チョコっと密輸Bluebearさんのレビュー

ジレンマで有名な数学者デザイナー、ライナー・クニツィア氏のデザインした心理戦ブラフゲーム。

もともとは2019年の「Heisse Ware: Krimi-Kartenspiel」という作品で、この時は酒のボトルを密輸するゲームでした。

これを2020年に日本版を作る際に、題材をチョコレートに変えたものが今作です。

ちなみに2022年には「Soda Smugglers」というタイトルで、ソーダバージョンも発売されております。

なので箱にも英語タイトルの表記は無く、カードにだけ小さく「Choco Smugglers」とありますが、それでBGGなどを調べても出て来ませんのでご注意下さい。

個人的には酒ビンのほうが密輸っぽくていいんだけどなあ…。

◾️規制品を持ち込もうとする旅行者と、摘発する国境警備員の対決！

何とこの国ではチョコレートが規制品になっていて、海外から1人1個までしか持ち込む事ができません。

2個以上持ち込んだ事が発覚すれば、逮捕され没収されてしまいます。（チョコのサイズはどうすんねん！と思いますが、そこはとりあえず気にしない、笑）

旅行者は《賄賂》のチョコを警備員に渡して、何とか見逃してもらおうとします。

警備員は、賄賂を受け取って見逃すのか、強制的にスーツケースを開けさせるのか、クロだと踏んで逮捕に踏み切るのか選ばなければなりません。

ここにお互いニヤニヤしながらの腹の探り合いが生じるのです。

テーマがそもそもユーモラスなので、ガチな心理戦を戦う印象ではなく、シンプルで軽い探り合いを何ラウンドもやるというスタイルです。

8人まで無理なく参加できて、説明もそれほど難しくなく、トータル30〜40分程度で盛り上がれる好ゲームでした。

◾️心理戦だけど、やる事は非常に単純。

プレイヤーのうち1人が親（警備員）となり、残りは全員旅行者になります。

警備員は、人数によって調整された《賄賂》《スーツケース》《手錠》のトークンをまとめて持ちます。

旅行者は《スーツケースカード》を5枚ずつ持ちます。（裏に持ち込むチョコレートが描いてある）

旅行者はカードの中身を見て、1枚を《賄賂》として伏せて前へ出し、手前に2枚のスーツケースを《持ち込み品》として伏せて置きます。

残りの2枚は使わないので非公開で捨て札にします。

みんなが出したら一斉に《賄賂》を公開します。（この基本3枚の札を自分で選択できるので、必ずしも引き運だけで決まる訳ではありません。）

警備員は手持ちのトークンを消費して、できる限りのアクションが可能です。（全て使い切らなくても構いません）

《賄賂》を消費すれば、旅行者1人を指定して、相手のスーツケースは調べずに『通ってよし！』と通過許可を出します。そこに入ってたチョコは持ち込めたので、ストックからその数のチョコを受け取ります。ただし賄賂なので、指定した数のチョコトークンを警備員に支払わなければなりません。（赤字になったら損ですよね）

《スーツケース》を消費すれば、2つのスーツケースのうち片方だけを公開し中身を確認できます。これはまだ見るだけ。

《手錠》を消費すれば、誰かを逮捕できます。スーツケースに1個より多くのチョコが入っていれば全て没収です。その数のチョコをストックから警備員が受け取ります。（おい！警備員がフトコロに入れんのかいっ！笑）

もしスーツケースにチョコが1個以下なら誤認逮捕なので、警備員は相手に謝罪としてチョコを2個支払わなければなりません。また、チョコが１つなら正式に持ち込めるので、ストックからさらにチョコ1個を受け取ります。

これを親（警備員）が2回転するまでやって、合計チョコの多いほうが勝ち！…というゲームです。

こうして文章で書くと何だか面倒くさそうですが、一度流れが把握できれば、あとは同じ流れの繰り返しなので、2ラウンド目くらいからサクサク行き、テンポは割と良いほうかと。

◾️ニヤニヤと探り合いができる軽い心理戦

正体隠匿や競りのようにヒリヒリした心理戦ではなく、軽いノリの探り合いを繰り返すゲームなので、1回の読みがそれほど重くないのは特筆すべき点です。

外してしまっても「あちゃーそうだったかー」と、深刻にならないので、特に初心者メンバーには好評でした。

プレイのしかたも結構性格が出るようで、イチかバチか大量持ち込みを図る奴や、地道に制限内の持ち込みだけで堅実にチョコを増やす子など、なかなか面白い展開でした。

賄賂を提示せずに、違法持ち込みは無いですよ〜と知らんぷりしていたやつが、実はチョコぎっしりで、「やったー！チョコ5つゲットー！」となったり、

いかにも怪しげに賄賂を提示しておいて、逮捕されたら実はチョコ1個で誤認逮捕となり、「やーい！引っかかったー♪」となったり、

持ち込みを警備員にあっさり看破されて、「きゃー！また！？何でわかったのよー！」となったり、

なかなか白熱する展開。

ゲーム会の人数が多い時などの景気付けや時間調整に大変重宝します。

おススメです！

ウチではしばらく定番ゲームになりそうです。

【余談】

パッケージイラストは『モンスターメーカー』等で有名な九月姫さんで、キュートな警備員の女の子が描かれていますが、ゲーム内容には全く関係ありません。笑。