日画像をアップロードしたんですが、2~3年ぶりに使いました(笑)
(笑)
(笑)
play:gameの画面を見ながら、当時のことを振り返る佐藤さんと彼葉さん
今はどのようにな対応をされていますか?
開発はしていませんが、依頼があればデータの修正は対応しています。
PHPで開発されているのですね
Perl(※)はデバッグが難しいため、PHP(※)を選びました。
本業はコンピューターグラフィックスやアニメーターで、もともとプログラミングはできませんでした。勉強しながら作りました。
PHP:今ではWeb業界で最も利用されているプログラミング言語。当時は本当に新しかった。
Perl:PHPが一般的になるまえに主流だったプログラミング言語。掲示板等の受発信機能は大体Perlだった時代がある。
あの頃のWebアプリケーションといえばPerlだらけだった記憶です。
「あのPHPがボードゲーム業界に!!先鋭的!!」っていう衝撃が当時の技術者にはあったかもしれません。
当時は今ほど簡単にググれば解決する時代ではなかったですよね。利用者の少ないころの言語は、習得が本当に大変そうです。
文献もいろいろ読んで勉強していってました。当時大変だったのは、ドイツのボードゲームによくある、ウムラウト文字(ÄやÖなどアルファベットの上に点がついた文字)の保存方法です。
今でこそあらゆる文字が表示できる「UTF-8」という文字コードに切り替えてありますが、当時はサーバも含めて出力部分かデータベースが「Shift_JIS」という文字種類の少なく、ウムラウトが使えないもので固定されていました。ウムラウトならその文字の後にeをつけて登録するようにしてもらっていました。
他にも当時大変だったことはありますか?
サービスに対する周りとの温度差ですかね。
ある日、play:gameをどういう風にしていきたいかを話し合う座談会が設けられました。行ったらなかなか大変なことになりまして、サービスに対して、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいって、たくさん要望が出てきてしまって。ああー無理!僕ひとりでやってるだけなのにー!って心の中で叫んでいました。
僕があまりにも快い返事をしないので、結局要望を出してもこの人は何もやってくれないんじゃない?っていう雰囲気で終わってしまって……。
場を設けてくださった方には申し訳ない限りなのですが、開発せずにすんでよかったーって思いました(笑)
なんでこんなことになったかというと、当時ボードゲームも今ほど流行っていなくて、play:gameはこれからボードゲームが一般化していくために必要なツールだ!とお題目が掲げられていて、期待値がすごく高くて……。
サービスあるあるですね。
ボードゲーム業界やWebサービスに限らずですが、周囲の人達は思ったより意見はくれるし、期待はしてくれる。でもいざ完成したところで思ったより使ってもらえないし、盛り上げてくれるわけでもないし、もちろん開発を手伝ってもらえるわけでもない。
温度差に飲まれて軽いノリで対応してこなかったからこそ、今の形になって、運用が回ってるんだと思います。
まさか佐藤さんがシステムについて一から勉強してplay:gameを作ったなんてみんな思っていなくて、ちょっとやればいろいろできると思っちゃったんじゃないでしょうか。
僕も、プログラマーではない人が隙間時間に作っていたというのはびっくりしました。今まで、システム開発が本職の人が片手間で作っていると思っていました。
Webサービスあるあるを語り合う。まさか本業じゃない方がplay:gameを始めたなんて!
開発をしなくなったのには理由があるんですか?
特別何かあったわけではないです。放置していても運用されているので、いいかなって。
もし何か変えていこうすると、全部書き直しから始める必要が出てきます。これは大変だーって。
サービスを維持するにもサーバ代がかかると思いますが、どうしているんですか?
レンタルサーバーを借りています。サーバー管理費は1年で18,000円くらい払っています。
同じサーバにヤポンブランド(※)のWebサイトが乗っていたころもあるんですよ。プロジェクトの初期にほんの少し関わらせていただいて、ロゴを作らせていただきました。
ヤポンブランド:日本のボードゲームを海外にも普及するため、海外イベントにブースを出展するなどの活動をしている一般社団法人。
なぜサーバ代や工数を回収できるようなマネタイズをしなかったんですか?
