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ボードゲームのデザイナー:カナイセイジ【ボードゲームのお仕事図鑑 Vol.2】

ボードゲームのデザイナー:カナイセイジ【ボードゲームのお仕事図鑑 Vol.2】
2019年07月29日
ボドゲーマキュレーター:まつなが

専業ボードゲームデザイナーとして長く活躍されているカナイセイジさん。代表作のラブレターがご自身の経歴に与えた影響や、日々の働き方など、活動の方針など、職業としてのボードゲームデザイナーについて幅広く語っていただいた。ボードゲームデザイナーを目指す方には必見。

こんにちは、キュレーターのまつながです。

ボードゲームのお仕事図鑑第1弾はもう読んでいただけましたか?第1弾では、イエローサブマリンの店員さんにボードゲーム販売について詳しく教えていただきました。

私達ボードゲーマーにボードゲームが届くまでの流れにおいて、最後の地点が販売員だとしたら、最初の地点はボードゲームデザイナーによるボードゲームデザインといえるでしょう。

ボードゲーム業界には様々なお仕事があります。今は趣味でボードゲームを遊んでいる方が、将来はボードゲームの仕事をしたいなというときに、実は様々な選択肢があるんですよ!

ということで、魅力的なボードゲーム業界のお仕事を広くご紹介する【ボードゲームのお仕事図鑑】シリーズ!大好きなボードゲームと一緒に働きたい方や、ボードゲーム業界の裏話に興味がある方に。広く楽しんでいただけるシリーズです。


みんなの憧れ、個性を発揮できる花形のお仕事、ボードゲームデザイナー!ラブレターが世界で評価され、今も多くのボードゲーマーに遊ばれているだけではなく、毎年新しい仕掛けのボードゲームを発表している、日本を代表するボードゲームデザイナー、カナイセイジさんにお話を伺いました!

ボードゲームデザイナーになった経緯

こんにちは、まつながです。よろしくお願いします!

よろしくお願いします!

いつも笑顔で対応してくださるカナイセイジさん

幅広くアナログゲームに関わった大学時代

ボードゲームはいつから作っていますか?

個人的にゲームを作るという意味だと、それこそ小学生のころから作っていました。みなさんも周りにカードゲームやすごろく、迷路などを作り出す子がいたでしょう。僕もそのようなタイプでした。

発表したという意味だと、大学のTRPGサークルでTRPG関連のコピー本をコミックマーケットで出したのが、始まりです。それからボードゲームに移って、ずっと作っています。

大学のサークルでは、TRPGやミニチュア系のゲームを買って遊び、ゲームの紹介本のようなものを作っていました。今でいう「話題の作品遊んでみた」みたいな、開封動画みたいなノリでしょうか。遊んでみた感想を書き連ねていました。TRPGを自作して発表したりもしていましたね。

TRPG:テーブルトークRPG。和製英語。会話を中心に進み、想像上の世界で割り当てられた役割を演じる。


TRPGからボードゲームに移ったのはなぜですか?

TRPGを作ることに限界を感じたからです。

僕は基本的に個人で全部マネジメントするケースが多いのですが、データ量の多いTRPGを一から十まで作ることはできなかった。よくある話ですが、TRPGを作ろうと思うと、たいてい最初に手に入る武器のロングソードと、最初に倒す敵のゴブリン、最後に倒す敵のドラゴンの3つを作ると、「ああもう疲れた」ってなってやる気が尽きてしまうんです(笑)。僕にはTRPGの膨大なデータを作るだけの根性がなかったんですね(笑)。

TRPGとボードゲームを比較すると、TRPGは個人で1つ作った場合に遊んでくれる人の数が少なそうな印象です。

それはあると思います。オリジナルのTRPGは1回目に遊ぶまででのハードルがかなり高いです。買った人がルールを読んで、シナリオを書いて、人を集めて会を開いて、参加者に説明して、それでようやく遊べます。遊ぶまでの負担が大きいんですね。

最近はのびのびTRPGシリーズのように、30分程度で遊べるように工夫されたものに人気が出ています。

今野隼史作ののびのびTRPGシリーズ。簡単にTRPGが楽しめる。

TRPGを遊んでいる人がボードゲームを遊ぶ流れはよくあるのでしょうか。

多いと思います。TRPGの会で卓が終わった時、閉会を待つ間にボードゲームをしていました。レッドドラゴン・インディセントのような、ロールプレイ多めのゲームをよくやっていましたね。

TCGはされていましたか? 

