- 1人用
- 25分前後
- 13歳~
- 2011年~
ロビンソン漂流記18toyaさんのレビュー
これはささやかな逆転の物語。
【評価8.5/10】軽量級・ソロ専用
デッキ構築
本作は「緑の人」ことドイツが生んだ鬼才・フリードマン=フリーゼによるソロ専用ゲーム。彼は緑に並々ならぬ拘りがあるようで,髪の毛の色も緑に染めているようです。そんな本作のパッケージはやはり緑!
また同時に,彼は「Friedemann Friese」の名前由来と思われますがFで始まるタイトルにとても拘りがあり,彼の代表作「電力会社」も英語版ではPower Gridですがドイツ語版ではFunkenschlagでやはりF。その他,「5本のきゅうり(独Funf Gurken)」,「フォッペン(Foppen)」,「ファウナ(Fauna)」,「フルーツジュース(Fabled Fruit)」等枚挙にいとまがありません。本作はFじゃないのかな?と思っていたら原題はしっかりFriday(独Freitag)とF始まりでした 笑
<概要>
さて,フリーゼの緑こだわりとFこだわりの文脈の中に本作もしっかり入っていることを確認したところで,ゲームの中身について見ていきましょう。
本作はソロ専用の傑作ゲームとして色々なサイトや動画でも紹介されていますが,あらすじがまた面白い。実はこのゲームの主人公,ロビンソンクルーソーではなくフライデーとなっています。
彼が穏やかな生活をしていた絶海の孤島にある日一人の男が漂着する。その男の名はロビンソンクルーソー。この男が島に来たおかげでフライデーの穏やかな日々は乱されます。フライデーは何とかしてロビンソンに島から出て行って欲しい。幸いにもロビンソン自身も故郷に帰りたがっているようです。しかしロビンソンはどうしようもないダメ人間。仕方なくフライデーは彼を島のさまざまな厄災(襲い来る脅威)に立ち向かわせる事で島から出て行ける人間へと成長させる事にしました。さて,ロビンソンは無事成長を遂げ,海賊船を2隻沈めて故郷へと帰る事ができるでしょうか? というゲーム。
もう,のっけから面白い 笑
<厄災>
まず,ロビンソンが立ち向かう2つの厄災が示されます。ロビンソンはどちらの厄災に挑むかを決め,次に厄災が示す「何枚までカードを引いて良いよ」という数字に基づいて山札からカードを引き,場に出していく。場に出したカードの合計値が厄災の目標値を越えれば成功,越えられなければ失敗となります。厄災には色々な難易度のカードがあり,例えば「1枚で0以上にしろ」「2枚で1以上にしろ」という易しめのものから「5枚で5以上にしろ」という難しいものまで様々です。島の警戒レベルが上がる事で更に目標値は上がっていきます。
厄災の条件を満たせた時,ロビンソンはその厄災に打ち勝った事になり,その厄災カードをデッキに加えることができます。厄災カードは難易度が難しいものほど入手できた時は強力なカードとなるため,難しいかも?と思いながらも難度の高いカードに挑みたくなる仕組みです。
しかし,厄災にはリスクも存在します。カードの合計値が厄災の目標値に届かなかった時は失敗となり,ロビンソンは体力を失ってしまう。最初ロビンソンの体力は20からスタートしますが,厄災への挑戦失敗などによりどんどん体力が減っていき,最終的に体力が0以下になるとゲームに敗北してしまいます。
ただ,厄災失敗は実は悪い事ばかりではなく,体力減少の度合いに応じてプレイしたカードの中から取り除くカードを選び,今後同一ゲームの間登場しなくすることができます。最初のロビンソンデッキはゴミの山のように使えないカードが満載のため,こうした厄災失敗で駄目なカードを減らしていく事も重要な行動となるのです。
つまり
・厄災に成功→強いカードをデッキに加える
・厄災に失敗→体力を失うが弱いカードを取り除くことができる
これらを繰り返しながら,デッキをどんどん整えてデッキの質を上げていくのがこのゲームの本質です。
<衰弱>
ただし,デッキから使えないカードを取り除きすぎてデッキ枚数が少なくなるとリスクもある。ここが一捻り利いてます。
厄災に挑戦してデッキ山のカードをどんどんめくっていくと,いずれデッキ山が尽きます。この時,捨て札を再度シャッフルして再び山札にするのですが,この時「衰弱カード」というものも1枚加えなければなりません。衰弱カードは本当にろくでもないカードばかりで,効果がソフトなものでも数値が「-1」,いやらしいものだと「引ける枚数が残っていても強制終了」とか「最も数値が高いカードを0にする」,「-4」,「-5」などかなり致命的なものもある。こうしたカードはデッキに極力入れたくないのですが,難しい厄災に挑んでどんどん山札からカードをめくったり,カードを減らしすぎてデッキカード枚数が少なくなると,山札が早く尽きてしまうため衰弱カードがデッキに入りやすくなってしまう。
従って,単に「使えないカードはどんどん除外すればいいじゃない」「強いカードを手に入れるためにどんどん難しい厄災に挑んだらいいじゃない」とはならないのがこのゲームの悩ましいジレンマであり,一筋縄では行かない面白さとなっています。
