- 2人~5人
- 20分~50分
- 10歳~
- 2024年~
メソス18toyaさんのレビュー
【レビュー】プレイ時間も悩み具合も丁度いい!通も楽しめるオープンドラフト
【評価8/10】
オープンドラフト✖️タブロービルド
本作は2024年にリリースされた作品。作者はバラージ、ツォルキン、マルコポーロの旅路、ダーウィンズジャーニー、ニュークレウム等、多くの名作を手がけたシモーネ=ルチアーニ氏と、「海鳴りのドラゴン」でルチアーニ氏との共作メンバーだったヤニフ=カハナ氏だ。
本作の中核となるシステムは「オープンドラフト」「セットコレクションによる勝利点獲得」等、ある意味ベタな王道システムとも言える。しかし本作ならではの仕組みもしっかりと組み込まれており、何度も遊びたくなるゲームとして仕上がっている。
以下で内容を見ていこう。
基本の流れ
本作の基本的な流れは以下の通り。
1 手番順タイルの上方向にトーテム駒を配置しているプレイヤーから順に、好きな「提示タイル」にトーテム駒を置いていく。
2 全員がトーテム駒を提示タイルに移したら、左の提示タイルから解決。プレイヤーのトーテム駒が載っているタイルの指示通りカードを上段または下段から取り、その後手番順タイルに上詰めでトーテム駒を戻す
3 全員のトーテム駒が手番順タイルに戻ったら、下段にあるイベントカードを解決
4 上段下段を整える
上記の流れが1ラウンドで、本作は10ラウンドを通してカードを取り合う流れとなっており、基本要素は非常にシンプルだ。提示タイルの指示は基本的にカードを取るアクションのみのため、考えどころは非常にまとまっている。
1. トーテム駒の配置
まず 1 でいきなり悩ましい。本作のジレンマは提示タイルが右側に行けば行くほど多くのカードを得られる点に集約される。
勿論、カードがたくさんあって悪いことはなさそうなのでトーテム駒をなるべく右の提示タイルに置きたくなる。しかし、左の提示タイルはカードを得られる枚数が少ない代わりに早く手番が回って来る。そのため希少性の高いカードや早い者勝ちのカードを取りやすく、しかも次のラウンドの手番順も早くなるというメリットがある。
一方で、右に行けば行くほど提示タイルの指示で得られるカード枚数が多くなるが、もっと早い手番の人が良さそうなカードからどんどん取っていくため、もらえるカードは残り物になる上に次のラウンドの手番順も遅くなる。更にプレイヤーの中で最も右の提示タイルにトーテム駒を置いた人は、手番順タイルにトーテムを戻す際に食料を失う。食料が無い時のみ、名声点を失う。
まずは、この提示タイルへのトーテム配置がお互いの思惑も絡む面白ポイントの一つだ。
2. カード獲得
次に 1 でトーテムの配置が決まったら 2 で左から順に提示タイルの指示に従いカードを取る。各プレイヤーの獲得枚数はこの時点でほぼ決まっているので、 1 と 2 はセットで考えるレベル。イベントや最終的な勝利点などを含めて戦略を立て、カードを取っていく。
カードは人物が6種類。
建物はオールユニークのカードが21枚あり、プレイ人数によって使用枚数が決まるが、中身は時代ごとにランダムシャッフルとなるので1ゲームの中でどの建物が出るかは捲られるまで分からない。
人物カード6種は以下の通り。
採集者 イベント「食料供給」で支払い食料を3枚減らす
狩 人 イベント「狩り」で狩人の数に応じて食料及び名声点を得る。カードに肉が描かれた狩人を獲得した時は更に、狩人数分の食料を得る
芸術家 イベント「洞窟壁画」で芸術家の数に応じて名声点を獲得または喪失する。また、ゲーム終了時に芸術家2枚ごとに10名声点を得る
シャーマン カードごとに⭐︎〜⭐︎⭐︎⭐︎が描かれている。イベント「シャーマンの儀式」において、⭐︎が最多なら名声点を得て、最少なら名声点を失う
建築家 建物を建てる際に食料コストを減らす。またゲーム終了時に各カードの左下に書かれた名声点を得る
発明家 ゲーム終了時「発明家の数✖️発明アイコン」分の勝利点を得る
上から4種の人物はイベントに影響する。
下の2種は若干特殊で、建築家は直接大きな勝利点を得られる訳ではないが建物は強力な効果のものが多いので、建物プレイに寄せるならばアリだ。発明家は最後の勝利点にしか影響を及ぼさないが、集めれば集めるほど点数が伸びるタイプ。伝わる人には伝わる言い方で言うと、「世界の七不思議」で言う科学に近い立ち位置と言えるだろう。