はい、マジック・ザ・ギャザリングを遊んでいましたし、TCGの自作もしていましたよ。家には若かりし頃の残骸が残っています。
TCGも1人でやろうとしたのですが、やはり膨大なデータの制作やそれに応じたバランス調整は無理でした。1人でやっている人もいてすごいなとは思いますが、僕にはできませんでしたね。

TCGを作ろうと思うと、テキストの量が多いことやバランスもとることなどもハードルとしてありますが、一番難しいのが、デッキの多様性を作ることだと思います。
たとえば相手の山札を除去して勝つのか、殴って勝つのか、呪文で相手を殺す条件があるのか、みたいないくつか勝ちになるパターンを用意しないと面白いゲームにならないと思うんです。

TCG:トレーディングカードゲーム。トレカ。マジック・ザ・ギャザリングや遊戯王、ポケモンカードゲームなどが有名。


大学や大学院で学ばれたことはボードゲームデザインに活きていますか?

大学院の専攻は心理学です。ブラフゲームに活きそうな学問だと思いきや、全く関係ありませんでした(笑)。心理学はカテゴリとしては文系ですが、ガチ理系の学問なんです。
多くの人は心理学を、考えていることを行動から見抜く方法とかカウンセリングとかを学ぶ学問だと思っていますが、具体的にやることは統計学なんですよ。

ビッグデータ、例えば巨大なPOSデータを解析してマーケティングに使うようことも心理学で学ぶ実験に含まれていて、実験の根底にあるのが統計です。

カナイセイジという名前はどのようにつけたんですか?

初めて同人誌を出した時に、友人が適当につけました。由来はそれほどなくて、本名から一部とってつけたくらいです。もともとは、同じ読み方の漢字の名前だったのですが、少し恥ずかしい雰囲気があったので、カタカナにしました。
昔のゲームマーケットのカタログを見ると漢字のカナイセイジも載っていると思いますが、探さないでください(笑)。

たまたまですが、カナイセイジはカタカナなので日本人にとっても読み間違いはないですし、海外の方にとっても発音しやすい名前のようで、今になって思うといい名前だなって思います。

ラブレターによって訪れた転機

専業ゲームデザイナーになったのは、何がきっかけですか?

ラブレターのヒットが、専業ボードゲームデザイナーとして安定する大きなきっかけですね。最初はフリーターをしつつボードゲームデザインをしていたのですが、ラブレターがヒットして一定の収入が得られる生活になったので、アルバイトをやめて専業ボードゲームデザイナーになりました。

ラブレターの存在が、人生においてもかなり大きな存在ですね。

そうです。運がよかったとしかいいようがありません。ドイツゲーム賞4位を取ったのはドイツでも発売されていたからなのですが、運命的な出会いがあったんですよ。

ラブレターは最初、手作業でカラー印刷したカードで売っていました。たまたま海外メーカーのAEGの社長がヤポンブランドの健部さんと一緒にゲムマを視察していまして、それをその場で遊んでもらったら気に入ってもらえたようで、オファーが来ました。

最初はキャンペーンのおまけにしようって思っていたみたいですが、製品化してくださいって健部さんが交渉してくださって、出版してみたら、安いし面白いって火がついたんです。

ヤポンブランド:日本の優れたインディーズゲームとクリエイターを世界に紹介しようと2006年に作られた団体。
ドイツゲーム賞:Deutscher Spielepreis。一般のボードゲームファンによる投票で決まる賞。


ラブレターのヒットがもしなかったとしたら、今ボードゲームデザイナーをしていると思いますか?

