- 2人~4人
- 30分前後
- 10歳~
- 2025年~
テイク・タイム18toyaさんのレビュー
【速報レビュー】難易度が高く一筋縄ではいかないが、成功した時の気持ちよさも半端じゃない協力ゲーム!
【評価8.5/10】
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2025年、日本人ボードゲーム作家である林尚志さんの作品「ボムバスターズ」が見事ドイツ年間ゲーム大賞を受賞した。これは歴史的な偉業で素晴らしいことだと思うが、皆同じことを考えたのか、市場からはあっという間に「ボムバスターズ」が消えた。「協力ゲーム」を遊びたい欲が高まっている中、ボムバスターズを入手できなかった私の目に止まったのが本作だった(失礼な話と思いながらも正直に告白する)。
こう書き出すと本作が別の作品の代替のように思えてしまうかもしれない。しかし、本作をまだ第1章だけしか遊べていないながらも「これは12月のベストだ」と思ったため今緊急でこのレビューを執筆している。それくらい刺激的な良いゲームだったと言うことだ。
ここ最近は良いゲームが多く、少し時間が経てば埋もれがちな傾向があるように思う。しかし本作はそのような波間に消えてしまうにはあまりに惜しい。そう思ってのレビューである。
興味を持たれた方はぜひプレイしてみて欲しい。そしてこの刺激的で困難で脳を刺激する極上の協力ゲームを体験してみていただきたい。
では、以下で本作の特徴等を見ていこう。
◇本作の特徴
本作はプレイヤー全員がチームとして試練に挑み、成功すれば全員勝利、失敗すれば全員敗北という「完全協力型」のゲームだ。
本作のモチーフは時計で、盤面が1・2時、3・4時、5・6時、7・8時、9・10時、11・12時の6つの区画に分割されている。プレイヤーたちはランダムに配布された手札から選んで1枚ずつ、6区画のどこかにカードを置いていく流れである。
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本作では40に上る試練が用意されており、1〜10の10章ごとに4つの試練が封入されている。挑む試練を決めたらゲームスタート。基本の流れは上記した通り、各プレイヤーが時計の6区画のどこかにカードを1枚ずつ置いていき、全員が手札を置き切ったら判定の時間。試練に成功したかどうかを判定し、成功していたら試練クリア、というシンプルな流れだ。
ただし流れはシンプルでも難易度が易しいとは限らない。本作の難易度は結構高いと私は考える。難しいポイントは以下の通りだ。
- 配置フェイズ(カードを置くフェイズ)では、基本的にカードを伏せて置く必要がある
- 配置フェイズになってからは一切のコミュニケーションが行えない
- カードは全部で24枚あるうち、プレイヤーに配布される枚数は12枚と半分であり、非常に振れ幅が大きい
ここが非常に難しい。本作では配置フェイズで一切コミュニケーションが取れない代わりに、配置フェイズの前に作戦会議フェイズという時間が用意されている。ここで「今回の試練はどのように置くか」を話し合っておく必要があるのだが、実はこの時点でカードの中身を見ることはできない。これも難しいポイントとなる。
4. 配置フェイズに入る前に作戦会議フェイズでコミュニケーションを取り方針をあらかじめ決めることができるが、この時点では手札を見ることができない
半分のカードは使われないというランダム性の高さ、おまけに他人のカードの中身も分からない。情報が非常に少ないのに、試練をクリアするためには緻密なコントロールが求められる。ゆえに他プレイヤーのカードを出来るだけ推測しなければならない。不可能を可能にする営み、これこそ本作が非常に刺激的な理由だ。
ちなみに、遊んでいる最中は気付かなかったが、「事前に作戦会議はできるが、一度配置を始めたらコミュニケーション禁止」という大枠は「スカイチーム」に似ていると言える。スカイチームを知っている人は本作の遊び感をイメージしやすいだろう。
◇名作「花火」や「ボムバスターズ」の系譜〜論理と跳躍
不完全な情報から自分が打つ手を推理しなければならない協力ゲームとして、名作「花火」がある。花火は「他のプレイヤーの手札は全て見えているが自分の手札だけ見えない」という点で違いはあるものの、両者の共通点は「全ての情報が公開されていない中で細い糸をたぐるように推理を重ね、他者の行動の理由すらも推測の糧とする」ゲーム性だ。
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花火は数少ないヒントを消費して他の人に「自分が何を持っているか」の情報を部分的に教えることができる。しかし一方で花火は全てが明らかになるほどヒントを出せるような生やさしいゲームではない。ヒントを出せる回数も出し方も限られており、完全情報には程遠いため、不完全な情報や他の人の行動「なぜこれにヒントを出したのか」という意図から見えていない情報を推測していかなければならない。
これは冒頭にも触れた2025ドイツ年間ゲーム大賞受賞作である「ボムバスターズ」も同様で、開始時に1枚だけ数字を公開できるのだが、公開された数字そのものだけでなく「なぜその数字を公開したのか」という意図まで含めて推理することが必須のゲーム性だ。