今やるなら、アフィリエイトもありますし、考えていたと思います。
でもそのころは僕個人の話ではなく市場規模がマネタイズできるレベルではまったくなかったんです。ボードゲームという趣味、お金がかかるものだーと割り切ってやっていました。
ボドゲーマの場合は約2年前からのスタートです。色々違った市況感のなか、新しい開発技術で運営しています。Webサービスとして利益が出せるほど市場規模は大きくないので、やっぱりまだまだ厳しいんですが、ユーザーや市場関係者のメリットを追求し続けることで、サイトの売上増加に繋がるようにしておき、いずれ運営費を回収できる仕組みにしています。
今も機能開発を継続していられる、大切な原動力です。
そうですね。もし今はじめるんだったら、僕も全く同じような考えで始めていると思います。
ユーザーからはどういう要望が来ますか?
一時期「未プレイにつき未評価」の投稿に対して、改善要望がたくさんきました。更新情報に新着情報が出ているのをたどると、「未プレイにつき未評価」ってだけ書かれていることがあると。
「未プレイにつき未評価」って書かれたTシャツまで出てきて、「これは社会問題ですよ、佐藤さん!」っていろんな人が言ってきました。
Tシャツ(笑)作った人おもしろすぎですね。
僕は問題だと思っていなかったんですが、ちょっと炎上してたので、その言葉が含まれるコメントは、更新情報に表示されないようにフィルタを入れました。
当時の温度感を知らないと、よくわからないと思うので補足します。その頃は得られる情報源が非常に限られていて、当時のボードゲーマーはplay:gameのコメントをとても楽しみにしてたんです。それで、更新一覧のページをチェックしてた人が多かったんですよ。
だけれども、いざそのコメントを見に行くと「未プレイにつき未評価」って出てくるばかりである、と。すごく残念なんですよね。
「play:gameの運用を代わろうか?」って言ってくる人はいないんですか?
みんな忙しいのでなかなか…。やぶさかではないんですけどね。
ありがたいことに放置していても使ってくれているユーザーはいるので、閉鎖せずにそのまま残しますよ。ただ、忙しくて改修要望とか上がってきても、対応する時間はないって10年くらい言ってるんです。
そのせいで、佐藤さん忙しいらしいよーって周りの人がよく言ってます(笑)
それ、なぜか僕も聞いたことがあります。佐藤さんは忙しい人だって(笑)
ボードゲーム業界の過去について
今回の座談会の会場には、ディアシュピールツヴァイをお借りしました。とてもきれいなお部屋です。ありがとうございます。
15年くらいボードゲームされていて、当時と今では業界全体の雰囲気も違いますか?
全然違いますよ。単純に日本語版ボードゲームが毎年いくつもでるじゃないですか。昔では考えられない状態です。
昔は、日本語版を出すというのは社運をかけて行うものでした。
最初にカタンを発売した国内メーカーもそうですし、チケット・トゥ・ライドを発売した会社もそうです。ボードゲームから撤退しているので失敗しちゃったように見えますが、どうしたって成功しようがない状態だったんです。
というのも、当時は「日本全体のボードゲーム愛好者が3,000人いればいいほう」と言われていました。そんな市場規模がないときにばーんって販売開始しても最大3,000個です。しかも、その3,000人全員が買うわけでもないですし。
今でも「ボードゲームは知らないけどカタンなら知ってる」って人はいます。普及効果が結構あったんだなって思います。
昔はボードゲームが買えるところは、メビウスとバネストと広島プレイスペースの3か所くらいでした。play:gameを見て「これ、どこで買えますか?」って問い合わせが来たんです。
同人のゲームはもともと30個とかしか作らずにゲームマーケットで売り切りっていうこともありましたから、販売数の少ない同人ボードゲームは、play:gameへの登録をお断りしているんです。当時は広報をするサークルも少なく、インターネット上に情報もありませんでしたから。
play:gameのゲーム情報にある「絶版」タグは、「どこで買えますか?」っていう問い合わせを無くすためなんですか?