していると思います。お金のためにフリーターみたいなこともしつつ、ボードゲームデザインをしているんじゃないでしょうか。

ラブレターの派生作品、ラブクラフト・レター。他にも世界で様々なラブレターが発売されている。

ボードゲームデザイナーのお仕事内容

お仕事の概要

ボードゲームが発表される国内の場といえばゲームマーケットですが、やはりゲームマーケットに向けて動いてらっしゃるんでしょうか?

いえ、そうしたいのですが、色々オファーをいただいていることもあって、最近はあまり余裕がないです。ゲームマーケットに毎回出展はするつもりですが、あまり自分のブースで新しいゲームを大々的に発表することはなくなってきていますね。

どういったタスクがあるのですか?

ボードゲームを出すのでデザインをしてほしいとメーカーから連絡が来たり、メールでルールに関する問い合わせが送られてきたり、細々とした仕事がいろいろとあります。

並列処理が苦手なので、同時期に複数の作品を作らず1つずつ仕上げていくタイプだったのですが、最近はそうも言ってられずに、いろんなタスクを同時期にやっていますね。

ひとつの作業をしていても結局だめなときはだめで、枠が見えてきたけど何を詰めていいかわからない、今はどうしようもなさそうだってなったら、別のタスクに手を付けます。
期限があることも多いので、あまり悠長にはしていられないんですけどね。

小さいタスクだと、国内メーカーとの商品化のやりとり、データの校正とか海外からのメール対応とか。僕は根が怠け者なので、なかなか進まないんですよ。メール書くのも上手じゃなくて、時間を使っちゃいます。

仕事のサイクル

会議や打ち合わせがない場合、どのようなタイムスケジュールで1日お仕事作業をしますか?

まず、次の日に用事がないとわかっている場合、前日は朝の4時5時まで起きて本読んだりします。物の読み込みは夜中のほうが集中できるので、夜に行うことが多いですね。ゲームをして夜更かししちゃうこともありますが(笑)
明け方から昼過ぎまでゆっくり寝て、15時から16時くらいに仕事場としているファミレスへ行きます。

その後、自分の仕事に向かう集中力が切れるまでは作業をします。だいたい22時から23時くらいでしょうか。作業をしてもこれ以上の発展は見込めないと思ったら、20時くらいに切り上げて帰ることもあります。

曜日によって決まった作業はありますか?

平日は自分で完結する作業やメーカーの方との打ち合わせが多く、土日はゲーム会の参加などが多いですね。自分がそう決めて動いているわけではなく、平日は会社の営業日でメーカーの人と動くことになり、土日は普通のお仕事に就いている方々の休みに合わせたイベントに伺う感じで、周りに合わせて動いています。
ゲーム会というのは、自作ゲームのテストプレイ会をするのもありますが、出版されたボードゲームを単純に遊んだりもします。

1年で決まったサイクルはありますか?

ありません。あらゆる仕事が不定期に始まり、不定期に終わります。イベントとしては、毎回ゲームマーケットに出たり、エッセンシュピールに参加したりはしますが、それに伴う仕事は毎年様々です。

仕事といっても、すぐ終わるものもありますが、自分の作業が終わったあともイラストなどの他の方の作業を待っていたりして、世の中に出るまで時間かかることもあります。
依頼があって始まった時点で終わりまでのスケジュールがわからないものも多くあります。僕がなかなか完成できないケースもあります……。

※エッセンシュピール:ドイツで開催される、世界で最も大きなボードゲームイベント。10月に4日間開催される。


ボードゲームメーカーとの関係

メーカーに対して売り込みなどの営業をすることはありますか?

メーカーから誘いを受けて打ち合わせに顔を出したりはしますが、僕が突然「たのもう!」ってメーカーに行くことはないです。僕が営業行為を得意じゃないことも原因です。
昔から自分を良く見せるのが好きではなくて、エントリーシートが書けなかったんですよ。「世界中で売られているゲームを作った実績がありますよ!」なんて絶対言えなくて「全然僕なんて、そんなそんな。」って言っちゃうんです。

ボードゲームカフェにもちょくちょくお邪魔していますが、そこで営業をするようなことは特にはしていません。ありがたいことに一定の知名度はいただいていますし、そういった場はむしろ新しく作り始めた方とかに活用していただいた方が良いかな、と思っています。

中目黒のおしゃれなボードゲームカフェ、Cafe Brownstoneでお話を伺いました。

メーカーと仕事をするとき、カナイさんが先導して企画をしたりするのでしょうか。

自ら企画を立ち上げることは基本ないですね。
メーカーから、「過去作とアニメのコラボ作品を出そうと思っているので拡張ルールを考えませんか?」とお声がけいただいたりして、一緒に動きます。お仕事を振っていただいて、できるだけ応える、といった感じです。

リメイク作品がメーカーから出るとき、ルールの変更点に関して何も言わないですか?

