【第ニ弾】ボードゲームカフェ「コロコロ堂」の開業までの道のりや今後について詳しく聞いてきた取材協力:コロコロ堂代表 岩井 俊憲さん

【第ニ弾】ボードゲームカフェの開業を考えてる人のためにコロコロ堂に色々聞いてきた
2016年9月4日
ボドゲーマ公認キュレーター:まつなが

こんにちは、まつながです。東中野のプレイ&イベントスポット、ディアシュピールでキャストをしつつ、都内のボードゲームカフェにもいろいろ足を運んでいます。

前回の 【第一弾】ボードゲームカフェの開業を考えてる人のためにJELLY JELLY CAFEに色々聞いてきた にも書かせていただきました通り、「ボードゲームカフェ・プレイスペースをいつか開けたらいいなあ。。夢。。」という方が95名もいらっしゃいました。

というわけで、今回は第二弾、コロコロ堂さんのインタビューです。また、ボードゲームの遊べる場所(カフェ・プレイスペース・ショップ・BAR)のデータベースも公開しておりますのでぜひ御覧ください。

2回目の取材は「コロコロ堂」の代表、岩井 俊憲さん

コロコロ堂は2015年11月に根津にオープンしました。代表の岩井さんとデザイナーと高畑さんのおふたりで運営されていて、お店の約200個のボードゲームを全てインストしてもらえるのが特徴です。また、谷根千の雰囲気にあった優しい木の店内には、ボードゲームがパッケージの表面を見せる形で置かれています。

まだまだボードゲーム人口に比べてボードゲームカフェが足りていないんじゃないか、と新規ボードゲームカフェを歓迎する一方、ボードゲームカフェのビジネスモデルの難しさについてもコメントがあり……。

現在会社勤めされている方は、これまでの働き方から一転したボードゲームカフェの経営で、どのように生活が変わるのか、雰囲気をつかんでいただければと思います。

(写真 左:岩井さん 右:高畑さん)

事業計画や融資金など参考になる情報が満載

いざ始めようと思っても最初の壁はやはり資金面です。岩井さんは元々の職業柄、事業計画書や融資制度というものに知識があったため、抵抗なくオープンすることが出来たようです。法律、資金、料金設定。今回のインタビューでも、開業をお考えの人にとって参考になる大切な情報が盛りだくさんです。まずは以下のサマリー表を御覧ください。

店舗開業・運営内容 サマリー

開店費用・自己資金(会社員時代の貯蓄)
・融資(銀行からの借入)
立地条件土地勘のある文京区
坪数10坪強
運営体制2名(協同経営者)
主な収益源ほぼプレイスペース代
飲食収益割合は低い(食べ物は持ち込み可)
料金形態・最初の1時間400円
・延長10分70円
パック料金・3時間パック1,000円
・5時間パック1,500円
・フリーパック2,000円
・ワンドリンク制
料金の備考・平日限定学割あり(詳細はサイトを確認)
・平日休日で料金変更はなし
ターゲット・新規のお客さん
・大学の近く、平日日中のお客さん
・敷居の低い店でありたい
・デートや合コンができるような雰囲気を目指している。
来店者ライト層
公式サイトhttp://korokorodou.com/

開店前の状況について

本日はよろしくお願い致します!

はい、よろしくお願いします!

今年の11月で開店1周年になりますね。おめでとうございます(*^^*)

ありがとうございます!

早速ですが、開店される前のご職業・ご状況等を教えてください。

僕は宮崎出身で京都の大学に行っていました。そのあと就職と同時に東京の銀行で働いていて、M&Aに関する業務をやっていました。いま26歳で、会社は2年半で退職しました。

【M&A】企業買収・合併

もともとサラリーマンは一回やってみないとわからないなと思っていて、正直あまり乗り気ではありませんでたが、社会経験として就職しました。いざ働いて見ると案の定あまり面白くなくて、代替となる生き方を探していました。そんな中、大学時代からの友人・ルームシェアもしていたことのある高畑から「会社やめて一緒に面白いことをやろうよ」と言われました。当時は(ボードゲームを広めたいという訳ではなく)人が集まれるような場所を作りたいと話していました。いま思うとその頃が出発点ですね。

始めは、高畑のレーザーカッター技術で物が作れる場所にしてみようか、など色々な話が出る中で、僕の趣味だったボードゲームは「人が集まってくるお店」として相性がいいんじゃないかと思いまして。それでボードゲームカフェとしてコロコロ堂が始まりました。

資金や収益、開店準備について

開店に必要な資金はどのように準備されましたか?