そうですね。最初、販売されたら数ヶ月後に自動で「絶版」タグをつける仕組みにする予定でした。
ただ、一度出たボードゲームの再販は珍しいケースだと考えていたけど、リメイクもあるぞって途中で気づいて。ややこしくなりそうだったので自動処理はつけませんでした。
そういえば、メビウス訳やバネスト訳の公開は、周りの協力もあってすることができましたね。
当時、絶版になったものはルールを公開しようっていう流れだったんです。ルールを公開していると、利用者も増えますし。
ボドゲーマには、お菓子メーカーが発売しているチョコレートのパズルまで登録してあって、これボードゲームなのかな?って思いました。
ボドゲーマは幅広く登録しています。チョコレートのそれも、先入観を抜きにすればボードゲームに分類されてても違和感ないとおもって。
ただ、ボードゲーム、アナログゲーム、カードゲーム、テーブルゲーム、ウォーゲーム。ここらへんは曖昧な定義で運用しているのは事実です。今でもよく悩むのが、デパートのおもちゃコーナーにあるやつ。
ボードゲーム業界の未来について
これから10年、ボードゲーム人口は増え続けるでしょうか
増えるといいですね。最近のボードゲームの人口増加はブームが来ているだけだってっていう見方もできます。芸能人がボードゲームをやっていたり、子供の教育にいいって言われたりしているようですが、ボードゲームが文化として日本に根付くかどうかはまだわかりません。
いけそうな気はしているんです。ここ数年の人口増加には火付け役はいなくて、企業主体ではなく自然と盛り上がっている気がしています。
パイが大きくなってくると別の市場にいる企業が参入してくるので、その企業が収益をあげられる規模で市場が維持できるかっていうところでしょうね。
広告代理店が入ってきたりして大規模なショップが生まれると、昔からある小さな小売店は経営が難しくなってくるので、いいことばかりではなさそうです。
ボドゲーマを作る前に色々調べたのですが、2~3年置きくらいに「ついにボードゲーム業界にブームが来た!」って言っている感じでした。僕には、今回がどういう雰囲気か比べられませんが、たぶん、今回はいつもとは違うんだろうなと考えています。特に象徴的なのは、新しいボードゲームカフェが沢山オープンしていることです。
点というより面としての広がりです。より多くの人にとってどんどん体験機会が身近なものになってますよね。物理的に。これまでとは違う広がり方につながることは間違いないと思います。
ただ気になるのは、一般的な料金設定が経営ギリギリのところなので、ちょっと来店者が不足するとすぐに倒産危機がやってくるあたり。ここは色々な店舗に相場の事情を聞いてみたいです。
いくつかのボードゲームカフェは開店後値上がりをして、今は3,000円ないと遊べないですよね。雨後のたけのこみたいにどんどんできているから、値上げした店は安い店とも戦っていかないといけません。共倒れになりそうです。
ただ、10分で行けるから行こうとか、会社帰りに寄って行こうとかっていう動きはあるので、コンビニみたいな感じで各地にできるだけの需要はまだある気がします。
そういえば、ボードゲームカフェって何店舗まで増えるんだろうと思って、麻雀人口と雀荘数をボードゲームカフェ業界に当てはめてみました。結果、5年後くらいにはボードゲームカフェが1000店舗前後くらいまではいけるという計算となりました。
ボードゲーム人口の見込み増加数に合わせた店舗数計算なので、イマイチ実感沸かないですけど。雀荘10店舗見かけたらボードゲームカフェが1店舗ある、くらいです。
ただ、本当に1000店舗まで増えたとしたら、ボードゲーム人口が増え続けていないと倒産と開店を繰り返さざるを得ない業態なるかもしれません。市場が需給バランスを保つ反応になるとき、供給側の激しい競争時代に入っていくかと思います。
何か気になる話題はありますか?
メーカーに関して言うと、大手アスモデが日本のどこかの企業を合併してくるかも、なんて。
世界的に合併が進んでいる流れは危険ですよね。合併していくっていうのは国をまたいで多様性がなくなっていくってことでしょう。
世界的には伸びしろがないんだなって感じてしまいますね。みんなで合併して力をあわせて市場規模を維持しようとしているのかなって。市場の内部で争っているとこれからはやばいから、力合わせようぜって。
日本、アジアはまだ伸びしろがあると思いますよ。
日本を中心としたアジアのボードゲーム市場の形成をすることで、世界的にインパクトのあるレベルで、分母を増やせるかもしれないと考えています。
本場はドイツだからドイツを目指すしかないって思いがちですが、ヨーロッパで物を売買するとなると、輸送費が乗る分コストや価格は下げられません。アジア圏の人がヨーロッパのボードゲーム市場に参入しようとしてもきついものがある。
日本人はアジア圏で作品売買できるようになると、もっと流通コストが抑えられます。日本だけで成立させるにはとても難しいですが、アジアには経済大国の中国と日本、親日の台湾、韓国もいます。アジアで繋がったら、ドイツ、フランス、スペインみたいに、経済合理性も兼ね揃えた市場になって、アジア中心の市場がいつか誕生させられるかもしれない。
同人のボードゲームはこれからどうなると思いますか?
