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  • 3人~5人
  • 50分~70分
  • 2022年~

チューリップバブル山本 右近さんのレビュー

723名
4名
0
4ヶ月前

思い込み、というのは基本的に敵である。真実でないことを真実だと誤解し、固定観念を生み出し、新たなアイディアの邪魔をし、様々な挑戦の機会を奪ってしまう。

特にインターネットが身近になった昨今、手に入れられる情報量は飛躍的に上がったが、質の高い情報はごく一部だ。間違った質の低い情報を鵜呑みにしてしまうと、時には痛い目をみる可能性も孕んでいる。キャッチーでセンセーショナルな情報は特に人の興味を引きやすく、拡散力があるので注意したい。

本作「チューリップバブル」は台湾発のゲームだ。わたしは台湾発のゲームに「クセのつよさ」を感じている。クセがつよいと言えば聞こえが悪いが、ある意味思い込みや固定観念にとらわれないものを感じるのだ。

例えば「ボドゲカフェ・フレンジー」。前半戦でカード(カフェの設備)をドラフト購入し、後半戦はそのカードでトリテをやりつつワカプレみたいなこともやる。わたし的には少し冗長で噛み合わない印象もあるが、今後何かの形で結実しそうなチャレンジに思えた。

「台湾製茶録」も独特で面白い。お茶を作る工程が大きく他者に依存していて、これもわたしの勝手な印象だが、テーマ性をある程度切り捨てて独特なシステムを採用している。

わたしもそれほどボードゲームに造詣が深いわけではないので、これはわたしの思い込みなのかもしれない。だが、わたしはこのような印象を台湾のゲームに抱いている。

そしてこの「チューリップバブル」である。

テーマは17世紀のオランダで起きた世界で初めてのバブル崩壊と言われている経済的事件を取り扱っている。当時、希少価値のある球根は、豪邸に使用人と馬車がオマケでついてくるほどの価値で取引されたという。庶民も貴族も一緒になってチューリップに狂い、農民が家や畑を担保に球根を買い、ある者は一夜にして富豪に、またある者は破産して路頭に迷った。

プレイヤーは競りで購入したチューリップを売却し、その差額で利益を得る。ラウンド毎に相場が変動し、バブルが崩壊するとただちにゲームが終了、その時点で手元にあるチューリップは無価値となり、現金のみが勝敗を決するという仕組みだ。

ゲームの終了条件は実はもうひとつある。120金を貯めて、黒チューリップ「Queen of Night」を先んじて購入できれば、ただちにゲームは終了し、そのプレイヤーの勝ちとなるのだ。

余談だが、じつはこのQueen of Night、1940年代に開発された比較的新しい品種であり、当時は存在していない。

※参考URL https://www.luriegarden.org/plants/tulip-queen-of-night/

当時人気があったのは「センペル・アウグストゥス」というチューリップで、美しく希少とされ、非常に高値で取引されたと言われている。これは本作に登場する「Broken Tulip」の一種である。

後世に実はこれはウイルスに感染したことによる模様だとわかった。病気なのだから弱々しく、維持や栽培が難しいのは当然だ。

今思えば滑稽な話だが、人々はその見た目の美しさに心を奪われ希少品種と思い込み、病気の花に大枚をはたいていたのである。

さて、ゲームに話を戻すと、ゲーム全体の仕組みは基本的に競りゲーだが、経済ゲーム、競り、チキンレースという要素がシームレスに融合していて美しい。

相場変動は経済だ。

まず売れ残ったチューリップを種別ごとに数え、多いものは供給過多とみなされ価格が下がり、少ないものは供給不足とみなされ価格が上がる。これは需要と供給を表している。これらはプレイヤー間である程度操作することが可能で、戦術に組み込むこともできる。

ラウンド開始時に捲られる相場変動カードは完全に運要素ではあるが、目に見えない投資家心理を表すものとすればしっくりくる。

競りにはチキンレース要素がもともと含まれてはいるが、本作の競りはその色が更に濃い。

競り落としたプレイヤーはその金額を支払うが、競り負けたプレイヤーたちは落札金額と市場価格の差額を山分けするユニークなルールが設けられているからだ。

これがこの作品の個性的なところであり、「欲しくないけど競り値があがりそうだから参加する」や、「欲しくないけど相手が欲しそうだからもう少し値を釣り上げる」という行為に強い動機が生まれ、どこまで値を釣り上げられるかというチキンレースならではの緊張感を演出してくれる。

また、ゲームがいつ終わるかがわからないという点も、チキンレース的かつこのゲームにおいて超重要なポイントである。

ラウンド開始時に捲られる相場変動カードでバブル崩壊が宣言されれば、高値で売れると思い前ラウンドで頑張って仕入れたチューリップが全て一瞬で無価値になり、即座にゲームが終了してしまうからだ。このため、最後まで勝敗の行方が分からず、緊張感のある終盤戦となる。

昨日の敵は今日の友と言うが、このような魅力的なテーマのボードゲームができたのも、ある意味400年前の人々の思い込みのおかげと言えるのかもしれない。病気の花を美しい品種だと思い込み、それをきっかけにチューリップの投機が起きて、この歴史的な出来事が起きた…。冒頭で敵と言い放った思い込みが、数百年の時を経てクリエイターにインスピレーションを与えてくれたのだ。

…と、ここで締めても良かったのだが、実はここまでの文章の中にはウソが含まれていることを告白しなければならない。

それはどの部分かお分かりだろうか?

答えは、チューリップバブルのテーマについて説明した部分である。

チューリップバブルについて最初に記したのは、19世紀のチャールズ・マッケイの書籍「とてつもない民衆の妄想と群衆の狂気」である。それによると前述の通り、オランダ全土の庶民が熱狂し、球根は豪邸と同じ価値にまで高騰、そしてバブルが崩壊すると破産者が続出し、経済は混乱したとされていた。

しかし最近の研究によると、実際には投機的な側面より文化的な側面(美しいチューリップを持つというステータス)の方が強く、投機の市場としても参加者の層としても、極めて限定的なものだったことがわかってきたようだ。

※参考URL https://www.bbc.com/news/business-44067178

つまり、チューリップバブルなんて実際にはなかったし、球根で豪邸は買えなかったし、経済も混乱しなかったというのだ。

マッケイは学者ではなく文筆家でありジャーナリストだ。ある種の結論をありきとした取材によりセンセーショナルな物語がつくられ、それが大バズりした結果今日まで語り継がれていた可能性が高いのである。

インターネットというテクノロジーは功罪あると言われているが、案外、昔から我々人類がやっていることはずっと変わっていないのかもしれない。

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いこ
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山本 右近
山本 右近
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