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  • 1人~4人
  • 75分~150分
  • 12歳~
  • 2021年~
457名
15名
0
4ヶ月前

ボードゲームにおいてわたしは、テーマというものがかなり重要だと考えている。ゲームの理解を深めてくれることもあるし、奥様や家族、友人など、一緒に遊んで欲しい人生の伴走者の方たちに興味を持ってもらうキッカケ作りにもなることもある。

特に(奥様が元々ゲーマーではない)既婚男性ボードゲーマーの方々の中には、奥様がゲームに付き合ってくれたら…という、なかなか叶わぬ理想を思い描いている方が多くいらっしゃるのではないかと思う。

それは自分の身勝手、エゴのようなものだと思いつつも、「いや、ボードゲームは人生を間違いなく豊かにするのだから結局妻にもプラスになるのだ」と、これまた身勝手な自己弁護を心の中で行い、一緒に遊んでもらうために涙ぐましい努力を続けるのだ。

ボードゲームのテーマ性というのは、そのような理想を現実に変えてくれるパワーを秘めているとわたしは考えているが、そのためには、ゲーマーである肝心の我々自身がテーマについてある程度理解することが不可欠である。

本作「グレートウエスタントレイル」は超おもしろいゲームだが、日本人には全く馴染みのないテーマを扱っている。しかし、テキサス→なんか牧場がありそうだから牛がいそう、カウボーイ→知らんけどアメリカにいる牛を捕まえるアニキでしょ、くらいの理解はあるので、カッコいい帽子のアニキが頑張って牛を売る、くらいで何となくテーマがわかった気になっちゃいがちな作品である。そしてゲームがあまりにも面白いから、その程度の理解でも楽しめてしまうのだ。

だがそれでは奥様に本作の魅力を伝え、ゲームの世界に引き込む武器にはなり得ない。そこで今回は、本作のテーマをある程度深掘りしつつ、その魅力を伝えられたらと思っている。

まずは本作のゲームの構造から見ていこう。

プレイヤーは分かりやすく言うと牛の商人だ。まず牛カードでできた牛デッキからカードを引き、4枚の手札を持つ。ゲームのメインボードには双六のようなマス目があり、スタート地点であるテキサスの農場から、カンザスシティと書かれたゴール地点を目指して我々は進んでいく。止まったマス目に書かれたアクションを行い、ゴール地点に到着した場合には牛売却の手続きを行ってスタート地点に戻る。これを繰り返し、ゲームの終了条件が整ったら得点の計算を行い勝者を決めるという具合だ。

細かい部分には多くの要素があり重量級ゲームに分類されてはいるものの、ゲームの大枠としては非常にシンプルなものであることがわかる。

テーマに話を戻すと、これも大枠としては分かりやすい。牛の商人が、牧場から駅まで牛を運んで売る。ただそれだけの話である。だがゲームの構造と照らし合わせたときに、そこには様々な疑問が浮かんでくる。

まず、テキサスとカンザスシティの位置関係だ。

日本人の我々にはあまりイメージがつかないから、「朝起きて、牛連れて、2時間ちょっとの散歩道♪」くらいに思ってる方も中にはいるかもしれない。

しかし、実際には最短で700マイル、つまり1150kmも離れている!これこそが作品のタイトルである「グレートウエスタントレイル」そのものなのである。

またこれは、アメリカにおけるいわゆる「カウボーイ」の文化そのものなのだ。

そうなるとなぜ、わざわざそれほどの長距離を、それもたくさんの牛を引き連れて移動する必要があったのかという疑問が湧いてくる。それには多くの危険が伴ったはずで、それなりに見合った見返りが得られたことは間違いない。

理由は大きく分けると2つある。

ひとつは、テキサスに牛が大量に余っていたからだ。

アメリカ大陸における牛は、まずコロンブスによって主に食用としてカリブ海に持ち込まれ、スペイン系のコンキスタドールたちによりメキシコを経由して北米へと持ち込まれていった。