いずれにせよ人物カードを取る時は特にコストは必要ない。
一方建物カードは時代によって若干効果が異なるが、
カードを獲得した際に食料を得られるもの、
イベントで有利になるもの・不利を消すもの、
ゲーム終了時に勝利点を得られるもの
等で、獲得のためには人物カードと違い食料が必要となる。前半に入手できる建物はゲームの展開において有利が得られるもので、後半に入手できる建物は勝利点に繋がる。食料を使うとイベント「食料供給」で食料が不足する可能性があり失点の危険もあるが、こうしたリスクを背負っても建物を獲得すべきか、戦略が問われるカードだ。うまく使えれば強いのは間違いない。
基本的には、人物カードにしても建物カードにしても、獲得して悪いことはない(人物カードを取りすぎるとイベント「食料供給」で食料の支払いが増えるくらい)。従って、悪いことを避けようという考え方よりも「どうやって点数を取っていこうか」というポジティブな思考でカード獲得の作戦を考えることができる。純粋に戦略を楽しめる点は本作の長所だ。
3. イベント解決
全員が提示タイルのアクションを解決し、トーテム駒を手番順タイルに戻し終わったら 3 下段にあるイベントを解決する。人物カード説明の中でも書いたが、4種のイベントは以下の通り。
- 食料供給
- 狩り
- 洞窟壁画
- シャーマンの儀式
基本的には狩りは良いことだけ起こるイベント、食料供給では自分が取った人物カード枚数分の食料を支払うノルマイベント。
洞窟壁画とシャーマンの儀式は人によって名声を得ることも失うこともあるイベントだ。終盤に行けば行くほど名声点を得られる人と得られなかった人との差が大きくなる。
これらのイベントは山札に混ざっており、どのタイミングで起こるのかは明確には分からないが、逆に言うと起きていないイベントもいずれは必ず起きるということだ。各自の作戦で、こうしたイベントにどう対応するのか、あるいは無視するのかも最終的な名声点の差に繋がるので侮ることはできない。
ちなみに2枚、3枚のイベントカードを同じラウンドで解決すべき場合もある。もし食料供給が混ざっている場合は、食料供給を必ず最後に解決する。
4. 上段下段の整理
イベントを解決した後、 4 の上下段のカード整理を行う。手順は
下段の人物カード・イベントカードを全て捨てる
↓
上段の人物カード・イベントカードを全て下段に移動
↓
山札から上段に「プレイ人数+4枚」のカードを補充
という流れとなる。つまり下段は基本的に上段にあるうちには取られなかった余りカードが陳列されており、上段には常に新たなカードが並ぶということだ。
もちろん、上段にいいカードばかりが並んで取りきれなかった場合は、次のラウンドの下段が魅力的になることはある。あるいは、上段にある時に一旦見逃されたカードが、山札からのイベントカードの捲れによって急遽必要となり、急激に魅力的になる場合もある。
しかし、基本的にはやはり上段の方がフレッシュな顔ぶれで魅力的なカードが並んでいることが多いため、上段のカードは取られがちだ。となると下段に行くカードは上段の時にかなり取られてから下段に移動することになる。
これによって、例えば4人以上の時に最も右にある提示タイル「↓↑↑」、つまり下段から1枚取り、上段から2枚取るアクションが、実質的には上段から2枚しか取れないことも起こる。そのプレイヤーの手番より前に下段のカードが取られ尽くしてしまい枯れる場合があるからだ。
特に下段のカードにイベントカードが含まれている時は更に下段から取れるカード枚数が減るため(こういうケースも割とよくある)、「↓↓」の提示タイルですら↓からカードを1枚しか取れないなどという事も起こる。
山札からのカード補充が必ず上段にされるのもポイントで、捲られたカードがイベントでもいったん上段に置かれるため、下段に移動するまでそのイベントは起こらず、時間の猶予がある。イベントが見えることでカードへの需要が変わるのも面白い。
こうして、刻々と変わっていく上段下段の状況を予想しながら、次のラウンドでどの辺りの手番順を取ろうか、また一旦手番順は捨ててとにかく目の前のカードを大量獲得しようか、などと各自が戦略を凝らすことになる。
こうしたやり取りを10ラウンド繰り返したらゲームは終了する。終了時効果を解決して名声点を最も獲得したプレイヤーがゲームに勝利する。
本作の醍醐味