自己資金だけでは足りなかったので、融資を受けようと事業計画書を作り、金融機関を回ってお願いしました。自己資金は働きつつ2年半貯めていました。もともとずっと銀行で働くつもりはなかったので、就職してから貯め続けていた貯金です。

融資を受けることは元々の職業柄、そんなに抵抗はありませんでした。事業はそういうものだと思っていたので。新創業融資制度という融資枠があり、区に依頼すれば利息分払ってくれるような仕組みです。資本面ではありがたいバックアップになるので活用しました。ただ書類はめんどくさかったですね。銀行と区と保証機関に書類を作成して、それぞれ審査を通すというのは店を始める前の一番高いハードルでした。

事業計画書って、どういうのを作るんですか?

ボリュームでいうと、A4の紙10~15枚ほどです。内容はざっくり、「なぜお店を開くのか」とか「どこに開くのか」とか。もちろん数字の部分でも「一日にどれくらいお客さんが来るのか」とか「1年間でどれくらいの利益が立つのか」などです。もともと銀行員だったのでこういう書類作成は得意なのかもしれませんが、計画書の数字が「なぜその数字になるのか」というところまで、銀行に説明し理解してもらう必要がありました。

また、融資を受けるまでのフローが直線的にならずに難しく、行ったり来たりしないといけませんでした。どういうことかというと、物件が決まらないと融資はしてもらえないのに、融資が決まらないと(僕達が)物件を決められない。その2つを同時に進めないといけませんでした。結局、店を先に決めというリスクを取り、後から融資という方法を取りました。

クラウドファンディングは検討しなかったのですか?

話は少しあったのですが、んー、なんでしょうね。難しいなと思ってやめました。もともとクラウドファンディングはお金に余裕がないとできないと思っていて、うちは全然余裕がありませんでした。

ちなみに事業計画と実際の収益に差はありましたか?

予実はドンピシャくらいです。これくらいの店の規模ですしね。ただ、高畑と僕の2人が結婚してないので出来たのかなとも思います。奥さんや子供を背負っているとリスクを背負いきれなかったかもしれません。自分もこれからの身の振りを考えないと(笑)。

【予実】予算(収支予測)と収益実績の比較。

オープン直前の状況

この場所はどのような経緯で決めたのですか?

納得できる場所を探していました。例えば元雀荘でたばこの匂いが残っているとかはNGでした。今の物件を内見したときに、2人ともピンと来ました。駅から近いっていうのは、ピンと来た物件がたまたま駅近だったいうだけで、物件を探す際の条件にはしていませんでしたね。

また、文京区で、学生さんが昼間来れる大学の近くを探していました。もともとこの根津~谷根千に絞っていたわけではなく、文京区広域から絞っていました。千駄木に住んでいて文京区の地理ならわかっているので、人の流れが分かると思いました。

逆に池袋や渋谷のような、人の多いところで自分が働くイメージはありませんでした。せっかくやるんだから地域密着型で、隣のおじいちゃんと話せるような街でやりたいと思っていて。結果的に根津はぴったりな街だと思ってこの辺りに絞っていました。
店を開いてからもこの街は僕のイメージ通りで、この街・この場所で本当によかったです。下の八百屋さんと毎日話をしたりもしていて、そういう事ができるこの街がすごく好きです。

お店を出す上で、関連する法律の勉強などは大変でしたか?

法律のことは勉強しました。税理士とも契約して話を聞きながら準備していきました。また、もともと職場の人にも伝えていて、法律に詳しい人に気になることを相談したりアドバイスを貰っていました。
特に風営法などは結構悩ましい部分が多いと思います。ちなみに「飲食物を出す」という面では居酒屋やカフェとそう変わらないので、インターネットで検索すると大抵のことは調べることが出来ます。

プレイ料金はどのように決めましたか?

開く前にいろんなお店を回って合わせたつもりです。どうしてもボードゲーム会に比べると高くなってしまいますが、カラオケやボウリングなど、既存のグループ向けアミューズメントと比較しても違和感がないような価格設定を意識しました。

最初のボードゲームは私物から始めたのですか?