内容によりますけど、言わないほうですね。
もちろん致命的な場合、たとえば変えたことによってバグが発生していることに気づいたり、あまりにテーマが社会的に問題ある内容になっていたりしたら言いますけど、それくらいです。あとは、まあ言うとしたら「なるべく字を大きくしてください」ってくらいですかね。字が小さいと読みづらいので。

働く上でのポリシー

フリーランスを選ぶ理由

ボードゲームの会社に勤務しつつボードゲームデザインをするパターンもあると思うのですが、カナイさんは会社に所属しないのですか?

僕は会社員として働くことは向いていないと思うので、おそらくないですね。

雑務をするような人は雇わないのですか?

人を雇って給料を払えるほどの利益を継続的に出せるかって言うと難しいですね。払えるとしても、そんなに仕事を振れるかというと、それほど仕事があるわけでもないですし。
基本ボードゲームデザインは、テストプレイ以外は1人でできるものですから。

法人化はされないのですか?

僕個人としては、しなくていいんじゃないかなって思っています。法人化することで社会的信用はあがるかもしれませんが、毎年維持に必要なお金も出てきます。利益が出なくて会社をつぶすことになったら社会的信用にダメージがあるわけですし、会社の設立自体に対する憧れも特に強いわけではありません。

また、法人化すると銀行から資金が借りやすくなったりするわけですが、別にお金を借りてまで事業拡大したいようなこともないですし、先程お伝えしたとおりに人を雇うこともないと思います。

仕事と人柄

情報発信のためにブログ等はされていないのでしょうか。カナイさんのTwitterアカウントは公式ツイートばかりのように見えます。

文章を書くのも好きですし、ブログを書いてやろうと思っていたころもあったのですが、結局やっていないですね。Twitterに関して、昔は自由に発信していたのですが、最近はふとした発言で炎上する可能性があるかもしれないと考えると、リスクが大きくて。僕は臆病者なんですよ。

僕がひとりで叩かれるだけならまだましですが、メーカーなどの知人も多くなってきていて、思いもしないところに迷惑がかからないようにしよう、と考えてしまいます。自由な発言は、誰にも迷惑がかからなさそうで、よほどネタとして面白かったら、言うかもしれません(笑)

公式なツイートでも、書き込む前に、大丈夫かな、とか何かディスってることにならないかなとけっこう読み返しますね。人間関係ってすごく大事だなって歳を追うごとに感じるので。

カナイさんは、いつもにこにこしていらっしゃって、優しいお人柄なんだということが伝わってきますが、声がかけやすくて仕事が来るようなところはあるのではないですか?

自分で言うのはなんですが、否定できないところはありますね(笑)。さっきの質問でもありましたが、僕はあまり修正とか変更に対して細かい事を言わないので。

ボードゲームのデザインのために

創作の種

ボードゲームのネタを仕入れるために、何か新しい趣味の開拓をしたりといった行動はしますか?

しませんね。自分の好きなものを楽しんでいるうちに、それをボードゲームにしてみようかなってなるパターンがほとんどです。

もちろん、コラボ作品の依頼が来たら元となるアニメの知識を勉強することはあります。

ネタの仕入先として、世の中に出されている新作ゲームは遊びますか?

めちゃくちゃ遊びますね。単に遊ぶのが楽しいということもありますし、新しくてウケてるゲームには何かしら見るべきポイントがあると思って、研究の意味でも遊びます。

遊んでいる最中に新作ゲームの構想が振ってきてメモをすることもありますか?