学校の休み時間にできることは文化として広がりやすいとどこかで聞きました。
同人のボードゲームは所要時間が10分程度が多いので、子供の間で流行ったら、大人になってもボードゲームがあるって知っているので、文化になっていくんじゃないでしょうか。
ただ、同人のボードゲーム作っている人は、作りたいから作るって人が大半じゃないですか。なぜなら、同人だから。
こういうゲームがあったら売れるとか、こういうゲームは布教に役に立つとか、そういう目的で作らないから、文化の定着になるほどうまくいかないだろうなって思います。僕は同人のボードゲームのスタンスが好きなんですけどね。
同人のボードゲームデザイナーは、売り上げに対する意識をもっと強く持ってもいいなって思います。
売れるというのは価値があると思ってもらった実績です。売り上げは面白さのバロメータとして大事だと思うんですけどね。
そこについては、面白さと売り上げはイコールではないと考えています。
売り上げを良くしようと思うと、見た目をよくするとか広報をして露出を高くするとか、ゲームデザイナーはゲームを面白くしようっていうこと以外をしなければいけなくなるんです。
ゲームデザイン以外の活動を他の人に任せられたらいいんですけどね。
他にも、売れ筋を作る流れが出来てしまうと、みんな同じものになって面白くなくなってしまうと考えています。
幸いなことに、今日本ではたくさんの人がボードゲームを作っています。ドイツでは考えられないくらい、日本には自らアイディアを出そうとする人が多いんです。見た目が悪かろうが、いいアイディアはあるはずです。
傑作って数多くのアイディアから偶然生まれると思っています。その傑作を、企業がひっぱっていって売るのが一番いいと思っています。
ボードゲームデザイナーが、楽しいゲームを作ろうぜ!ってただ作って、まぐれでもいいのができたとしたら、みんな幸せだなって思いますね。
僕は個人的な意見でずっと言っているんですが、同人のボードゲームデザイナーはなるべく本名を使ったほうがいいと思います。ペンネームだと海外ではデザイナーとして認識されにくいですし、デザイナー名をもっと主張していかないといけないなと。
アメリカはもともと作家性がなく、おもちゃ会社が会社名でボードゲームを作っていましたが、その後デザイナー名を明記し作家性を持ったボードゲームが支持されて今があります。その歴史の中で、わざわざ作家性を下げるようなペンネームの使用はどうかなって思うんです。
少しづつ、海外から注目を浴びる作品もあるのですが、タイトルに英語表記がなくて、日本語を読めない外国人がそのまま去っていきます。もったいないなと思っています。日本のボードゲーム情報を探している外国人が情報を得ていってくれるように、ボドゲーマではアルファベット表記は必須項目にし、表示するようにしています。
一年中未来は、シュピールでブースを出展されると伺いました。
シュピールでは、日本で発売したコトバモドスの海外版、ぽんこつファクトリーを販売予定です。
日本だけじゃなくドイツで、版権を売るんじゃなくて自分で作って自分で卸すと、生きていけるくらいは儲かるんじゃないかなっていう実験です。
版権を売って暮らすってなると、すごくたくさん作って、ヒット作も出さないと、生きていけません。
ドイツを見ていると、1000とか2000くらい売れるようになると、おそらくゲームデザイナーとして生きていけるんじゃないかって目途があり、トーキョー・ハイウェイのittenさんと合同で、試しにエッセンでブースを出します。
会社辞めるつもりはないんですけど、挑戦の意味も込めてやってみます。
シュピール:ドイツで毎年10月に開催されるボードゲームの祭典。世界中のメーカーから一押しの新作が発表される。
一年中未来:彼葉さんが代表をされている、「大怪獣コトバモドス」などを制作しているボードゲームサークル。
おまけ:ボドゲーマへの要望
ボドゲーマに必要な機能はありますか?
