- 1人~4人
- 60分前後
- 12歳~
- 2019年~
ファイナル・アワーBluebearさんのレビュー
タイトルには《アーカム・ホラー》の名前が入っているため、従来の作品の続編か拡張のように見えますが、完全に独立した作品です。
今回は競争ではなく完全に《協力ゲーム》となっています。
プレイヤーはいつものようにクトゥルフ神話の存在を知ってしまった《探索者》の一人となって、あのミスカトニック大学(TRPGではおなじみ。「ダンウィッチの怪」とかの作品で有名ですね。)内で進行している暗黒の儀式の手がかりを探し、邪神の復活を阻止するため、深夜の大学内を駆けずり回ることになります。
■コンポーネント
ボックスは中箱サイズ。(「天下鳴動」「ラクソン」「二つの街の物語」とかと一緒ですね。最初に紹介写真を見たときは本家アーカムホラーと同じ大箱サイズだと思っていたので、店頭で見たときはちょっとだけがっかり感。→基本的に重ゲー好きなんです、すみません。)
中身は、4つ折りのボード(美しく描かれた大学構内図を初めてちゃんと見た!ちょっと感動♪)
他はカード類、トークン類がぎっしり。
キャラクターは全6種類。
「ごみあさりのピート」「ジェニー・バーンズ」など、関連作品でおなじみのメンバーばかり。モンスターも含めてイラストの使いまわしが多すぎてちょっと残念?
肝心の邪神様は御大の「クトゥルフ」、大いなる蟲「シュド=メル」、地下で貪るもの「ウモルドゥス」の3種類。もうちょっとバリエーションが欲しいところですね。(みんな同じことを思うらしくBGGにはファン作成の追加データがいっぱいあります。英語だけど。今後の拡張に期待ですね。)
出現する一般モンスター(モンスターが《一般》ってなんやねん?と思うけど…笑)のトークンもいっぱい。
コンポーネント的に問題は無いんだけど、コストとサイズの問題なのか、カードもトークンも全体的に小さく、特に一般モンスターはせっかくのフルカラーイラストなのだから、もっと大きくないとクトゥルフ神話に不慣れな人はどんなモンスターなのか理解しにくいと思いました。(加えていうなら、このモンスタートークンには名前の記載がなく、単に強さを表す数字と、特性を示すアイコンのみ。プレイヤーはクトゥルフ神話に精通しているのが前提なの?という印象です。)
このモンスタートークンは、出現のたびにランダムに引くので、巾着袋みたいなものがあるといいです。(コンポーネントには含まれていません。)
■ゲーム内容
各プレイヤーは選んだキャラクターごとに10枚のアクションカードを持ちます。これはキャラクターごとに中身が異なり特徴の違いをうまく出しています。(期待通り、ピートには《犬のデューク》があったり、ジェニーは45口径を2丁持ってたりします。)
大学内の各エリア(「博物館」「図書館」など15か所)にはランダムにトークンが伏せて置かれるのですが、重要なのは《儀式のてがかり》を表す《クルートークン》で、全部で10種類のマークが2枚づつあります。セットアップ時にランダムに2枚を《儀式》として抜き出しておくので、この残りのマークが何かを調べていく事で消去法で儀式の内容を推測していくのが大筋です。(実際にどんな儀式なのか?は語られずに、単なる記号集めになってしまっているのがちょっと寂しいです。)
プレイヤーアクションはちょっと変わっていて、サイコロを一切使いません。
アクションカードには「上段」「下段」と2つの内容が書いてあって、上段は主に戦闘など、下段は移動や調査を表します。もうお分かりの通り、これをうまく使いこなしていかねばならないのですが、この内容は何と自由に選べません!(ここがジレンマで面白いところ♪)
各プレイヤーは自分のやりたいカードを伏せて出すのと同時に、あらかじめ配られた《番号カード》を出すのですが、4人プレイならこの数字の《小さい順》に2位までは強制的に「上段」アクションを、3位4位は強制的に「下段」アクションを実行しなければならないのです。(しかも、このアクション内容に関しては相談不可。手札の番号カードはあらかじめ手札として配られるので残りカードの数字も見ながらアクションを選択していかねばならないわけですね。)
加えて面白いのは、この《番号カード》には《死兆シンボル》というアイコンが0~2個描かれていて、そのターンにみんなが出したマークを合計したものを、このときのセットアップで指定した邪神様カードと照らし合わせると『とっても嫌なこと』(もちろんモンスターの出現など)が起こるしかけがしてあるので、これも考慮に入れて番号を選ぶ必要があるのです。