その場ではあまりないですが、後々になって遊んだゲームの仕組みを参考にさせていただくことはままあります。引き出しにこっそり入れている、という事でしょう。

ゲームはご自身で購入されるんでしょうか。家にはボードゲームが大量にあるのですか?

ほどほどに買いますね。もう、いつ床が抜けてもおかしくないですよ。
購入したゲームの他にも、自分が今度売るための在庫も家にあります。僕が主体となって作ったカナイ製作所の在庫は家に置いとくしかないので。

近年は倉庫を借りるという話もちらほら耳にしますが、僕もそろそろ借りないといけないかもしれません。ボードゲームは箱のまま保存しないといけませんし、嵩張る趣味ですよ。

テストプレイのメンバーは毎回固定でやりますか?

はい、知人が多いボードゲーム会でやっています。どうしても内密にテストプレイをしたい場合は、メーカーに持っていってやったりすることもありますね。

ボードゲーム完成する前に人に見られることは抵抗がありますか?

僕は、実はけっこう抵抗があるほうです。少なくともテストキット完成までは見せないほうがいいのかなっていうタイプではあります。ネタかぶりがあると、お互いに処置に困りますよね。
なので、僕のアイテムはここまでできています、と示せるくらいのほうがいいのかな、と。

昔はそもそもデザイナーの数も少なくて、かぶることなんてなかったのですが、最近はデザイナーの数も大幅に増えて、ネタの数も全体で相当多くなってしまいました。なので、ゲームマーケットのカタログを見てネタかぶりに気づくようなことも多くなっているでしょうね。その中でも、毎回新しいアイデアが出てくることは驚嘆に値します。

働き方の移り変わり

2012年のラブレターから7年経ちますが、働き方が変わってきているところありますか?

今は昔ほどやたらめったら作らなくなりました。作れる数に限りがあることに気づき、今は新作の頻度は3ヶ月に1本くらいです。製品まで育てる種のほうを厳選しないといけないなって思っています。昔だったら、新しいゲームを作ったら多少荒くても勢いで出すことを繰り返していましたが、最近は少し慎重になりました。

創作の種や、新作の思いつきが年々減っていくような危機感を感じることはありますか?

今のところは大丈夫です。僕は、最近ようやく認識しましたが、無から何かを作るというより、ふわふわしたのを推し固めてみたら作品になった、みたいな作り方をするんです。

テーマとか読んだ本とか空中にただよっていて、今回は3000円くらいのゲームを作ろうって考えるとだいぶぎゅって具体的な形になって、ファンタジーにしようか、で更にぎゅぎゅって形が見えてきます。その過程を通して、最終的にある程度形になったものを細かくいじくり回して作るんです。何もないところでぱっとは出てこないなと。

じゃあ、たとえば今「住まい」っていうテーマを思い浮かべると、ゲームが作られてきますか?

そうですね。「住む」がキーワード…。
部屋タイルをつなげて、プレイヤーはお父さんとお母さんになって、どっちが理想の家になるかカードを切り合うゲーム…。

「キッチンはこれがいい」ってカードをプレイ、そのキッチンカードは400万円で「うっ、予算オーバーだ、じゃあお父さんの自室をなくすか」となり、お父さんの書斎撤去!書斎タイルをぺりっとはがす。お父さんは「わしの書斎がなくなってしもうたー!」みたいな。

お兄ちゃんとお姉ちゃんもいて、それぞれ別の目的を持っているとか。「キッチンのグレードが4以上」とかの目的が設定されていて。

または、間取りのゲームかな。四角いタイルをつないで家にして、6畳のタイルや4畳のタイルを作って、タイルをそのまま手に持つのは無理だから、課題になりそうですね。

お、ほんとにゲームとして形になりそうな気がしてきました!(笑)
ブレストから良いゲームができることは全然ありますからね。自分で作っていると視野が狭くなるので、他の人から話を聞いて「ああ、そうすればいいんじゃん」みたいに思うことはあるんです。

2018年にボドゲーマは「住まい」をテーマにボードゲームグランプリを開催しました。

代表作のラブレターは2012年に発売されたもので、それからもたくさんの作品を発表されています。今でもラブレターの話を振られることは嫌ですか?