そうです。オープン前に100個くらい持っていて、そこに徐々に足してきました。僕がボードゲームを始めたきっかけですが、もともと麻雀が好きで。3人くらいでできる新しい何かを探していて、偶然ボードゲームを見つけました。5年前なのでドミニオンが流行りだした時代です。ドミニオンのあとディクシットをやってすごく面白いなと思ってハマり、色々と買い始めました。でも普通に弱いです(笑)

来店者について

現在のお客さんはどのような層ですか?

日々変わっていますが、最近はライト層が増えてきました。それこそ「ブロックスってどんなゲームですか?」とか「ガイスターも聞いたことないです」というような。
土日になると1日2組は絶対来るような頻度です。ボードゲームを知らなかった層に広がりつつあるなという印象があります。

東大生などの大学生も多いですよ。ボードゲームは男女混じって遊ぶことができ、スポーツのように男性が有利ということもありません。こんなにフラットな遊びってあまりないんじゃないでしょうか。

お客さん向けに工夫していることはありますか?

ライト層に受けいれてもらいやすい雰囲気や内装にすることで、敷居の低いお店づくりをするよう意識しています。開業前にボードゲーム愛好家の1人として色んなお店を見て回りました。私達コロコロ堂は、デートや合コンにも使ってもらいたいので、カジュアルなイメージを持ってもらえるよう工夫しています。

また、他の店との差別化という意味でも、「初心者には優しく」ということを意識しています。特にインストには力を入れていて、店内にあるボードゲームは全てインストできます。
全部覚えているのは割と大変ではありますが、ふらっと来た人は見た目だけだとわからないと思うので。新規のお客さんやライト層にすぐ楽しんでもらうためには、これしかないかなと思っています。

【インスト】インストラクションの略。マニュアルの読解には時間が掛かるものが多いため、経験者が遊び方のレクチャーを行う行為。

お客さんの数に波はありましたか?

開店当初は結構きびしかったです。ヘコんでから上がってきたような感じです。土曜日が開店初日で土日はさすがに人が来たのですが、火曜日のお客さんが2人とか3人とかで。これはやばいと思いました。

ただ、テレビで紹介されたこともあって少しずつお客さんは増えてきています。メディアに出ると、その後はふらっと1時間ボードゲームをして帰るような長時間遊ぶボードゲーマーとは異なる遊び方をされる方がいたり、ワードバスケットがやたら売れたり。イメージしていなかった現象がよく起きています。
また、来店のきっかけを聞いてみると「知り合いから教えてもらって」というクチコミによる来店者も増えてきています。お店を続けてきて、認知度が少しづつ上がってきたなと感じることがあります。

ちょっといじわるな質問ですが… お店に飽きてきたりはしないんですか?

飽きてきたということはまったくありません。本当に毎日楽しんでいますよ。サラリーマンのときと違って次の日が憂鬱なことがありません。「日曜が終わるー、死ぬー」みたいなのが全然ない(笑)。
あとインストも楽しいです。インストして遊んでもらった後、これ楽しかったって言ってもらえると、自分がゲームする以上に楽しいと感じます。喜んでもらえるのが一番楽しいんだと思います。

お店に置かれているボードゲームは岩井さんが決めているのですか?

僕が決めています。誰が来ても大丈夫なように、毎月新しいボードゲームを購入して、インストできるように説明書を読む。これのイタチごっこです。パッケージを見せるようにしていて置く場所があまりないので、月5,6個程度にしています。
収納効率より見え方を優先しているのは、お客さんがパッと見てどういうゲームかが分かりやすくなると思ってそうしました。ゲームの作者さんも表面は力を入れている部分だと思うので、見せてあげたいなと思っています。

最近は販売もされているんですね。どういった方が買われるのですか?

お客さんの声に応える目的で、6月の中旬くらいから始めました。ライト層はイエサブも知らないし、アマゾンでボードゲームが売っていることも知りません。知っていたとしてもアマゾンで何を買っていいのかわかりません。そういう層に需要がありました。ただ、売上的にはプレイ料金と飲食がメインです。食事は簡易なものしかないので、食べ物は持ち込みOKとしています。食べ物で利益を得ていこうというのはありません。

【イエサブ】イエロー・サブマリン(Yellow Submarine)の愛称。ボードゲーマーによく利用する販売店舗の1つ。

お休みはどうやってとっていますか?

