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  • 2人~5人
  • 90分前後
  • 12歳~
  • 2013年~

雲南山本 右近さんのレビュー

230名
5名
0
4ヶ月前

想像力というのは不思議なもので、情報が多ければ解像度の高い写真のような情景が浮かび、少なければ勝手に脳が補完して油絵のような情緒ある情景が浮かんでくる。一見写真の方が真実に近く思えるが、本当にそうなのかは案外わからないものだ。

雲南は、あまり多くを語らないゲームである。

そもそもルールブックに、1000年くらい前の茶馬古道でお茶を売る行商人となって頑張ろう、くらいしか書かれていない。それ自体は、時代設定がめちゃくちゃ大雑把なのが気になるけど、イメージとしてはまぁわかる。

だが、プレイヤーにペナルティを与える監察官、貰う方なのか贈る方なのかわからない贈り物タイル、抽象的な建物コマなど、システムやコンポーネントに割り当てられたフレーヴァーは謎めいている。ルールブックにはヒストリカルノートも一切無く、つかみどころがあまりない。

ラウンドはまず競りから始まる。なぜ競りをするのかはよくわからないが、競りによってそれぞれのプレイヤーは茶を売るための様々な能力を強化していく。

そして次に競りと逆順に茶を売っていく。まず行商人のコマを移動させるわけだが、何故かわからないがたまに他人に追い出される。追い出されると、コマが収入の安い地域に飛ばされて、利益が減ってしまう。

それが終わると今度は監察官がやってくる。何を調査しているのかわからないが、茶の売上総額が一番多い地域にやってくる。そして、条件が合ったプレイヤーのコマはプーアルまで戻されて、収入が減ってしまう。なんらかの不正を咎められたのだろう。

このように、テーマとゲームシステムを重ねてみると謎の多い作品ではあるが、ゲーム自体は非常に面白い。

競りは基本的にはトコロテン方式だが、9金以降は張った全員が利益を得ることができ、いわば可変コストのワーカープレイスメント的な側面も持っている。この9金という設定が絶妙の高さで、特に序盤は5金や7金で安く済ませたい。けど、ギリギリ払えないこともない。

競りの項目は、ワーカーを増やす、移動範囲拡大、建物建設など五種があり、どの要素も重要だ。複数の項目を1ラウンドで競り勝つのは難しいので、どこから伸ばしていくか、それを考えるのも楽しみのひとつとなる。

特に影響力パラメータの管理は、輸送フェイズに複雑なインタラクションを生んで面白い。

自分より影響力が低いプレイヤーの行商人コマを押し出すことができるが、影響力が高いほど監察官からのペナルティを受けやすい。そしてMaxまで上げると逆に監察官ペナルティを受けなくなるというトリッキーなギミックもあり、それが終盤戦に勝負を左右することもある。

ラウンド終了時は、そのラウンドで得た収入をお金として得るか、あるいは勝利点として得るかを選ぶ。自由に比率を決めて混ぜて受け取ることもでき、駆け引きを生んで面白い。序盤はお金にした方が有利だが、ゲーム終了トリガーが「誰かが80点を取る」であることも相まって、どこから勝利点をもらいはじめるかという点が悩ましい。

収入は少ないほど次のラウンドの手番順が圧倒的に有利になるので、計画性も重要だし、逆転のチャンスもある。特に輸送フェイズでは後手番であるほど影響力の高いプレイヤーに計画を崩されるリスクが減り、逆に他人の計画を崩す機会ができるからだ。

つまりゲームの性質としては、足の引っ張り合いがある意味で醍醐味の、プレイヤー間の駆け引きが重要な、インタラクションが強めのゲームである。

ゲームシステムに古臭さはそれほど感じないが、今時多いコンボが主体で相互作用が薄いタイプのゲームとは真逆をいく、古き良きドイツゲームの香りをほんのりと感じさせられた。

さて、テーマ面では前述の通り、大枠では「茶馬古道でお茶を売る」以外に詳細がわからず、それが逆に想像力を掻き立てる。

「麻薬の密売」という裏テーマがあるのでは、と想像する方もおり、何とも鋭く面白い切り口だなと感心させられた。だが、実際のところはどうなんだろうか?

※参考URL

https://bodoge.hoobby.net/games/yunnan/reviews/23815

そこでここからは余談だが、テーマについて少し調べてみた。

茶馬古道というのはシルクロードにも結びつく長大な交易路で、「もうひとつのシルクロード」と呼ばれることもある。交易路として確立し始めたのはちょうど10〜11世紀のことで、ルールブックに書かれた1000年前というのはその辺りのことを言っているのだろう。

しかし、その頃は四川から青海やチベットへというのがメインで、雲南からのネットワークは無かったようだ。

13世紀になるとそのルートが雲南まで延び、プーアルの茶が交易品として使われ始める。この頃にできたネットワークがゲームのメインボードに描かれているものに近いように思う。

茶馬古道は数千キロに及ぶ道のりで、もちろん起伏の激しい山道が多く、行商には年単位の期間をかけて移動したようだ。そこでプーアルの茶は輸送されながら自然発酵が進み、それが後のプーアル茶が生まれるきっかけになった。

本作が雲南というタイトルでプーアルが起点になっているのは、おそらくプーアル茶がその後17世紀以降の清の時代に茶馬古道における交易品のアイコンとして珍重されることになったからではないだろうか。この頃にはプーアル茶の製法が確立し、高級品として外交にも使われていたようだ。

通行証なども実際に必要だったようで、偽造も横行しており、そのような不正や密輸、脱税を取り締まる監察官の存在も明代からあったとのこと。商人ギルドのような建物の遺構があることから、行商人にも組合があったと思われ、影響力というパラメータは組合同士の力関係を抽象化していると考えられる。

※参考URL https://hirokitia.com/2025/06/22/history-of-tea/

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Tea_Horse_Road

結局「雲南」は特定の時代を精密に描くのではなく、歴史の中の茶馬古道をざっくりと切り取ってテーマとした作品なのだろうと思う。ルールブックに詳しい解説が無いのは、設定自体を細かくせずにあえて少し曖昧にして、想像力に委ねた方が面白いという判断なのかもしれない。

想像力の豊かな方が言った「香港マフィアによる麻薬密輸」という裏テーマがあると考えるより、このように考えるのが自然ではないだろうか。

こうして調べたことにより、ゲームのテーマに対する解像度はグッと上がってきた。色々と想像を巡らせるのも楽しくはあるが、情報を集めて整理し、理解するのもまた楽しいものだ。

ただし、実際にどちらが真実に近いのか?我々が辿れるのはあくまでも人の手により脚色されたであろう記録の断片であり、冒頭に言ったように「人の想像力」がむしろ的を射ていることもあるかもしれない。

そういえば、茶馬古道が最盛を迎えたのは18世紀〜20世紀とのこと。一説には、16世紀ごろにはインドまで達するルートが一部には存在したとか。インドでのアヘンはムガル帝国時代の16世紀から作られていて、18世紀には東インド会社がインド産のアヘンを中国に売り込もうとしていた。そして19世紀のアヘン戦争に、その結果始まった香港のイギリスによる支配…。

テーマをどう捉えるか。それは自由であり、各プレイヤーに委ねられている。

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いこ
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山本 右近
山本 右近
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