嫌ということはないですね。ラブレターはたまたま起こった奇跡みたいなもので、その奇跡を取り沙汰されるのは仕方ないことだと思います。期待値が高くなっているというか。

ただ、僕自身がラブレターにしがみついているだけではだめなので、実際に乗り越えられるかはおいておいて、新しいものを作る努力は続けようとしています。

世界での活動

エッセンシュピール

毎年エッセンに行く理由はなんですか。

ヤポンブランドのブースでの広報活動と、海外の知り合いへの挨拶ですね。10年以上ヤポンブランドでエッセンに行っていますが、当時は毎回珍道中でしたね。今では考えられないトラブルが山程起こりました。10年以上、毎年欠かさず行っています。知り合いも大分増えました。

エッセンシュピールに行って、現地で何をしていますか?

プロモーション活動がメインです。ヤポンブランドが参加者から参加費を集めてブースを取ってくれます。そこに自分のゲームを持ち込んで手売りをしつたり、お客さんにアピールしつたり、様々なヤポンブランドの付き合いのある会社にサンプルを送ったり、レビュアーに送ったりしています。
目的は、会場での売上ではなく、海外版の版権をいろんな会社に買ってもらうことです。

ただ、ゲームマーケットの状況が変わってきて、ゲームマーケットに海外からバイヤーから来ていることもあるので、必ずしもエッセンでのプロモーション活動が必要かというとわかりません。実際に遊んでもらって手売りをするっていうのは、お祭りの一種、「みんなで神輿をかついて楽しくやろうぜ」っていうコンセプトです。

ヤポンブランドはいろんなコネを持っているので、「このゲームはどう?」って出版社に紹介できます。試遊で気に入ってもらったり、BGGで評判になったりすると、交渉がきます。ヤポンブランドはそういう場合に窓口になってくれます。
一応手数料は払う必要がありますが、ずっと間を取り持ってくれて、要望があれば伝えてもくれる、総合的な仲介をしてくれます。

エッセンシュピールで行われたカナイセイジさん(右上)のサイン会

※BGG。ボードゲームギーク。アメリカのボードゲームデータベース。

ボードゲームデザイナーとしての思い

ボードゲームデザイナーの喜怒哀楽

ボードゲームデザイナーをやっていて、いちばん嬉しい瞬間や、達成感を感じた瞬間はどんなときですか?

そもそも僕はあんまり感情の起伏が激しくないんです。嬉しいこともそんなにないし、悲しいこともそんなにない。でもまあ、アイディアが詰まって困っていたときにぽんって出てきたら嬉しいですし、あとお金が入ってくると嬉しいですね(笑)SNSで「めっちゃ遊んだ!」って言われているのを見るのも、嬉しいです。

たとえば、自分がデザインしたゲームが届いたときは嬉しいですか?

うーん、難しいですね。これからどういう評価をうけるかわからないから怖いという気持ちと、「おお、できた」っていう嬉しい気持ちと半分ずつです。今まで何回も経験していることだからなので、初めてゲームを作った方は届いたら嬉しいと思います。

ボードゲームデザイナーをされていて、一番ストレスに感じることはなんですか?

もちろん叩かれることはストレスになりますね(笑)。「あいつのゲームまじでクソゲーだな」みたいに評価されると、評価してきた人に対する単純な怒りだけでなく、申し訳なさでいっぱいになります。
お金を出して買ってくれた方に対する申し訳なさと、ゲームが出るまでに関わってくれた人に、「いいゲームと言ってもらえなくてごめんなさい」という申し訳なさですね。

ボードゲームデザイナーをやめる、とはならないのですね。

なりませんね。性格として、怒りがあんまり持続しないタイプなんだと思います。いちにち落ち込んで寝込んだあと、朝起きると「お腹すいたな」みたいな感覚です。

それなりに叩かれたりするんですけど、不思議とやめようとは思わないですね。

ボードゲームと関係のない、今とまったく違う仕事したくなることはありますか?

