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  • 1人~4人
  • 60分~150分
  • 14歳~
  • 2024年~

インベンション:知の進化山本 右近さんのレビュー

472名
3名
0
4ヶ月前

人間というものは、社会としても個人としても、過去に縛られ続ける生き物である。

卒業アルバムやmixiやgeocitiesなどに、人に見られたくない黒歴史を残していないだろうか?好きだった食べ物を食べすぎて体調を崩し、逆に食べられなくなってしまったことは?これらのようなある意味他愛のないものもあれば、もっと重いトラウマのようなものもあるかもしれない。

増え続ける昨日にみんな戸惑いつつも、色褪せない明日に変えていこうと生きている。過去の過ちはなかなか消せないが、過去の努力はいつだって未来の自分を支えてくれる。

社会全体で言えば、ちょっとした偶然で起きた出来事が国や社会の先行きを大きく左右することもあれば、思いもよらない技術が生まれ大きく発展を遂げることもある。歴史とはそれらの積み重ねであり、過去と現在、そして未来は常にリンクしているのだ。もしアルキメデスがお風呂嫌いだったなら、科学の時計の針はもう少しだけ進むのが遅かったかもしれない。

本作「インベンション」は人類史における技術と文化の発展をテーマとする重量級ゲームだ。プレイヤーは文明の黎明期から様々な技術を発明し、それらを世界に広めることで勝利点を獲得していく。

この作品の特徴と言えるものはいくつかある。

まずはシステムの中核を担うワーカープレイスメントについて。

通常のワーカープレイスメントは、アクションの早取り、ドラフトの意味合いが強い。アクションスペースは排他的で、基本的にアクション毎にそれを行える人数は限られている。

本作のワーカープレイスメントは「排自的」とでも言うのだろうか。他者のワーカーはそれほど影響しないが、自分のワーカーがいるアクションエリアが使用できないという仕組みになっている。

アクションスペースは10箇所あるが、スペースは2箇所で1エリアを構成しており、エリア数としては5つしかない。ワーカーの数は3つで、しかもそのうちひとつはラウンド終了時にも回収されず残ってしまうので、過去の自分の選択が常に今の自分を苦しめるのだ。

映画「カサブランカ」のリックよろしく、「今夜?そんな先のことはわからないさ」と言いながらアクションを決めるには、一手があまりにも重く感じられるだろう。

「昨日?そんな昔のことは忘れたよ」というわけにはいかないのである。

次は、個人ボードでのタイル配置パズルとリソース管理について。

リソースは文明がテーマだけあって、専門家の人口というフレーヴァーが割り当てられている。これらは経済、文化、技術の三種に分かれており、更に持てる人数に限りがある「学者」がいる。学者は持てる数が少ない代わりに、どの種別としても使用する事ができる。

タイルを配置するにはまずコストとして影響力が必要で、さらにこれら専門家のコストも支払わなければならない。

このタイル配置はタイルの能力を使えるというメリットもあるが、ゲーム終了時の得点にもなるため、タイルの配置自体も大きな目的のひとつとなりうる。しかしリソースはその他のアクションでも多く必要であり、やり繰りがめちゃくちゃ難しい!

タイル配置の専門家コストは、その時既に配置されているタイルの状態によって変わるので、これも過去の自分が容赦なく襲いかかってくるポイントだ。さっきこっちに置いとけば…と言っても今更後の祭り、アフターカーニバルなのだ。

そして最後に、コンボとチェーンについて。

本作は意図的にアクション同士がリンクされていて、一手番でいくつかのアクションを連鎖させる事ができる。

「アイディアの提示」アクションなどに見られる鎖アイコンの無いアクションアイコンによるボーナスは、コンボのようにそのアクションを追加で行える。対して鎖アイコンのあるアクションアイコンは、連鎖アクショントークンを使用することにより連鎖して行えるアクションであり、連鎖させるにはそのトークンが必要だ。こちらをわたしはチェーンと呼んでいる。

これらを手番で複雑に絡み合わせる事ができるため、必然的に考えることが多くなるし、ダウンタイムも長くなる。そのプロセスも複雑なので、せっかくダウンタイム中に次の良い手を考えていても、自分の手番までに忘れてしまうということもよく起きてしまう。

連鎖トークンの数で連鎖の回数が蓋をされているのが救いだが、連鎖により手番が複雑になる点は好きな方とそうでない方に大きく分かれるのではないだろうか。

また、この点はこれまでのラセルダ作品に比べると、わたしとしては異質に感じるところだ。

これまでのラセルダ作品といえば、エグゼクティブアクションという名前のサブアクションをメインアクションの前後どちらかに行うことができるという仕組みが常だった。入力に対して出力が多い仕組みは変わらないが、コンボという形ではなくそれぞれメインアクション、サブアクションと独立していて、複雑ではあるがある種のわかりやすさも残していた。

それに対し、本作はアクションが次の別のアクションを呼ぶ連鎖方式となっていて、明らかにコンボを意図した設計になっており、従来の作品とは大きく異なる印象を持ったのだ。

これはもしかしたら、ラセルダにとっての新たな挑戦なのかもしれない。

「グレート・ギャツビー」では、ギャツビーは過去の栄光と決別できずに破滅の道を辿ったように、時には成功体験が成長の足かせになることもある。過去に囚われていてはなかなか前に進むことができないのだ。大袈裟に言えば、これまでの手法と決別することで、新たなものを作りあげようという意思表示にも見えてくる。

とはいえ、ラセルダらしさも残されている。

右手で銃口を突きつけ合いながら左手で握手をするような、半協力的インタラクションである。本作はワカプレ部分のインタラクションが薄い反面、半協力的インタラクションは強化されている。

アクションのフレーヴァーとしては、誰かがアイディアを提示し、それを元に誰かが発明し、また別の誰かがそれを改良するというものになっている。そうやって一つのアイディアに対し関わったプレイヤーたちは、それぞれが別の利益を得ることができるのだ。逆に言えば具体的に得たい利益があったとして、狙い通りにそれを達成できるとは限らず、得点のプロセスも直線的でなく難解だ。初見で乗りこなすのは不可能に近いように思えた。

わたしはコンボゲーが好きではないし、本作は少し難解すぎるきらいはある。しかし、連鎖トークンによる連鎖数の制限や、自分の過去に縛られるワーカープレイスメントのシステム、それにラセルダらしさが残されたインタラクションなど、全体的にみればこのゲームは好きだし、開発中の次回作「The Great Library」にも期待している。

映画「カサブランカ」のラストで、リックはリスボン行きの飛行機に乗らず、アメリカに帰るのを諦め過去を断ち切った。ラセルダはリスボンとアメリカでの仕事で、ボードゲームの未来を作ろうとしているのかもしれない。

「どんな未来がやってきたとしても、時の過ぎゆくままに…」

君の挑戦に乾杯!

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ハナチャ
Sato39
びーている / btail
インベンション:知の進化 日本語版
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発明の物語の中で歴史に自らの証を刻む
残り1点
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山本 右近
山本 右近
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