僕はフォロー機能をより押し出して使いやすくしてほしいですね。BoardGameGeekでは好きな人をフォローしたり、レビュー評価で納得できる人をフォローしたりして使っているので。
フォロー機能自体はあるので、フォローしている人たち全体の、レビューを書いた記録とかの情報はタイムラインで見れますよ。ただ、あまり使われていないのが現状です。
そうですね、大きく3つかな。
まず1つ目ですが、評価機能です。
ただ、評価機能をつけないというのもサービス提供者のポリシーや哲学の話なので、つけないっていうんだったらそれもいいと思いますよ。
評価機能はボドゲーマの掲示板でも要望があがっていて考えてはいるのですが、刺激的な機能になるので、具体的にどのように作るかまだ決めていません。
低評価がついたことを受けいられない人もいてクレームや風評被害に発展することもあるでしょうし、自作自演の高評価が行われて信憑性にかける結果になることへの対策も考えなくてはいけないです。
昔BoardGameGeekで評価1をつけたら、作者から名指しで怒られたことがあります……。きちんとそのゲームを遊んで、ゲームとして成り立っていないから1をつけたのに、デザイナーが撤回しろ!って連絡してきて、びっくりしました。
今は五つ星のマークをつけています。ちょっとややこしい計算は入っていますが、ざっくり経験数に対するお気に入り数、便宜的なお気に入り率を五つ星で表現しています。
意味のある評価になるためには評価数も必要になってきますよね。
ボードゲームを遊んでいると、集まったメンバーや雰囲気といったセッション自体の面白さがあって、ボードゲームの出来不出来じゃないところで面白かった、つまらなかったって思うことがあります。面白かったセッションで遊んだ4人がそのまま高い評価を書き込み、その評価しかなければ、あたかもこのボードゲーム自体が面白いって見えてしまいます。
だから、評価には母数はとても大事です。
そうですね。実装する際は、評価を出すための計算式も考えてみます。
2つ目ですが、ユーザミュート機能です。
僕も相変わらず更新情報を楽しみにしてボドゲーマに見に行くんですが、あまり参考にならないことを書くユーザもいるので、そのユーザの投稿をミュートにできると必要な情報にたどり着きやすくなるのでいいなって思います。
それはすぐできます。開発タスクに入れておきますね。
というのも、ボドゲーマってもっとユーザ間の交流のサイトだと思っているので、それを実現するためにもミュートやブロックの機能があってもいいなって思います。
ユーザ間の交流に関しては、今投稿に対するコメント機能を検討しています。
交流はすごく推進していきたいので検討しているのですが、水掛け論がはじまって炎上化しないか懸念しています。例えば、プレイヤーがノットフォーミー(自分好みではない)という書き込みをすれば、そのボードゲームが好きな人が反論するのは容易に想像できます。人格攻撃とか始まったらどうしよう、って感じです。
実装するからには出来るだけ自由な交流場にしたいので、荒れてるから削除、みたいな過干渉はやりたくありません。かといって、迂闊に書いたら噛みつかれる文化や雰囲気が根付いてしまって、気軽に利用できるサービスじゃなくなるのも避けたいです。
井戸端会議みたいなサービスだったら良いんですけどね。交流の場ではなく、情報流通量の増加、活性化が目的なので、目的を阻害しないルールを考えてから実装したいと思っています。
最後に3つ目ですが、もっと気軽に文章を書けるような仕組みですかね。
play:gameは一言コメントが書きやすいフォーマットなんです。一言コメントと評価7点って書けば、それだけで投稿できます。
ボドゲーマは原稿用紙みたいに大きな紙がどんってあって、1、2行で終わるのは忍びなく感じます。
それは意図があってそうしています。1、2行とかは更新情報にも出てこないようになっています。
一言コメントはTwitterでやってもらえればいいかなっていうスタンスです。
えー……。むしろ僕は一言コメントのほうを見たいなあ。
BoardGameGeekだと評価のところは1、2行で、レビューはフォーラムに上げるようになっています。自分は、いろいろ書いてあっても、読むのは最後の1行くらいです。端的に評価と感想を聞きたいなと思います。
ただ、しっかりしたレビューがたくさんあるサイトとしての地位を固めていくのであれば、それも価値のあることだと思います。そういう文章は、ボドゲーマがなければみんなばらばらのブログに書いちゃうので。