その後土地の支配者が英系アメリカ人へと移ったのだが、彼らの食肉文化は豚肉が中心であり、牛は労働力として役割が分担されていたため、牛を食べる習慣はあまりなかった。そういった需要の低さと牛の高い繁殖力とが相まって、大量の牛が溢れかえることになったというわけだ。

もうひとつが、東海岸や西海岸での需要の高さである。

西海岸ではあのジョン万次郎も参加したとされるゴールドラッシュが起こり、移民が多く押し寄せて人口が増加。それに伴い経済が拡大し食糧需要が大きく増加した。一方東海岸のニューヨークでは、産業革命により地元での生活基盤を失ったアイルランド系移民が急増し、都市部での食糧需要が急増した。また、東部の交易都市であるシカゴでは、食肉加工場「ユニオンストックヤード」が既に開業していた。

結果、これら遠方にある需要の高い都市に送り込むことで、需要の低いテキサスの10〜20倍ほどの価格で牛を売却することができたのだ。(誤りがあれば教えてください!)

大陸横断鉄道が開業し、カンザスにはその駅があった。そこで、遠路はるばる牛商人とカウボーイたちはカンザスまで牛を追い、鉄道を利用し牛を出荷して、そして富を掴んでいたのである。

牛からしたら、スペインから勝手に連れてこられて、色々連れ回された挙句知らない土地で放置されて、増えたら増えすぎじゃと雑に扱われ、1000マイルも危険な道を歩かされた結果食べられて、とたまったものじゃない。まさに人間の身勝手、エゴの被害者である。もしかしたら、「でも大繁殖できたんだから、牛さんたちも良かったでしょ」と、ボードゲームをやらない妻に何とかボードゲームをやらせようとするボードゲーマーみたいなことを言う人もいたのかもしれない。

いずれにせよ、何となくアメリカンな感じで捉えていた本作のテーマに魅力を感じていただけたら幸いである。この女子ウケしなさそうなテーマをどう奥様にプレゼンするか、あとは皆様の腕にかかっている。

さて、ゲームそのものの細かいメカニクスや魅力に関しては既に沢山書かれている他の方の記事を読んでいただくとして、本項は第二版のものなので、第二版についてもいくつか書きたいと思う。

第二版になって最も大きな変化は、コンポーネントの質の向上だ。初版では厚紙どころかペラペラの紙だった個人ボードが、夢にまで見たダブルレイヤーボードに変わった。これだけでも買い直す価値がある。

余談だが、更にメタルコインが欲しいという方は、以下のショップのものが良いだろう。

そしてソロモードが追加された。身も蓋も無い話だが、これにより本作は奥様の手を煩わせることなく一人で遊ぶことが可能になった。わたしはソロモードは未プレイだが、ソロゲーマーの投稿を読む限り、それなりに良い出来のようだ。

次に、これがわたし的には最も重要な変更だが、ゲームバランスが大きく改善された。細かい変更が多くの箇所に及んでおり、詳細の言及は避けるが、丁寧に修正されている。

これらの変更点はどれも素晴らしく、これからグレートウエスタントレイルを買おうという方は、初版がいくら安く売られていたとしても、この第二版を強くお勧めしたい。

ただ、強いて挙げるならば、悲しい変更点がひとつある。

初版では「ネイティヴアメリカン」だったものが「ならず者」に変更されてしまったのだ。カウボーイたちは当時、ネイティヴアメリカンたちとの交易で、自身の食糧や装備品を得ていたらしい。そういったちょっとした深みのあるテーマだったものが、昨今のポリコレの影響か、賞金首のならず者に変更されてしまった。ネイティヴアメリカンというのは、現代において我々日本人が考える以上にセンシティブなものらしい。

そういえば、アフリカの植民地をテーマとした同作者の「モンバサ」も、リメイクの際にSFに衣替えしてしまったのを思い出す。

これらのセンシティブなテーマに対して不快感を抱く人がいることを否定はしないが、ボードゲームのテーマ性を愛するわたしとしては、こういったテーマが失われてしまうのは、妻にボードゲームで遊んでもらえないことよりも寂しく感じてしまうのだ。

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山本 右近
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