- 1人~4人
- 90分前後
- 14歳~
- 2022年~
ラクリモーサ山本 右近さんのレビュー
モーツァルトをテーマにしたゲーム、Lacrimosa。一説には史上最も伝記を書かれた人物とも言われるモーツァルト。小学校の図書室で学研の伝記漫画を読んだという方も多いだろう。にも関わらず、重量級ゲームとしてはあまり扱われていなかったテーマであり、非常に興味をそそる作品だ。
■トリビア ウルフギャングステーキの電話の保留音は、社名がモーツァルトのファーストネームと同名なのが理由でモーツァルトの楽曲であるアイネクライネナハトムジークが採用されている。社名の由来はモーツァルトとは関係なく、創業者のウルフギャング・ツウィナー氏の名前から取ったものだ。
プレイヤーはパトロンの1人として、コンスタンツェ夫人にモーツァルトが歩んだ旅の思い出を語ったり、遺された作品の演奏やモーツァルトと親交のあった作曲家たちの力を借りて未完成の遺作であるレクイエムの完成を目指すことにより勝利点を得る。
手番に行えるアクションは5種類だが、アクションを行うにはそのアクションシンボルのカードが手元になければならない。それを個人ボードの上段に挿すことによりそのアクションを行うことができる。
個人別のカードのデッキは9枚固定で、5種類のアクションのうち1つが「新たなカードを購入し既存のものと入れ替える」というものになっている。カードを入れ替えることにより、収入やアクションを強化したりだとか、自分が優先して行いたいアクションを増やす、ゲーム後半で使用頻度が低くなったアクションを減らす、などで効率を高めることができる。
その他4種のアクションはどれもそれぞれが異なるリソースを要求されるアクションだが、どれを主軸としても戦えるような得点ができる配分となっている。
レクイエムの加筆については、ゲーム終了時に得られる得点の他、即時効果や永続能力が得られるためテーマ的にもシステム的にも重要ではあるが、あくまでも得点要素の一つという印象を受けた。
史実においてもレクイエムの加筆に参加したとされるモーツァルトの友人や弟子など4人の作曲家うち2人をゲーム内で使用する。採用する作曲家によってタイルに記載されたボーナスが異なるため、この組み合わせによってもゲーム展開が変わってくる。 ■トリビア モーツァルトの息子であるフランツ・クサーファーはこのゲームに登場する4人の音楽家のうちの1人であるモーツァルトの弟子、フランツ・クサーファー・ジュスマイヤーから名前を取っている。一説によるとこれはリスペクトからではなく、妻であるコンスタンツェとの浮気を強く疑っており、ジュスマイヤーとの子じゃないのかという当てつけの意味で名付けたのではと言われている。ちなみに成長した息子はモーツァルト本人にそっくりだったようだ。
盤面はセットアップ時点でランダム要素が多く、カードの供給も世代毎にランダムなためリプレイ性は保証されている。かと言ってカードのめくり運はそこまで比重が高くなく、ラウンド毎にデッキは全て引き切れるし場に並ぶドラフト用のカードも7枚もの枚数が並ぶため選択肢が多く、めくり運としてはストレスを感じない程度に留まっている。デッキは9枚固定だが、頻繁にカードの入れ替えが起きるため、デッキの中身をきちんと把握しておくことも重要になるだろう。
●総評
基本的には何かに特化するのではなく、リソースを効率的に勝利点に変換していくゲームという印象を受けた。アドリブ力と計画性どちらも重要で、悩ましくも楽しい王道ユーロゲームという感じだ。ルールは分かりやすくシンプルだが、初見で高得点を出すのは難しそうに思える。逆に言えばリプレイ性が高く、上達するほど楽しくなるだろう。コンポーネントも美しくプレイアビリティも高いため、快適にプレイすることができる。普段から家族でボードゲームを遊んでいるなら、見た目とは裏腹に家族でもチャレンジできそうな作品だ。
- 110興味あり
- 156経験あり
- 37お気に入り
- 91持ってる
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