最高値のカード1枚の数値を0にしてしまう「不安」。厄介な衰弱カードの一つ。
<ロビンソンとフライデーの逆転の物語>
以下は,ロビンソンクルーソーに対する私の個人的な見方も含まれており,ロビンソンクルーソーをこよなく愛してやまない方は気分を害されるかもしれません。この点をご理解の上で以下読み進めるかどうかは各自ご判断ください。
さて,ここからはフレーバーの話になるのですが,皆さんはロビンソンクルーソーをいつごろ読んだり知ったりしたでしょうか?私は多分小学校低学年くらいの頃,児童書で読んだのでは無いかとうっすら記憶しているのですが。無人島で知恵を働かせて生き抜いていくロビンソンは逞しいなぁと思ったと同時に,フライデーのくだりが子供心に引っかかりまして。
確かロビンソンがフライデーを助けて命の恩人か何かだったと思うのですが,その際に「金曜日にお前を助けたからお前の名前はフライデー(金曜日)に決まりね!」みたいな流れだったと思うんですよ。それを読んで当時の私は,ドン引きしました。「え…名前勝手に決めちゃうの?意味分からん」と 笑
今考えると,それはロビンソンクルーソーを主人公にした,ロビンソンを引き立てるための脇役として描かれたフライデーだったのだから仕方ないのかもしれません。しかし,一方でロビンソンから見たフライデーは「キリスト教への正しい信仰を持った知識ある文明人」と「キリスト教に「目覚めていない」未開の原住民」という対比の文脈に当て込まれた中で「未開人」に無理矢理落とし込まれた描かれ方だったように思います。それに対して私はどうもいささか居心地の悪さというか,「進んだ人と遅れた人みたいな一本道なものかなぁ?」と言いたい気持ちがずっとあった。
ですから,この作品をプレイした時にゲームとしてのシステムの面白さに惹かれると同時にフレーバー,ゲームの背景,ロビンソンクルーソーの描かれ方が非常に面白いと思った。
ここで描かれるロビンソンクルーソーは正真正銘のダメ人間。初期段階では野獣なんかにほぼ歯が立たないのは当然ながら,島の探検すら注意散漫になったりして満足にできない。しかも色々な厄災に挑ませて鍛えた後も,勝手に不安に苛まれたりバカ丸出しの地をさらけ出したり,挙げ句の果てには痴呆に陥ってしまって「あーもーロビンソン使えねぇなぁ!」と 笑 衰弱カードの言葉のチョイスはなかなかキワキワを突いておりエグいなぁ,と思う面もありますが,一方で「まぁ君(ロビンソン)も勝手に名前付けたり銃を使って脅したり,色々好き勝手やってたよね?」とか考えると,これでようやく少しバランス取れたんじゃない?とも思ったりするのです 笑
英語で「very stupid」、日本語版では「バカ丸出し」。どちらにしても酷い悪口ですが…このロビンソンのイラストを見てると当たってる,と思えてくる不思議 笑
このゲームのタイトルは日本語版では「ロビンソン漂流記」。確かに日本では「フライデー」と言われても頭に浮かんでくるのは雑誌くらいのもので,ロビンソンクルーソーを一番最初に連想する人は居ないでしょう 笑。そういう意味では,日本語で商品化するなら何のゲームかハッキリ分かりやすい「ロビンソン」をタイトルに持ってくるのは当然の事だと思います。
しかし,ロビンソン漂流記がロビンソンクルーソーを主人公とし,彼の視点から見た一方的な物語であった事を考えれば,このゲームはやはり「Friday」なのであり,フライデーから見たらいかにロビンソンがポンコツだったかを描いた,いわば裏返しの物語。本当の名前を奪われ,決して今後も表舞台に彼の名が語られる事はない,そんなフライデーからのささやかな逆襲の一手。そう思えてくるのです。
と、思いながらも何故かアホ面のロビンソンも憎めないのが不思議 笑
そんなこんなを考えながら,私は今宵もフライデーと作者のフリーゼに乾杯し,ロビンソンを厄災「野獣」に挑ませるのでした。ロビンソン使えねえなあ!とか言いながら,ね 笑
(なお念のため,上記解釈はこの作品の見方の一つに過ぎない事を申し添えます^^;)
なお,R3.11月現在市場では品薄になっているようで価格が高騰しています。かなりのヒット作なので少し待てば再販されるとは思いますが,もし待てない方はアプリもあります。有料ではありますがそれほど高額ではないので,お試ししてみるのもアリと思います♪(なおレビュー内の写真もアプリ版スクショを使用しています。もし不都合があるようでしたら掲示板等にご連絡いただけたら削除します)
長文を最後までお読みいただきありがとうございました。皆様の良きボドゲライフに少しでも貢献できれば幸いです^^
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英語で「very stupid」、日本語版では「バカ丸出し」。どちらにしても酷い悪口ですが…このロビンソンのイラストを見てると当たってる,と思えてくる不思議 笑/advertise/banner_20261021.png)



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