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  • 1人~4人
  • 90分前後
  • 12歳~
  • 2021年~

ストロガノフ山本 右近さんのレビュー

512名
15名
0
4ヶ月前

少なからぬ数の「ボードゲームの感想文」を投稿しておいて今更こんな事を言っちゃうのはアレだけど、わたしはボードゲームがめちゃくちゃ好きだ。

このような感情に理由づけをするのはあまり好きじゃないんだけど、なぜわたしはボードゲームがこんなにめちゃくちゃ好きなのだろうかと考えてみると、「そこに物語があるから」というのもその理由のひとつに挙げられると思う。

ひとくちに物語と言っても、様々なものがある。

まず思いつくのは、そのゲームのテーマ性だ。実在の人物や事件をテーマにしていたり、その作者の完全な創作であったり、どちらにしてもわたしたちはその登場人物のひとりとなって、明確な目的を持ちつつもその物語に参加する。史実がテーマの場合、それについて(簡易的にではあるが)学ぶことができることもまた良い。

次に挙げられるのが、プレイヤー同士が紡ぐ物語である。友人や家族と遊ぶことも多いだろうし、ゲーム会やカフェなどで思わぬ良い出会いが得られることもあるだろう。また、ゲームが始まると、終わるまでの数時間は互いに鎬を削り、一進一退のドラマがゲーム中にも生まれたり、全然生まれなかったりもする。それらは自分だけが知っている、小さな物語や大きな物語として記憶に残されていくだろう。

最後に一例として付け加えたい、オマケのようなものがある。クラウドファンディングだ。

ボードゲーム製作の手段としてクラウドファンディングが利用されるようになってはや15年ほどになる。その間に、本作を出版したGame Brewerなど、クラウドファンディングを出版方法の中心に据える出版社が出現してきた。

クラウドファンディングは、出版社の進捗報告に対して出資者があれこれとコメントするという、インタラクティブなやり取りが醍醐味のひとつだ。時には出資者の意見が取り入れられて、ゲームの完成度に影響を与えることもある。また様々な世界情勢と連動して、ゲームの完成までに物理的な意味で紆余曲折があったりもする。これに関してはネガティブなものであることが多いが、それもまた物語と言えるだろう。

本作はそのクラウドファンディングのひとつであるKickstarterを利用して製作された作品である。

さて、前置きは一旦ここまでにして、そろそろゲームの感想を書かなければならない。

さらっとテーマを解説すると、ストロガノフ家はロシアのシベリア進出と領土拡大に寄与し、17世紀からの近代ロシアの礎に貢献した貴族である。本作ではそのシベリア進出がテーマとなっており、我々は東を目指してアクションを行いながら旅をする。

手番でやることは、まず前進。必ず1〜5歩前進しなければならない。そして基本アクションを1度行う。基本アクションは主にリソースを獲得するか、もしくは更に移動を行う。ここでの移動は後ろにも2歩まで移動することができる。その後基本アクションと上級アクションを混ぜて2回まで行い、手番は終了。全てのプレイヤーが春夏秋と3回手番を終えるとラウンドが終了し、4ラウンドでゲーム終了となる。

遊んだ感想としては、リソース管理がとても難しい。リソースの種類は毛皮、馬、お金の3種類で、中心となるリソースは毛皮だ。しかし、毛皮には番号が2〜8まで振られており、特定の番号の毛皮が必要になる場面が多く、それをいかに入手するかが問題となる。そこでお金や馬を(ウマだけに)上手く使って毛皮を変換したり入手したりということを行っていくのだ。

わたしが気に入ったのは、コンボのようなものがそれほど目立っていないところだ。

この手のリソース管理、変換ゲーはポコポコとよくわからないコンボがあって、他人のことなど見てられなかったりすることが多い。だが本作は多少はコンボもあるものの露骨ではなく、比較的一手が渋いタイプのゲームである。

賢い人は、考え出した圧倒的なコンボを他人に邪魔されずキメるのが楽しいだろうという理解ができるのだが、わたしのような愚者には難しすぎるから、コンボゲーには惹かれないのだ。

直接的に攻撃するような露骨な強インタラクションがあるわけではないが、他人の状況が見やすいため、自然と相互作用が感じられる。

手番順が「よりシベリアに近いプレイヤーから」というのもめちゃくちゃ良い。上級アクションはどれも自分のいる場所によって内容が違ってくるのだが、移動に対する動機づけとして、行うアクションの内容以外にも、手番を取るためにどこまで進むかという意味合いも含まれてくる。このようにひとつの行動に複数の意味を持たせると、それはジレンマを生み出し面白くなることが多い。

また、このゲームを語る上で外せない要素が「物語トラック」の存在だ。

当時、シベリアへの進出は、言い換えれば壮大な旅だったはずだ。旅はすなわち物語そのものでもある。

ゲーム中、旅程の中で得られた物語トラックのポイントは、12まで貯まるかもしくは年末になると消費して歌に変え人々に伝えることにより、様々なボーナスや勝利点を得ることができる。これはこのゲームにおいて、非常に重要な要素である。

部外者のわたしが語るのもどうかとは思うが、どうやら本作の製作も困難かつ長い旅路を歩んでいたようだ。

本作の最初の版がわたしの手元に届いたのは、2021年の12月。世界はコロナ禍の真っ只中だった。クラウドファンディングの良い点は資金を先に得られることだが、逆に言えば何らかの理由でコストが大幅に増額した場合、それを吸収するのが難しい。この時期、輸送費は大幅に高騰し、ボードゲーム業界にも大きな影響を及ぼした。本作は価格を上げるか、コストを下げるかという決断を迫られ、出版社はコストを下げるという決断を行ったようだ。しかしその結果出来上がった商品の品質は、出版社や出資者の期待には及ばないものだった…。

その後彼らはメインボードやカードを作り直し、出資者に対し無料で提供するという措置を取ることとなった。これは素晴らしい対応だと思うが、箱やその他のコンポーネントを含めるとわたし的にはガッカリゲーの域を出ず、暫くプレイする気が起きなかったのもまた事実だ。Game Brewerも安くないだろう身銭を切って動いてくれたのに、こんな感情を抱くのは何だか申し訳ないと思いつつも、出資者の中にはわたしと同じ感想を抱いた方もそれなりにいただろうとも思う。

それからしばらくして、2024年の夏、Game Brewerは彼らの旅を終える事を決断した。リソースの管理は困難を極め、事業の継続が難しいと判断し、閉業を決めたのである。ストロガノフの出版が影響したのかはわからないし、したとしても他にも多くの要因があるだろう。

彼らが最後に出版したゲームの中に、ストロガノフの拡張とビッグボックスがあった。もちろんわたしも出資し、25年の5月、ついに手元にそれが届いた。

それを開封して中身を見た時、それはGame Brewerの旅路を紡いだ歌を聴いているようだった。箱も全てのコンポーネントも完璧となり、ゲームは輝いて見えたのだ。

かくしてGame Brewerの旅も、ストロガノフの旅も終わりを告げた。

ストロガノフが完全体になったことにより、Game Brewerの中の人はいくつのボーナス、あるいは勝利点を得たのだろうか。

「我々は常に小規模なインディーズであり続けました。それは一言でいうなら、我々が歩んだ道です。その素晴らしい冒険の中で、わたしは多くの学びを得ましたし、後悔などありません」

彼らのウェブサイトには、このように書かれていた。現実の旅で得られる勝利点が何点なのかは、旅をした本人にしかわからないのである。

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