今は定休日の月曜日と平日で交代で休みをとって、週に2回ほど休んでいます。ボードゲームカフェを開くと、自分はボードゲームで遊べないということは感じます。

スタッフを増やそうと思っているのですが、まだそこに至っていません。今は1人病気で倒れるとお店に残るのが1人になってしまうので、もう1人~2人はアルバイトとしてほしいです。

コロコロ堂の今後について

デザイナーの高畑さんと、これからどういう活動をしていきたいですか?

私と高畑の得意分野がバラバラなので、役割分担しています。高畑は名札やトレーなどを作ってくれたり、サイトや夜コロのイベント案内、店内内装などのデザインもしています。ちなみに夜コロは2015年の12月ごろ始めた木曜日のイベントです。開店して1ヶ月半したあたりで、何か人を集めるイベントをやりたいなと思って始めました。

高畑がメインで動く活動としてはノベルティやアイテム、グッズのようなものを色々作りたいです。僕は「人と場所はあるけど暇」という場所を見つけて、出張型でボードゲームのイベントをしたいと考えています。たとえば老人ホームとか、たとえば豪華客船とか。ボードゲームを持って行って販売してみたいなと思っています。

2号店は考えていますか?

2号店は考えていません。高畑と一緒に仕事をやるっていうのがモチベーションの大部分を占めているので、毎日高畑と一緒にアイディアを出して仕事をする環境は削れない部分です。一緒にボードゲームを作ったりイベントしたいと思っています。

ボードゲーム業界の展望について

どのような発展をしていくとお考えですか?

今もボードゲームカフェは増えていますが、まだ増えていくと思います。数が増えるのはいい印象で、業界が活発な印象を受けます。ボードゲーム人口が増えているきっかけの1つだと感じています。
ただし、それぞれのお店が「自分のところはこういう店ですよ」というメッセージを打ち出していくことは大事だと思います。

新しくボードゲームカフェを開かれる方に対してどう思いますか?

先行して始められているボードゲームカフェのオーナー・代表者達はとても友好的です。特に白坂さんには色々なアドバイスをしていただき、とてもありがたいと感じています。ただ、これからボードゲームカフェを開こうという方がいらっしゃれば歓迎するのですが、1つ懸念することがありまして。

【白坂さん】JELLY JELLY CAFEのオーナー。前回の記事参照

懸念とは?

新しくボードゲームカフェができることに対して、以前ほどの反応が無くなっているように思います。以前は「コロコロ堂という新しいお店ができる」という事が知られたら、Twitterで「こんな場所できるんだ」っていう反応があったのですが、今はもうなくなっているように思います。これから始める予定の方は自分のお店の特徴を強めに出していった方が良いように思います。

あと、ボードゲームカフェはあまり儲からないと思っています。人がいて賑わっているイメージを持っているかもしれませんが、それは回転率の悪さからくるものです。他の飲食店とまったくビジネスモデルが異なります。もし儲かりそうだなって始めるのであれば、それは違うということを伝えたいです。お金を稼ぐという目的なら、サラリーマンを続けていたほうが収入は良い…と少なくとも僕は思います。

確かに、(少なくとも現在は)利益目的で始めた方はあまり多くない印象です。コロコロ堂のチャレンジや活動が世の中に広まっていくことを楽しみにしています。改めて本日はお時間いただきありがとうございました!

こちらこそありがとうございました!

インタビューを終えて

岩井さんには、ボードゲーム業界と全く関係のない業種のサラリーマンからボードゲームカフェを開かれたということで、自身がサラリーマンということもありとても身近なこととしてお話を伺いました。岩井さんはインタビュー中もお客さんに気を配られていて、高畑さんも何度もインストに向かわれていました(お忙しいところありがとうございました)。

また、岩井さんと高畑さんの強い信頼関係に心を打たれました。根津という街にいると、人や明かりがどことなくあたたかく感じ、ほっとします。ボードゲームカフェが夢だという方も、お店の特色を構想して、事業計画の作成から始めてみるのはいかがでしょうか。

ちなみにボードゲームカフェを開く方向けに記事を書いている通り、私自身も漠然といつか開けたらいいなあと思っていました。昔、本が好きだった頃は古本屋を開きたいなあと思っていたので、それくらいの軽い感覚です。個人的にそういった想いはありますがインタビューに関してはフラットな立場をとっています。

次回は、私がスタッフとして勤めているディアシュピールのインタビュー内容を公開したいと思います。

尚、全国のボードゲームカフェのデータベースは、ボードゲームの遊べる場所(カフェ・プレイスペース・ショップ・BAR)で公開しております。

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