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  • 2人~4人
  • 90分前後
  • 13歳~
  • 2011年~

ダンジョン・ペッツ山本 右近さんのレビュー

448名
10名
0
4ヶ月前

Vlaada Chvátil(フヴァチル)というボードゲーム作家がいる。

ハイセンスなユーモアを交えたフレーバーテキストが特徴的な独特のルールブックや、奇妙なテーマ選びがわたしの中での彼の作品の印象である。

彼はキャリアの初期から、その作品が高い評価を得てきた。

2006年発売のスルージエイジズは歴史がテーマの真面目なゲームで、今にして思えば彼らしくない作品だが、BGGでのレーティングは7.8とかなり評価が高い。最近はクラウドファンディング発の新作に対して遊んだこともないのに10点を乱発する怪しいアカウントも多い中、この時代のゲームが平均評価7.8を記録しランキング100位台前半に君臨しているのは驚異的なことだ。最近はBGAにも登場し、手軽に遊ぶことができる。

翌2007年にはギャラクシートラッカーが発売された。

銀河を股にかける配送屋というユニークなテーマに、ジョークが散りばめられたフレーバーテキストが満載のルールブックという、わたしが持っている彼のイメージにピッタリの作品である。

リアルタイムでタイル配置をするという全然ウケなさそうなゲームシステムにもかかわらず、テーマの素晴らしさやタイル配置のスリリングな難しさ、それにいざ遊んでみると尋常じゃない盛り上がりをみせるゲーム展開は魅力的で、意外なほど人気が高く、名作と言っても過言ではない。現に第二版が発売され、日本語版まで出版された。

その後の2009〜2011年はまさに彼の全盛期と言えるかもしれない。

まず2009年、ダンジョンロードが発売された。勇者パーティを迎え撃つ魔物側、それもダンジョンの製作者として高い評価を得るのが目的のゲームである。これも独創的なテーマに、システムはプロット型のワーカープレイスメントという正に重量級のゲーマーズゲームで、日本語版も発売され、今でも多くの根強いファンを持つ。これもユーモアに溢れたフレーバーテキストがルールブックに散りばめられている。

2011年発売の本作はこのダンジョンロード・ユニヴァースを共有するゲームとなる。

ゲームのテーマは、モンスターを育ててペットとして売り出すというこれまた独創的なアレである。ここまで独創的すぎると、フヴァチルって変な人なのかな、とちょっとだけ心配になってくるほどだ。

そしてこんな変なテーマなのに、ルールブックに書くユーモアのために妙に設定が凝っていたりする。例えば「インプは大した怪我はしていないけれど、病院で同情と注目を集めるのが好きなので、誰かが迎えにくるまで帰ることはありません」だとか、絶対に不要な設定なんだけど、わざわざ書かれていたりする。こういう設定はわたしも大好物であるから、たとえルールブックが多少冗長で読みづらいとしても、思わず歓迎してしまう。

ゲームの方もとても考えられていて、しっかりとした重量級ゲーマーズゲームだ。

システムはプロット型のワーカープレイスメントで、ワーカーを複数のグループに分けて秘密裏にプロットし、プレイヤー全体で数の多いグループからアクションスペースに配置することができる。

リソースと一緒にグループ化したグループでないと入れないアクションスペースや、グループの人数が複数必要なアクションスペースもある。そして何よりアクションスペースの数が少なく狭いので、ハンパなく悩ましくて超苦しい。

育てるペットもクセが強い。育てるには檻が必要で、その檻にも様々な効果がある。そしてモンスターは育つほど高く売れて得点も高くなるが、育つほどにモンスターの維持コストもえらいことになっていく。檻にウンコはたまるし、ウンコが溜まりすぎると病気になるし、変な魔力で突然変異しちゃうし、暴れ出してワーカーが大怪我(と見せかけて軽傷)して入院しちゃったりもする。

アクションスペースが狭すぎてちょっと単調になることがあったり(拡張で解決できる)、モンスターを維持するフェイズがパズリーで時間を食ったりもするが、なんせ面白いし、このゲームでしか得られない栄養素を持っている。

クセの強いゲームばかり持ってくる友人Nに初めて遊ばせてもらった時は、なるほど、こんな凄いゲームを作る作家がいたのかと驚いた。彼はこのゲームをいたく気に入っている。

ちなみにその友人Nはどのゲームを遊んでもトリッキーな動きをする、天才肌のプレイヤーだ。そういう意味でも、このフヴァチルの天才的アイディアが詰まった作品と彼が出会ったのは必然と言えるのかもしれない。

フヴァチルは本作を発売した同年に、Mage Knightという大作をリリースしている。ソロ、協力、対戦と様々なモードを備えたRPGライクなゲームで、今でも根強い人気を持つ重量級ゲームだ。こちらもBGGでは8.1という驚異的な高評価を維持しており、まさに本格派重量級ゲーム作家の巨匠の仲間入りをせんという勢いすら感じてしまう。

しかしこの後、ひとつの出来事がフヴァチルの作家人生を大きく変えてしまうことになる。

2015年、コードネームの大ヒットがそれである。

彼はコードネームという金脈を掘り当ててしまったのだ。

そして幸か不幸か、それ以降の彼はコードネームバージョン違い出しまくりおじさんになってしまった。

コードネームの商業的成功は驚異的だし、フヴァチルの才能あってこそのものだろう。それに、ダンジョンロードは確かに今でも愛される作品だが、商業的に成功したかは私にはわからない。

噂によると、日本語版なんかは作りすぎて売れ残り、未だに市場から新品が消えていないと聞く。ビジネスとしてゲームデザインをする以上は、売れるものにリソースを割くのは当たり前のことで、今後彼が独創的な重量級ゲームを作ってくれるかどうかはわからない。

友人Nと先日本作で遊んだ時、Nは少し寂しそうに、「ダンジョンシリーズの新作、出て欲しいな」と呟いた。わたしも同じ気持ちである。

本作を未プレイの方は何と幸せなことか、ダンジョンペッツをあたかも新作のような気持ちでプレイすることができてしまうのだ!

ここ10年の間にボードゲームを始めたという諸君は特に、この14年前に出た他に類を見ないテーマを持つ革新的な「新作」をプレイするべきではないだろうか。

余談だが、このゲームには「Dark Alleys」という拡張があり、よりゲーム性が豊かになる素晴らしい拡張なので、是非プレイしてみてほしい。

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山本 右近
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