ないですね。

じゃあボードゲーム関連の別職業の、たとえばカフェオーナーはどうでしょう。

単純な憧れはありますね!
カフェオーナーの人に「そんな簡単な話じゃない」と怒られるかもしれませんが、ボドゲカフェをオープンしつつ、カウンターの中でボードゲームのデザインとかできたら楽しそうだなって思います(笑)

家にある本やボードゲームを腐らせるより役に立てるために使う場所を作れたらなって思いはあります。デザイナーさんや、ボードゲームファンの方はたいていそう思っているから、中古として放出されたりするんじゃないでしょうか。

カナイさん自身は、ボードゲームに飽きてくることはないのですか?

飽きそうだと思ったことはないですね。短期的に、たとえば1週間アニメやゲームにどっぷりハマってボードゲームをしないことはありますよ。ボードゲームって遊ぶ機会を作るのが大変なホビーではあるので、機会を作れずに一時的に離れてしまうことは仕方ないと思っています。
ボードゲームは、お金をはらってボードゲームカフェに行くか、仲間内で時間を決めて人を呼ぶかっていう手順を踏まないとできない趣味ですし。

ボードゲームを遊んで新しいアイディアに触れるのは楽しいですし、ゲームで遊ぶのが幸い楽しく思える性格なので、飽きることはなさそうですね。

これからの活動

ドイツ年間ゲーム大賞を取りたいという気持ちはありますか?

ないわけではないですが、難しさも感じます。ドイツ年間ゲーム大賞は、いろんな要因が絡んでいる賞なので、それに適した形で組み上げる必要があると考えています。

受賞作品を見ていると、毎年化物のようなボードゲームが出てきますね。2017年にキッズ部門で賞を取ったアイスクールって、デザイナーにとっては初作品のようなものじゃないですか。
小学校で手元にある文房具で遊んでいたような遊びにきちんとしたルールとコンポーネントつけてゲームにしましたっていう作りで、それがとてもよくできていて、うまいなあと思います。
指ではじいて得点していくという、子どもがハマるようにテクニックを要求してくるわけですよ。

ペンギンの学校の中で、ペンギン生徒たちのおいかっけっこ。テクニックが試される。

日本では生産の時点でお金がかかるので変わったコンポーネントは難しいですが、透明カードやオリジナルの木ゴマ、ダイスなんかも増えてきましたね。

※ドイツ年間ゲーム大賞:Spiel des Jahres。ドイツで選定される権威ある賞。赤ポーンとも呼ばれる。エキスパート賞(黒ポーン)、キッズ賞(青ポーン)もある。


これからの目標や展望はありますか?

計画も目標も具体的なものはないですが、とりあえずは生き延びることですね。高い目標を持つと、それもかせになったりプレッシャーになるので、やっているうちにいいものができたらいいなーっていう感じかな。

ボードゲーム業界のこれから

ボードゲームデザイナーにとって、今のボードゲーム業界の環境はどうでしょうか。

いい環境だと思いますよ。ボードゲームデザイナーになるための投資金額も他の業界よりも少ないです。ゲームを作るのも、紙ペンゲームだと予算もほとんどいりません。毎年たくさんのボードゲームが発売されているので、勉強するものにも困らない。

人狼好きだったらレジスタンスやって、アヴァロンやって、タイムボムやってって遊んでいけば知識を高められますし。ただ、テストプレイの環境整備は、まだ少し難しいですね。カフェに持っていってふらっとテストプレイしてもらうっていうのはなかなかできないじゃないですか。
テストプレイが嫌いな人もいるし、カフェにお金をはらってアズールみたいな人気作品やりたいのに、未完成のゲームをやらされたら辛いでしょう。

タイルがおしゃれでカフェにもよく似合う、2018年の大ヒット作「アズール」。

ボードゲーム業界は近年拡大傾向ですが、いつか市場規模が小さくなるタイミングが来るのでしょうか。

結局ボードゲームはこれからも他のホビーを上書きしていけるかどうかが、ずっと広がっていけるかどうかのポイントでしょう。

過去のボドゲーマレビューで江神号さんがTRPG業界が弾けたことに触れていましたが、それもTRPGというホビーが余暇の時間に遊ばれていたのをTCGが入ってきて上書きされたことが原因です。