本作の醍醐味は「名声点を取るための作戦」と「入手できるカードと次ラウンドの手番順の組み合わせ」の板挟みで悩むところだ。
名声点を取るための作戦はいくつかあり、
- 狩人特化
- 発明家特化
- シャーマン作戦
- 芸術家作戦
- 建築家+建物作戦
などがある。ただし各プレイヤーには特化した人物以外も各種類1〜2枚程度は取りたい理由がある上に、「あまりアイツに取らせすぎると危ないぞ」とカット合戦もよく起こるので実戦では特化は難しく、2つ以上の作戦を兼用することが多い。
また、カードの出方によっても各プレイヤーのカードの取り方は変わるためアドリブ力が問われる。こうした他プレイヤーの意思の介在を読んで乗り切る事こそオープンドラフトの妙味と言えるかもしれない。作戦がハマって点数がうまく取れると実に爽快だ。
こうした「狙いのカード」を取るためには他のプレイヤーが何を欲しがっているかを見通した上で手番順をコントロールする必要がある。
勿論複数人の意図が絡み合うので完全に読み切って制御することなど不可能だ。しかし中盤、終盤辺りになると、それぞれのプレイヤーがどこで点数を取ろうとしているかが見えるので、うっすらと「欲しいカード」が見えてくる。であれば、他の人がどうしてそのアクションの位置に置いたのか、狙いはうっすら見えてくる。
今のラウンドはしゃがむのか、目一杯取りに行くラウンドなのか。下段は今何枚取れて、次のラウンドは下段から何枚取れそうなのか。であれば…
こうした、他の人への読みと次ラウンドに向けた未来予測、そして手番を遅くしてでも今のうちに多くの枚数を取るべきなのか待った方が良いのか、非常に悩ましい選択を迫られる。この悩ましさこそ本作の醍醐味と言えるだろう。
更に言えばこうした濃厚なゲームを10ラウンド、1時間半程度で堪能できるのも本作の売りだ。時間の割に満足度が高い本作は「コスパが高いゲーム」と言えるだろう。
弱点
上記で見てきた通り、本作は濃厚な読み合いと戦略構想が楽しく、プレイ時間の割にボドゲをしっかり遊んだ感を堪能できる良作だ。ただし弱点がない訳ではない。
ドラフトゲーム全般に言えることだが本作もその例に漏れず、「何度も遊んでこそ輝きを増すゲーム」という点だ。
無論、本作は全員が初プレイでもそれなりに楽しめるように作られてはいる。しかし、やはりプレイ回数をある程度重ねた方が、本作の醍醐味である手番順操作や、どういう路線で点数を稼ぐかを捻り出したり、各プレイヤーの作戦を読み解きつつ隙間を縫ってどのカードを取り得点を伸ばすか…という読み合い、心理戦を堪能できる事は疑いない。
従って、本作はノンリプレイ派やオープン会のみに使用する人に対するお勧め度が下がる事は否定できない。
ただし、この弱点は裏を返せば「同じゲームを同じメンバーで何度も繰り返しプレイする環境の方にとっては、本領を発揮するタイプのゲーム」という事でもある。
世界の七不思議、イッツァワンダフルワールド等に続く、ちょうどいいプレイ時間で仲間内で何度も回せる「次のドラフトゲーム」を探していた方には、1つの答えになりうるゲームだろう。
まとめ
以上、本作の大まかな特徴を見てきた。
・本作は、手番順の操作と全員が見えているカードの中からカードを順に取っていくオープンドラフトの組み合わせに意識を集中できる中量級の良作である。
・たくさんカードが取れる場所に自分の駒を置くと、他の人があらかたカードを取り終わった後の残り物をいただく事になる上に、次のラウンドでの手番順も遅くなる。
・一方、少数のカードしか取れない場所に駒を置くと得られる枚数は少ないがカードの選択肢は多く、しかも次のラウンドでの手番も早くなる。
・たった10ラウンドの中で4種のイベントが3回、必ず起こるため、これらに備える必要もありつつ最終的な勝者となるための戦略も必要となる。
・本作ではこうしたお互いの思惑が絡み合う濃厚な駆け引きを1時間半程度のプレイ時間で味わえる。
・ノンリプレイ派、オープン会で使う予定の人には向いていないと言う面もあるものの
・同じメンツと何度もプレイを重ねる派の諸兄諸姉にはぜひお試しいただきたい作品だ。
レビューは以上です!
やや長文めになりましたが、最後まで読んでいただいた皆様、ありがとうございました♪
皆様の良きボドゲライフに貢献できましたら何よりです^^
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