なるほど、一言コメントをレビューとは別の機能に分けるのはありかもしれないですね。彼葉さんの仰られたコアユーザー同士の「言わずもがな」のコミュニケーションレベルは、知識量の多い人が察し合う形なので、現在のレビュー機能の目的と異なる用途です。
短文非推奨の理由は、ボドゲーマのコンセプトの1つ「興味を趣味に変える」という、ライトユーザー向けの入口を提供したいという部分がとても大きいです。ボードゲームに興味をもってふらっと訪れてくれたライトユーザーが「これはなかなかいい」「このゲームは最高に自分にあっている」という一言コメントを見てもよくわからないのではと。
読んでみて自分の趣向に合うかどうかは別の話ですけど、閲覧者がやってみたいかどうか判断できる状態を、重視しています。例えば、ボードゲームに興味をもった新しい人が手始めに選ぶとき、投稿データやマイボードゲームの評価データが集約されているおすすめランキングは、非常に有用なコンテンツとなっています。
確かに、質の高いレビューがあることは重要ですね。
気軽さという意味だと、スマホからの操作性も重要ですね。よく言われるのは、スマホはどうせ使うので、スマホの中で完結したいっていうことですね。
ボードゲームを遊んだら、スマホで得点や感想、だれと遊んだか、メモ程度に記録したいという要望です。スマホで写真を撮って、それをパソコンに移して、というのは今の時代なかなかしませんから。
おお、アプリ化したらやりたいことの筆頭がそれです。
僕もよく終了時に楽しかったなと思って写真撮るんですけど、誰に見られることもなく眠ってるだけなのがもったいなくて。アプリからカメラ起動して、写真を撮ってマイボードゲームと紐づけたり、その場にいた参加者と記録や思い出を共有できるようにしたい。
いいですね。このゲーム遊んだの半年前なんだ、とか、このゲームもう10回遊んだんだ、とかってわかるのは楽しいじゃないですか。
プレイ記録はplay:gameにもBoardGameGeekにもある機能ですしね。評価や得点を都度記録できるのは楽しいものです。
今のボドゲーマはボードゲームに対してお気に入りかそうでないかの二択なので、少し寂しく思います。
ボードゲームで遊んでる時は、とりあえずみんなボドゲーマのアプリを起動してる、くらい機能を充実させていきたい…とは思っています。仕事が忙しいので対応は少しあとになってしまいますが。
情報の受発信機能や、店舗や会員同士の繋がり、データベースがメインコンテンツなので、その手の記録系は注力する部分になると思います。
直近は、最近リリースした通販ページの拡張を進めていく予定です。マーケットプレイス化をしたいと考えていて。
国内デザイナーの作りすぎてしまって抱えている在庫を、もう一度流通させられる場にしたいと考えています。まだ通販が波に乗れていないので、今作ってもただ売れない販売チャネルに登録作業だけしてもらう状態になってしまうので、まずは商品流通量を高めている状態です。
在庫がキャッシュとして帰ってくれば、ボードゲームを作る意欲がある人が次のボードゲームの作成に資金を回せますしね。資金の巡りをもっと潤滑にすれば、国産ゲームってもっと質も数もレベルアップしていくと思っています。ドイツゲームはやっぱり面白いですけど、同じくらい面白い国産ゲームがあればそっちをやりたい。
その通りで、僕も在庫がはけないと作れないなって感じています。
ボードゲームには総合通販サイトってなかったので、今まではボードゲームによってばらばらの場所で買う必要がありました。ボドゲーマの通信販売ではものすごい件数を一括で買えるので、手間もかからないですし、送料的にもすごくいい。
同人ゲームも同じように買えると、すごく便利かもしれませんね。
おわりに
佐藤さん、彼葉さん、たくさんお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。おふたりにご協力いただけたことで、今のボドゲーマがあります。最近ボドゲーマの新機能はリリースできていませんが、現在体制を整えているところで、これからまたよりユーザさんにお使いいただきやすい機能をリリースしていく予定です。今後ともよろしくお願いいたします。
「参考になりそう」「後で読む」「面白かった」と思った方はSNSボタンをクリックしてくれると嬉しいですm(__)m