これを外すと「うわああ、やっちまった!」「何でよー!」となるわけですね。(笑)
基本的に「戦闘」と「調査」が両立しないので、調査ばかりしていればモンスターが跋扈するし、そいつらの討伐に向かえば「調査」の時間がなくなる、というジレンマに苦しむことになるわけですね。
「きゃー、あっちにも怪物が出現しちゃった!これマズくない?」
「そっちは俺が《トミーガン》で何とかするから、今のうちにそこの「管理棟」の調査を頼む!」
という感じですね。
これを繰り返して、8ラウンド以内に(夜中なので1ラウンド1時間くらいでしょうかね)儀式の内容を暴いて停止させることで勝利するか、怪物が出すぎたり、時間切れになったり、誰か一人でも死んだらゲームオーバーです。
■感想
最初の印象よりもけっこうプレイ感は軽く、ゆっくりインストしても合計1時間ちょっとでした。(前述したように神話生物などの具体的な説明が無いので、我々がやったときはラブクラフト素人の初心者女性がいたので、できるだけ途中で補足説明を加えるようにしました。これ気を付ける必要があるかもしれません。おかげで?けっこう状況を楽しんでもらえました。)
前述のカードアクションで番狂わせが出やすい後半戦にけっこう盛り上がりました。
残りラウンド数がヤバかったので、手に入っている手がかりから最も可能性の高い組み合わせを考えてチャレンジしましたが、うまく成功できて良かったです。(それほど難易度は高くないですが、確率論なので調査がメタメタでも「偶然成功」することもあるでしょうし、緻密に調査しても「偶然失敗」になることもあり得るので、最後はちょっと運まかせ的な印象です。最後の一個まで手がかりを調査するのはタイムリミット的に不可能ですから。)
本家『アーカム・ホラー』(第2版しか保有していませんが)はさすがに難易度も所要時間もヘビーだなと感じたとき、また『エルダーサイン』はさすがに軽すぎる上にサイコロ運が強すぎてちょっと、という時に出番にするにはいい感じすね。
残念ながら4人までしかできないので、我々のチームではあまり出番はなさそうですが…。(ちなみにルールでしっかりソロプレイに対応しているそうです。まあ我々がソロをやることはないでしょうが、いちおう記載しておきますね。ごめんなさい。)
■ちょっと追記
①最近のクトゥルフ神話関連のボードゲームって、なんでこんなに簡単にモンスターが倒せるんでしょう?このゲームも一般モンスター(『深きもの』『グール』なんて戦力1だし、『忌まわしき狩人』『クトーニアンの落とし子』でも戦力2しかないし)は1人で努力すればわりと倒せてしまう。(さすがに複数いると厳しいですが…)
ザコ扱いされているようでちょっと寂しい思いです。
けっこう盛りだくさんのモンスターが次々出てくるので、ゲーム的にはこれらが強いとバランスが崩壊するので仕方がないのでしょうが、古くからTRPG『クトゥルフの呼び声』に親しんだ者からすると、暗闇で出会った『ビヤーキー』や『ミ=ゴ』一匹にあれほど慌てふためいた思い出は何だったんだろう…という印象がぬぐえません。
(人間の探索者でもHP4とかあるのに!)
②このゲームは協力型なので、モンスターの移動などは一定のルールに従って自動的に動きます。モンスターが増えてくるとけっこう特定の流れが決まってきます。何となく『アーカム・ホラー第1版』を思い出してしまいました(笑)。あれ大通りにモンスターのパレードができるんですよねぇ(笑)。懐かしい。
【追記】
最近再プレイの機会があったのですが、あるプレイヤーから重要な指摘を受けました。
それは…『正気度』の要素がないことです!
クトゥルフ神話を題材としたゲームでこの要素がないのは、たしかに問題ですね。
おかげでプレイヤーキャラクターは怪物に臆することなく走り回って、次々に怪物たちを撃退します。(中には邪教徒やグール?や深きものに向かっていき、1ラウンドで2~3体撃滅し、自分はかすり傷すら負わない、といった展開も見られました。)
ううむ、確かにクトゥルフ神話と言われると違和感をぬぐえません。
別のあるプレイヤーが一言
「これゾンビものやったら良かったのにね。大量のゾンビを蹴散らしていく感じがしっくりくるのに…」
うむ、確かにその通りだと思った次第です。
- 50興味あり
- 40経験あり
- 8お気に入り
- 72持ってる
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