※過去のボドゲーマレビュー:「日本ボードゲーム界の異端児に聞く!ボードゲームデザイナーとして生きていくには?」はこちら。


ゲーム業界の戦いは、余暇の取り合いだと言われています。たとえばサラリーマンのおじさんを思い浮かべて、その人が帰ってきて寝るまでの5時間を何に使わせるか、という、時間の取り合いです。

幸いなことに、今は余暇をボードゲームに使う人が増えて、その人たちはボードゲームは面白いと満足しています。ただ、余暇をすごすのによりふさわしいと思われる別のホビーが現れたら、ボードゲームも厳しくなると思います。

僕個人、今ボードゲームが流行っている理由は、個人的な考えですが、デジタルゲーム・ソーシャルゲームの市場が成熟して、新しいホビーが探されるようになった結果だと思います。実際にゲームとしても面白いものは多いですし、コミュニケーションの場としての側面もあります。最近では芸能人などのインフルエンサーが取り上げるケースも増えてきました。

結局ボードゲームみたいに五感に訴えかけるものは他にないと思っていて、駒を触ったりカードをめくったりとかの手触りがあってこそだと思うので、その楽しさをボードゲームで感じられる限り大丈夫だと思います。

ボードゲームは毎年のように新しいギミックが発明され流行りが移っていきますが、これからも新しい何かが作られていくのでしょうか。

しばらくは大丈夫なんじゃないでしょうか。もうコミュニケーションゲームのネタは出尽くしただろうと思っていてもコードネームのようなタイトル、新しくて面白いコミュニケーションゲームがぽっとでてきたりします。

世界中で何万という人が思考の海をさまよっているので、その力があればしばらくは大丈夫だと思っています。

個人的に漠然と不安に思っていることがあって、ふと気づいたら誰もボードゲームのアイディアがでなくなって、新しいゲームが出なくなって、業界が沈んでいってしまうんじゃないかなって思うんです。

たとえば20年後とかの遠い先にそういうのがあってもおかしくはないと思います。今、将棋の藤井聡太プロ棋士が若くして多くの成果を残し、将棋の研究もひとつ上の次元に入りました。コンピュータの性能向上とともに、今までできなかったようなこともできるようになり、コンテンツそのものの消費を加速させているのは確かだと思います。進化したAIが今までのゲームの良いところを集めたとんでもないゲームを作り出すかもしれません。

ただ、ボードゲームにはアート的な側面もありますし、現在のような多作ではなくなっても、完全に失われることはないかと思います。

日本でのボードゲーム製作に限界を感じることはありますか?

日本と海外を比べると、アメリカが進み過ぎているなって思います。クラウドファンディングを見ていると日本のクラウドファンディングと3桁くらい違うんですよ。

クラウドファンディングをやろうと思うと、アプリやソーシャルゲームの業界みたいに、専門的な人材集めてお金をかけて準備をして、ページの見栄えを良くするために動画を用意してっていうことが必要で、日本でよくある1,000円で作ったゲームです、みたいなものと体制が全く違います。そういうオバケに日本はアイディアでどう対抗していくかは重要なファクターかなと思います。

ドイツ年間ゲーム大賞は、ミニチュアがついてなくても取ることはできるので、まだアイディアで勝負できると思います。

日本でも、コンポーネントは工夫次第でいろいろできますよ。3Dプリンターで駒を作ったり、印刷所が変わったコンポーネントを扱うことも増えていると思います。



以上、カナイセイジさんにお話していただきました。

ふとした巡り合わせで世界に自分のボードゲームが羽ばたいていくこともあり、有名なアニメなどとコラボできたりすることは、とても夢のある職業ですね。

働き方にもよりますが、基本的には個人として仕事をコントロールすることになるので、スケジュールなどの管理が問題なくできたり、ボードゲームを好きだという気持ちを保ち続けられることが大事なのかもしれません。

ボードゲームのお仕事図鑑はまだまだ続きます。次回もお楽しみに!

ひとつ前の記事:ボードゲームの専門店:イエローサブマリン【ボードゲームのお仕事図鑑 Vol.1】

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