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  • 1人~4人
  • 60分~180分
  • 14歳~
  • 2020年~

カンバンEV山本 右近さんのレビュー

486名
14名
0
4ヶ月前

このゲームは、かつて出版された『カンバン』という作品の、言ってみれば決定版のようなものだ。構成は概ねそのままに、いくつかの要素が微調整され、アートワークは一新され、そして何よりルールブックがちゃんと「読める」ようになっていた。これはとても大事なことだと、ぼくはほっとした。

本作はかの高名なラセルダがデザインしたゲームだ。ぼくは彼の名前を聞くといつも、旅客機が離陸するときの高揚感を思い出す。少し怖くて、でもそれを待ち侘びていたような、あの感じだ。

このゲームのテーマはカンバン方式、つまり、トヨタが生み出した生産管理システムなんだけど、実際にプレイしていると、特にゲーム序盤は効率の話というより、むしろ上司であるサンドラという女性の気まぐれな査察にどう対処するかという、社会人の縮図のような話になってくる。サンドラは、ある日突然現れて、ぼくの目を見つめ、静かに「それじゃダメなのよ」と言う。そしてぼくは自分の存在価値を、ほんの一瞬、疑うことになる。

ゲームの基本構造は、工場という名の大きな箱庭を渡り歩く、静かな巡礼のようなものだ。上のほうにいるプレイヤーから順に、次に働く部署へと駒を動かしていく。移動そのものは単純だ。けれどそこには複雑な駆け引きがある。他のプレイヤー、それにサンドラ。どこに立ち、どこを空けておくか。そして何をするか。現実と同じように、すべてを読み切ることはできない。

次に座りたい椅子の真下を陣取るか、管理部門で含みを持たせるか、それとも…。一つ一つの選択が、思った以上に重く響く。まるで人生の分岐点みたいに。誰もが自分のことだけを考えているようでいて、誰かの影響を受けながらしか動けない。そういう絶妙なバランスの上に、このゲームは成立していた。ギャラリスト、ヴィニョス、カンバン…。ラセルダのゲームはいつもそうだ。右手で銃口を突きつけながら、左手で握手をする。あるいは口づけかもしれない。そんなインタラクションがぼくを虜にするのだろう。

このゲームの好きなところのひとつに「リプレイ性の高さ」がある。盤面のセットアップが毎回変わるし、得点の取り方も多様だ。高級車で攻めるのか、家族向けの車で地道にアップグレードしていくのか、あるいはその中間を取るのか。戦略はたくさんある。言い換えれば、毎回違う物語が生まれるということだ。成功も失敗も全てを飲み込んで、並行世界の人生を何度でもやり直すような、それは試練でもあり、喜びでもある。

最後に、スピードチャージャーという拡張がある。これは小さな追加要素だけど、ゲームにぐっと深みを加えてくれる。2回目以降に取り入れると、ちょうどよく「味が染みる」感じになるはずだ。

もしあなたがラセルダ作品に初めて手を出すなら、本作はうってつけの一作になるかもしれない。そこには手ごたえと、静かな熱狂と、そしてちょっとした社会人の悲喜こもごもをほんの少し皮肉った物語が詰まっている。エンジンの音は聞こえない。でも確かに、何かがゆっくりと回り始める感覚がある。

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