本作「テイクタイム」もこうした系譜を受け継いでおり、6区画に置かれる12枚のカードのうち、プレイ人数にもよるが2〜4枚を公開して置くことができる。当然、完全情報には程遠いため、「なぜその区画にそれを置いたのか」「なぜそのカードを公開したのか」という事すら推理の材料にする必要がある。これが非常に痺れる。
論理だけでは埋まらない壁を越えるには「跳躍」が必要となる。つまり仲間を信じて「みんなのこの流れからここに置かれたカードはアレのはずだ」という読みをもとにした決断だ。それは全く確実ではない。不確定な推測に過ぎない。しかし、仲間の「なぜその順番に置いたのか」「なぜあのカードを公開したのか」などのピースをつなぎ合わせて推測し、決断し、そしてそれが見事的中していた時。
それはそれは本当に得難いほどの脳の快感を生む。
ただし、ただの「ムリゲー」ではこの快感は生まれない。一度でクリアできなくても「ああっ、もう少しだった!クリアにかなり迫ってたぞ!」という絶妙の難易度が必要だ。本作はこの難易度設定が極めて優れていると感じた。
筆者は第1章の4つの試練を全てクリアしてきたが、最初の試練は全くのチュートリアルではあった。しかし第2試練から既に「あれ?これ結構難しくない?」となり、第3試練では4回のチャレンジを必要とした。しかしこの4回はどの時も「無理ゲー」ではなく「惜しいっっ!」となる難易度だったため、みんな諦めずにチャレンジを続けることができた。その結果、第4試練は2回目のチャレンジでクリアできたが、あっさりという感じではなかった。上で言う「仲間を信じた跳躍」が決まったためだ。これは全員のガッツポーズが出た!私などは「イエス!!」と叫んでしまった。それくらいの気持ち良さだったのだ。
1章だけで本作を語るなよ、と言われてしまうかもしれないが、個人的には第1章を遊んだだけで「今月のベストゲーム!」と確信してしまったので許していただきたい。筆者としては今後もプレイを続け、ぜひクリアまでテイクタイムの世界を堪能したいと考えている。
私が「イエス!」と叫んでしまった盤面。
◇弱点
さて、論理と跳躍が決まった時に脳が超絶喜ぶ協力ゲーム「テイクタイム」が良作であることはここまで説明した通りだが、弱点も皆無とは言えない。
まず、写真の映えがもしかすると今一つかもしれない。実際の盤面やカードを見ると箔押しが施されており想像以上に綺麗なのだが、全体写真だとそこまでは分からないだろうし一見地味に見えてしまう。昨今は「写真映え」するゲームが多いため、比較すると物足りなく感じる人もいるかもしれない。
また、本作のキモが論理思考にあることは上記のレビューを読んでいただいてお分かりのことと思う。従ってプレイヤーには論理思考能力が求められるのは必然だが、本作ではこれに加えて「言語化能力」も必要となる。なぜなら配置フェイズは一切コミュニケーションが取れないため、いかに作戦会議フェイズで十分な議論をできているかが非常に重要となるためだ。表向きに置けるカードの枚数は限られているが、それ以外の「お約束」を事前に十分打ち合わせしておければ、推測できる情報が圧倒的に増える。この「作戦会議」を楽しいと思えるかどうかが、本作自体を面白いと思えるかどうかに大きな影響を与えるだろう。その意味では若干「人を選ぶゲーム」だという点は留意して欲しい。
あとは、端的に言うと「結構難しい」笑。上記したが、第1章くらいは4つの試練を全部1回クリアできるのかな?とか甘いことを考えていたら、いきなり第3試練でビビった 笑 みんな「これキッツイな!」「うわームズ!」と連呼しつつも「せめて第1章は全試練をクリアしないと帰れない!」と気合を込めてくれたので、誰も挫けることなく第1章を遊び切れた。もちろん、ゲームを続けられたのは「ゲーム自体が面白かった」「絶妙に届きそうで届かないから次を遊びたくなる」という「ヒキの強さ」が一番の理由ではあるのだが、「決して簡単ではない」と言うことは肝に銘じて遊んだほうが良いかもしれない。
以上のように、本作の弱点は本作の長所の裏返しである。本作は簡単ではないからこそ試練をクリアした時には痺れるほどの快感があるし、言語化を尽くして十分作戦会議をしてから配置フェイズに移行し、淡々と置いているように周りからは見えたとしてもプレイヤー同士は「ああ、その順番で置くならあそこのカードはきっとアレだな」と推理が繋がり楽しいのだ。よって、弱点というよりは「特徴」というべきなのかもしれない。
◇まとめ
以上、テイクタイムの速報レビューをお届けした。第1章クリアしかしていない身でレビューというのは無謀でもあるし、もしかすると不遜かもしれない。が、筆者自身を含めプレイした全員が「ぜひ第2章以降も遊びたい!」「良いゲームだった!」と口々に賛辞を送ってくれ、そのうちの1人は「これを遊ばせてくれてありがとう!」と感謝までしてくれた。それだけのポテンシャルが本作「テイクタイム」にはあったと、筆者自身も思っている。それゆえ今回の速報投稿に至ったことをお許しいただければ幸いだ。
以上です!これだけのスピード感で投稿したのは自分的には「赤の大聖堂」「ブルゴーニュスペシャルエディション」に続いて3作目でした!
このまま埋もれるには惜しすぎるゲームです!ぜひ色んな方に遊んでもらえたらと思っています^^
最後になりましたが、本レビューを読んでいただきありがとうございました!この記事が皆様の良きボドゲライフに貢献できれば何よりです♪
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