- 2人~4人
- 150分~180分
- 13歳~
- 2012年~
ウォー・オブ・ザ・リング(第二版)maroさんのレビュー
若干複雑なルール、長いプレイ時間、ウォーゲーム寄りのシステム、マニア向けのテーマ、言語依存の強さ・・・と、一般人に好まれる要素とは対極にある重量級作品です。
初版が2004年、第2版が2012年に発売され、すでに2版から10年が経とうとしていますがBGGではいまだ10位前後に君臨する人気の高さを誇ります。まあさすがに外国でもそんなにプレイされているとは考えられませんが・・
と思いきや2021年に新エクスパンションが発表され、絶版だった過去の拡張も再販されるようです。
ゲームのシステム自体は、最近の馴染みのあるものの中ではルートに近いといえます。ルートのほうが序盤からユニット同士がぶつかり合うため、密度が濃く感じますが。
ウォーオブザリング(WotR)の特徴的なところを羅列していきます。
・非対称性が強い。ルートのような異種格闘技的性質はないが戦力の性質がかなり異なる。
・物語に登場するキャラクターが設定されており、軍隊ユニットの他に、キャラクターのユニットが存在する。キャラクターは軍隊や他のキャラクターとスタックしたり、単独で行動したりできる。それぞれ個性的な能力が与えられており、原作のファンにはたまらないだろう。
・アクションは複数の専用ダイスを振って出た面の行動ができる仕組み。各種カードも用意されており、イベントや特殊効果など使用できる。イベントは原作にある出来事をモチーフとしており知っていれば楽しい。
・マップは結構広く、開始時のユニット配置は指定されており全体的にスカスカ。勝利条件は相手の拠点を制圧して勝利点を稼ぐこと(自由の民は4ポイント、闇の軍勢は10ポイント)。ウォーゲームらしく、どのあたりの地域、拠点を狙って兵力を分散、集中させるかがキモとなる。
・上記もあり、序盤はユニットの移動が主体ですぐに戦闘はおこらない。というか両軍とも複数の国々で構成されており、最初はそれらの国々を臨戦状態にもっていくという仕事をしないと戦わせられない。特定のアクションを使用したり、キャラクターを特定の国に向かわせることで臨戦状態へ近づけることができる。ここは少し蛇足のような気がしないでもない。
・戦闘はダイスで解決する。互いにユニット数のダイスを振り(5が上限)、5か6がでるとヒットで相手のユニットを倒せる。キャラクター能力や地形効果、戦闘時のカードなどの補正が入る。意外とヒットしないことも多く、局地的な戦闘の解決に複数ラウンドかかることもザラである。長時間ゲームにふさわしくじっくりとしたプレイ感が用意されているといえる。
・自由の民側にはいわゆる指輪の破壊という勝利条件が追加されている。戦力的には圧倒的に不利な自由の民であるが、秘匿要素を使用してキャラクターをモルドールに入れ、指輪破壊の手順を行うことで一発勝利を狙える。闇側にもこれを阻止するためのアクションが用意されている。指輪の破壊の成功は簡単ではないが、お互いにどれだけの労力(アクション)をこれらの行動に割くかという駆け引きの場でもある。
一般的なウォーゲームと比べると、正直戦術的にも、戦略的にもやや中途半端といえます。ユニットの種類や特徴、地形効果、攻撃方法など、真のウォーゲームと比較するとかなりデフォルメされているのは明らかです。しかしそれを補って余りあるテーマ性が魅力でもあるわけです。
幾分冗長と感じるところも、この隙間を楽しめるのであればむしろ短所ではありませんし、この世界に没入してプレイすること自体が目的であると思えるくらいの楽しさがあります。
前に述べたルートはマルチ的要素が強くマップも狭いため全く気が抜けない感じがしますが、WotRは2人用だけあってがっぷりと遊べます。いちおうユニット配置は決まっているため、初期配置の時点での戦略などが存在するようです。地勢的にどのあたりを狙って攻めればよいかなども議論されてますし、いろいろなバリアントも提案されています。
目新しさはないですが、安定したシステムは、流行り廃りをこえた魅力がありこれがBGGなどでも人気の衰えない秘密なのでしょう。バトルオブレジェンドなどはWotRを究極的にシンプル化したものと言えるかもしれません。
プレイするにはいろいろ条件が厳しいゲームではありますが、指輪物語、そしてウォーゲームが好きな方であれば是非遊んでいただきたい作品です。
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