ビルトゥ山本 右近さんのレビュー

Virtùは個人的に2022年新作ベストに挙げたいゲームで、とても気に入っているゲームである。

ゲームの内容はいわゆる地政学マルチ的なテイストの強いゲームで、プレイヤーたちはルネサンス期イタリアを舞台に都市国家のひとつを担当し、地図に見立てたメインボード上で勢力を拡大していく。

メインボードは小さめの作りになっているが、各トラックを備えたサブボードがありカードやタイル類のサプライが多く個人ボードも若干大きめでカードを置くスペースもあり、テーブルのスペースは大きめのサイズが良いだろう。

このゲームは他人との戦闘や直接的な妨害が可能であり、そういったアクションがメインアクションの1/3を占めるためアグレッシブなインタラクションが強めのゲームと言える。

そうでありつつもリソース管理の難易度がかなり高く、ソロパズル的な技術も要求される。モダンなユーロゲームの要素とちょっと古い印象のある直接攻撃による陣取りの要素が融合されていてかなり歯応えのあるプレイ感が味わえる構成だ。

その難しいリソース管理を生み出すのがホイールビルディングと呼ばれるアクション選択システム。個人ボードには5マスで1周するアクションホイールがあり、そこに購入したカードを配置することにより選べるアクションをカスタマイズしたり使えるリソースを増やすことができる。

しかしそもそもアクションは6種類あるのにホイールは5マスしかなく、配置したカードは移動可能なもののその移動ルールなどは厳しく制限されていて、この管理が本当に難しく面白い。このシステムでのやり繰りはこのゲームの面白さを支えていると言っても良いだろう。借金のような免罪符という要素もあり、それも上手く活用していく必要がある。

アクションは6種類あるのにホイールは5マスしかない。各都市国家には特色があるため、どこを特化していくか、戦略に合わせて上手くホイールを組んでいこう。

各都市国家は初期資源もホイールの内容も異なり、特色や長所に明確に差がある。そのためそれを活かした戦略が必要だし、それを考えるのがとても楽しい。ゲームバランスは良好に感じられる。つまり、勝ち筋も様々あり、例えば守りをガチガチに固めて戦闘をあまりしないでも勝つことは可能で、戦闘以外にも文化的影響力やパトロンとして投資をすることによっても勝利点を稼げる。

各宮殿へのエージェントの配置を1つまでに制限する公式バリアントはおすすめしたいところで、そうすると収束性が高くなりプレイ時間が短くなるし、モダンユーロ感が高まり引き締まる。ゲームバランスへの影響も問題ないだろう。

人を選ぶゲームだが、それぞれの都市国家の特色を活かすことを考えるのも楽しく、自由度も高く、殴り合う面をとってみても同じ相手を何度も攻撃するより満遍なく攻撃した方が得点になったり、戦闘を仕掛けて負けてもそれほど失うものが無かったりと、幾分か遊びやすいように工夫がされている。一度気にいると何度でも遊びたくなる中毒性の高いゲームであり、ゲーマーを自称する人には是非遊んでみて欲しい。