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  • 1人~4人
  • 20分~90分
  • 14歳~
  • 2016年~

シェイクスピア:バックステージ山本 右近さんのレビュー

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3ヶ月前

10年ひと昔というけど、もっと前のように思える出来事もあれば、10年も前とは思えないくらい最近の話に思えるような出来事もある。だけど、何だかんだで10年って月日は長いし、何らかの変化がおきるのは避けられない。

特にここ10年は、コロナ禍っていうその前後で社会の価値観が変わってしまうような出来事があった。突然窮地に立たされた人も沢山いたし、人里離れた山の上にリモートワークの拠点を作っちゃうとか、時代が生んだ制約を逆手に取って儲けた人も少なからず居たんじゃないかな。

このゲームの主役であるシェイクスピアもそんな時代が生んだ制約を逆手に取った工夫で成功したひとりだと言えると思う。実はこのゲームのルールブックの巻末にも書いてあるけど、この頃のイギリスでは女性は舞台に立つことができなかったんだ。

法律でそう決められていたわけじゃなくて、慣習というか不文律みたいなものだったらしいけど、むしろそういうのって法律より厄介なこともある。そんなわけでその頃、女性役は大体美少年の役者が演じていたんだけど、シェイクスピアは劇の中でそれを巧みに利用したんだ。

例えば『十二夜』では、少年が扮する女性主人公ヴァイオラが劇中でシーザリオと名乗り男性のフリをしたことから、恋のドタバタに巻き込まれる。男性が演じる女性が劇中で男性のフリをする、というギミックだね。慣習を利用してジェンダーの要素をエンタメに盛り込むっていう、当時他の誰もやってないことをやっていたんだ。すごいな!

ゲームに話を戻すと、まぁ殆どの戦略ゲームはそうなんだけど、このゲームにもアクションに色々制限があって、それを色々知恵を絞って上手く何とかするのがめちゃくちゃ面白い。

まずラウンドの最初にやりたいアクションの数だけ駒を握るんだけど、握った駒が少ない方が先に行動できる。つまり早さと効率はトレードオフということ。ただし、これはこの拡張抜きでの話。この「Backstage」拡張では、この手番順競りで握らなかった駒も舞台裏で活躍させることができるんだ。

舞台裏デッキから毎ラウンドプレイ人数に応じた枚数のカードが並べられて、サブアクションのアクションスペースのような役割を果たす。競りで握らなかった駒は、手番にこのカードの上にワーカープレイスメントの要領で排他的に配置することができて、何らかの効果が得られるってわけ。でもこのアクションも手番を使うから、そもそもせっかく手番数を犠牲にして手番順を取ったのに、舞台裏ばかり優先していたら本末転倒。かといって舞台裏アクションは早取りだから、他のプレイヤーの舞台裏アクション狙いが見えてたらそっちを優先せざるをえなくて、舞台裏を捨てて競りで沢山駒を握ったプレイヤーが有利になっちゃうこともある。

基本的なシステムは変わらないのに、インタラクションも考えることも増えて、やれることは増えるのに緩くはならないし、理想的な拡張セットだと思った。ちょっとプレイ時間は延びちゃうけどね。

ところで、ぼくらがこのゲームで演じる16世紀の座長さんたちって、どんな苦労をしてどんな喜びを感じていたんだろう。たまにそんなことを思うけど、ぼくらにはボードゲームと想像力がある。目を瞑れば、そこはもう16世紀のロンドンに…

空は夕暮れて、街頭がわりの松明が霧に濡れた石畳を赤く照らしていた。路地裏からは馬車の車輪が軋む音、そしてテムズ川からは荷船が波を掻き分ける音がまるで私たちの会話に混ざるように聞こえてくる。その日の稽古を早めに切り上げた私たちは酒場「人魚亭」へと向かっていた。劇団の若い団員たちは稽古の疲れを笑い飛ばしながら、わたしの後に続いて店へと入って行く。

中はいつも通りの喧騒だった。木の梁から吊るされた燭台が煤けた炎を揺らし、粗野な男たちが酒を酌み交わしている。入るや否や、常連の男と会話を交わす団員、肩を叩き合う団員もいた。

女王に披露する公演の準備は忙しいが、今日は作業の進捗を進めるより、酒場で団員たちの士気を上げることを選んだ。演劇に携わる者達の武器は剣ではなく感情と情熱だからだ。

程なくすると再び扉が軋む音がして、二つの影が入ってきた。情熱的な目をした男、マーロウと、落ち着いた風貌に常に思索を巡らせているような男、シェイクスピアだ。

「おお、座長殿。劇団の繁盛は耳に届いていますよ。」

マーロウは笑いながら、エールがたっぷりと入ったマグをわたしに勧める。

「繁盛と言っても、観客の興味は移ろいやすい。我々も座長殿も気が抜けませんね。」

シェイクスピアは低い声で言い、酒場のざわめきを背にして椅子に腰を下ろした。

二人は隣で芝居の話を始めると、それはやがて熱を帯びていった。筋をどう転がすか、観客の喜ぶ演出は、斬新なアイディアは…。わたしはその議論を聞きながら、彼らが時代の最前線で同じ悩みを抱えることに、妙な心強さを感じていた。

「おやおや、みなさま。」

そこに朗々とした声が割って入ってきた。顔馴染みの商人だった。手には新しいビロードの衣装を抱え、わたしたちの次の舞台にぴたりと合うと大袈裟に喧伝する。マーロウは肩をすくめて苦笑いし、シェイクスピアは興味あり気に生地を指で撫で始めた…。

…さて、そろそろ目を開けてみよう。

この拡張セットで新たに登場する舞台裏カードには、今出てきたような酒場の主人や劇作家マーロウ、商人、屑拾いみたいな、テーマ性を豊かにするカードが入っている。これらはゲーム中に物語を膨らませてくれるから、みんながよりプレイに没入する手助けになると思う。ボードゲームにとって、テーマ性はゲーム性と同じくらい大事だからね。

そういえばシェイクスピアの名言で「この世は舞台。人はみな役者にすぎない。」ってセリフがあるのを思い出した。そう、『お気に召すまま』でのセリフだ。役者は英語で言えばPlayer。この世がゲームだとすれば、ぼくらはゲームのプレイヤー。なんだか、マザーテレサの「人生はゲーム、楽しみましょう。」という言葉に通じるものを感じてしまう。文脈によってはポジティブにもネガティブにも取れてしまう言葉だけど、ぼくは好きだな。

生きていると何かと制約に縛られることが多くて嫌気がさすこともあるけど、こういう時代を超えた名言と最高に面白いボードゲームは、いつも生きる楽しみをぼくに思い出させてくれるね。

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山本 右近
山本 右近
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