- 2人~4人
- 40分~80分
- 13歳~
- 2014年~
ファイブ・トライブス:ナカラの魔神使い山本 右近さんのレビュー
今から5000年後のボードゲームは、一体どんな進化を遂げているのだろう?と考えることがある。勿論、今の我々が想像できないような革新的ゲームシステムが生まれているかもしれないし、或いは革新的なマテルアルがコンポーネントに利用され、その性質を用いたゲームが作られることもあるだろう。
どんなゲームが遊ばれているか、具体的に想像するのは難しい。それでも、駒を手に取り、対戦相手と向き合って、何らかのコミュニケーションを取りながら思考を巡らせる。このような温かみのある営みは、きっと変わらずそこにあるはずだ。
現代人がこのような妄想を巡らせられるのは、歴史学、考古学の発展によるものが大きいのかもしれない。これらの学問は17世紀以降に確立したものだが、これにより昔の人々の生活を垣間見れるようになり、5000年前にすでにボードゲームが遊ばれていたこともわかってきたからだ。
そして、それらのゲームは当時とそれほど変わらない形で現代に残っており、我々も遊ぶことができる。
例えば最も古くからあるゲームと言われているものに、バックギャモンやマンカラがある。
バックギャモンの系譜にあるものといえば、まず古代メソポタミアで遊ばれていた「ウル王朝のゲーム」が思い浮かぶ。そこから日本の双六を含む様々な形に派生したこれらのゲームは、駒の移動にダイスを使用して、ゲームによって戦略性の割合に差があるものの、戦略性を運の要素と様々な形で共存させてきた。そのためゲームとしてのみならず、占いや賭け事に使われることもあった。
一方でマンカラは「盤の穴に石を撒き入れていく」というシンプルかつ数理的なルールが用いられており、運の要素は殆ど無いと言って良い。その基本的なルールはそのままに、アフリカから中東、そしてアジアへと、各土地ごとの色に染められながらも、純粋なゲームとして普遍性を保ちつつ、人々の間を長い時をかけて旅してきた。
このように人から人へと受け継がれてきたゲーム史を思う時、わたしはふと自分自身の小さな記憶に辿り着く。祖母から将棋を教わった頃のことだ。
どこか気品のある古びた木の駒は、盤に置いた時「パチン」と綺麗な音を奏でた。ゆっくりとした手つきで駒を進める祖母の所作を、生意気にも真似しようとしたものだ。
暫くして初めて親に買ってもらったのは、磁石付きのプラスチック製将棋セットだった。木の駒のような美しさはないけれど、携帯性と駒が盤にぴたりと吸い付く便利さがあった。道具は変われど盤上の世界は変わらずそこにあることに、ちょっとした感動を覚えたものだ。
5000年前のマンカラとこのファイブトライブスにも、もしかしたら同じことが言えるのかもしれない。1つのタイルに乗った色とりどりのミープルをつまみ上げ、隣接するタイルにひとつひとつ撒いていく。これは道具は違えどまさしくマンカラの所作そのものだからだ。
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マンカラのシステムを採用している現代のユーロゲームには、マンカラムーブはあくまでも補助的な役割を担っているにすぎないものが多くある。特に有名な作品で言えば、クルセイダーズ、トラヤヌス、オスティアなどがそうだ。これらのゲームではマンカラムーブは個人ボードで行い、その結果はあくまでもアクションの強さや種類、そして獲得できる資源などを選択しているにすぎない。つまり大抵はプレイヤーに「やりたいこと」があり、マンカラは計画的にそれを達成するためのパズルを行う道具であることが多いのだ。
それに対して本作はマンカラをはっきりと主軸に据えている点が大きく異なっている。プレイヤー全員が共通のボードでマンカラムーブを行い、その結果が殆どダイレクトに得点や利益に反映される。マンカラのDNAが他作品より色濃く感じられる筈だ。
当然、テーマ性やカード、魔人の能力などの多くの現代的要素が加えられているが、最も象徴的な要素は手番順セリではないだろうか。得点でもあるお金をビッドして手番順を取り合うが、それぞれが盤面を評価して先手番にどれほどの価値があるのか見極めるというプロセスが面白い。
最大の欠点は明白で、5種のミープルを5×5という広い盤面で扱う上に運要素があまりないため、盤面を評価するのに時間がかかる上に難しいという点だ。盤面が手番ごとに変化するため手番が来てから考えなければならないし、その分ダウンタイムが長くなる。勿論3〜4人戦は多人数戦ならではの良さはあるが、その代わりにこれらの欠点がより浮き彫りになってしまう。元々マンカラは2人用ゲームであるところを本作は最大4人で遊ぶのだから、当然と言えば当然かもしれない。
逆に言えば、2人戦は遊びやすいしまた違った深みがあると言ってもいい。ダウンタイムが短くなるし、1ラウンドに2手番ずつ行うので競りも2人戦ならではの駆け引きが生まれるからだ。
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現代的なゲームとして高い評価を受けている本作だが、その主軸となるのは間違いなく「拾い上げて撒く」という5000年前から受け継がれているマンカラの動きだ。わたしが祖母から将棋を教わったように、マンカラが道具や形を変えながら人から人へと受け継がれてきたからこそ、このファイブトライブスという素晴らしいゲームが遊べるのである。
そして我々もまた、子どもたちにファイブトライブスを教えて一緒に遊び、わたしと祖母の間にあった50年のゲーム史のようなものが積み重なって、それがいずれは5000年後のボードゲームに大きな影響を与えるのかもしれない。
5000年後のボードゲーマーがボードゲームの歴史に思いを馳せて、古代メソポタミアの人々や、そして我々との繋がりを感じながら遊んでくれるとしたら…。人類史におけるゲームという営みに、尊さすら感じてしまうのだ。
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