- 1人~4人
- 45分~60分
- 14歳~
- 2022年~
アンドーンテッド:ノルマンディー・プラス真夏。さんのレビュー
第二次世界大戦の戦術とカード戦略が融合する傑作ボードゲーム
アンドーンテッド ノルマンディー プラスは、実在の歴史を背景にしながらも戦術的な思考とカードによる戦略構築のスリルを味わえる革新的なボードゲームです。第二次世界大戦のノルマンディー戦線を舞台に、プレイヤーは米軍またはドイツ軍の小隊を指揮し様々な任務を遂行していきます。
本作の最大の魅力は、ウォーゲームにありがちな複雑な処理を排除しつつ深い読み合いと臨場感ある戦闘を再現している点にあります。そして日本語版である「プラス」は、基本セットに加えて拡張の要素もすべて含まれており、これ1つで本作の幅広い遊び方をフルに体験できる構成になっています。
豊富なコンポーネントと親切な構成
アンドーンテッド ノルマンディー プラスには、基本ゲームと拡張の両方のコンポーネントがすべて同梱されています。カード、マーカー、地形タイルなどが美しく作り込まれており、耐久性にも優れています。
特に注目したいのは、ルールブックとシナリオブックがそれぞれ3種類に分かれておりプレイスタイルごとに最適なルールをすぐに確認できる点です。たとえばソロプレイ専用のルールやシナリオが用意されているため1人でも本格的なプレイが楽しめます。これによりプレイヤー人数や経験に応じて段階的にゲームを深めていくことができます。
カードドリブンで進行するテンポの良いゲーム展開
アンドーンテッドのゲームシステムは、デッキ構築とボード上のユニット操作が密接にリンクしているのが特徴です。プレイヤーはターン開始時に4枚のカードをドローし、その中の1枚を使ってイニシアチブ(先攻後攻)を競います。残りの3枚はアクションに使用し、ユニットを移動させたり、敵と交戦させたりします。
カードはすべて特定のユニットに対応しており、カードをプレイすることでそのユニットに命令を与える仕組みになっています。デッキに含まれるカード枚数=部隊の士気や戦力を表しているため、戦闘でカードが取り除かれていくと次第に部隊が機能しなくなるというリアルな表現がなされています。
地形と視界の管理が勝利のカギ
ゲームにおけるマップは複数の地形タイルを組み合わせて構成されます。各地形にはカバー値(遮蔽物の効果)が設定されており、射撃の命中難易度に影響を及ぼします。このシステムにより、無謀な突撃よりも地形を活かした慎重な前進や待ち伏せが重要になります。
また、敵が視認できない未偵察のエリアでは行動に制限がかかる「Fog of War(戦場の霧)」カードがプレイヤーのデッキに追加され、行動効率が低下します。こうした要素が絶妙に組み合わさることで、ただのカードゲームでは終わらない立体的な戦場体験が演出されています。
プラス版だけの魅力的な拡張要素
- AIとのソロ対戦が可能な専用モード
ソロプレイモードでは、AIのように行動するソロカードが登場し1人でも戦術的な駆け引きを堪能できます。AIはシンプルながらも効果的な動きをするように設計されており、シナリオによっては人間の対戦相手以上の緊張感が生まれることもあります。
- 4人用のチーム戦で戦略的連携を体感
通常の2人対戦に加えて2対2のチーム戦も可能です。1人が小隊軍曹としてイニシアチブや命令の配分を管理し、もう1人が現場指揮官として戦術を実行するなど、役割を分担しながら連携することでさらに深いゲーム体験が味わえます。
- 重装甲の戦車ユニットが戦場を一変させる
戦車ユニットの導入により戦場の様相が一変します。耐久性の高い戦車は歩兵とは違った運用が求められ、対戦車戦術や地形の活用がさらに重要になります。これによりプレイの幅が一気に広がり、軍事シミュレーションとしての側面もより強化されています。
初心者にも優しい設計
ルールブックは非常にわかりやすく構成されており、複雑な用語や処理も噛み砕いて解説されています。また初期シナリオは登場ユニットやアクションが制限されており、段階的にゲームの全容を理解できる構成になっているため、ウォーゲーム初心者でも安心して始められます。
プレイ時間も短めで一回のセッションが約45〜60分とコンパクト。仕事終わりや週末のスキマ時間にも楽しめるのは非常にありがたいポイントです。
ゲームの魅力をまとめると
- デッキ構築とユニット運用の融合が革新的
- リアルな地形戦とカード戦略の絶妙なバランス
- 1人でも4人でも本格的な戦闘が楽しめる柔軟性
- ミニマルながら高品質なコンポーネントデザイン
- シナリオ型構成で長く楽しめるキャンペーン性
気になる点や注意点
- 戦争テーマのため人によっては心理的に重く感じる可能性があります
- 米軍とドイツ軍の違いがやや控えめで、国家ごとの特徴を求める人には物足りないかもしれません
- デッキとサプライの管理が初見だと少し混乱しやすく慣れるまでは戸惑うことがあります
総合評価とおすすめ度
アンドーンテッド ノルマンディー プラスは、ボードゲーム初心者から戦術ゲーマーまで幅広い層に対応できる非常に完成度の高い作品です。1つのパッケージに複数のプレイスタイルを取り入れたことでプレイ頻度や人数を問わず楽しめる点が非常に優れています。
価格以上の充実した内容と、何度でも遊びたくなる再プレイ性。ボードゲームにおける「戦術」の面白さを凝縮したような本作は、第二次世界大戦に興味のある方、デッキ構築が好きな方、戦術重視のボードゲームを探している方に間違いなくおすすめできる一作です。
- 98興味あり
- 79経験あり
- 30お気に入り
- 118持ってる
このコメントは管理人により非表示にされました
真夏。さんの投稿
- レビュースキタイの侵略者「スキタイの侵略者」は、人気作「北海の侵略者(Raiders of t...約1時間前の投稿
- レビュー西フランク王国の子爵中世の西フランク王国を舞台に子爵として王国の発展に尽力する本作。デッキ...1日前の投稿
- レビュー西フランク王国の聖騎士「西フランク王国の聖騎士」は、シェム・フィリップス氏によるデザインの西...2日前の投稿
- レビュー西フランク王国の建築家「西フランク王国の建築家」は、中世の西フランク王国を舞台としたワーカー...2日前の投稿
- レビュー白鷺城 / ホワイト・キャッスル「白鷺城」は日本の姫路城をテーマにした、ダイスを活用したワーカープレイ...4日前の投稿
- レビューエルダーサインエルダーサインは、クトゥルフ神話を題材とした1〜8人用の協力型ダイスゲ...5日前の投稿
- レビューロシアンレールロード「ロシアンレールロード」は、19世紀後半のロシアを舞台に、鉄道会社の経...6日前の投稿
- レビューファイブ・トライブス:ナカラの魔神使いアラビアンナイトの世界を舞台に、伝説の都市国家「ナカラ」の次期スルタン...7日前の投稿
- レビューウイングスパン「ウイングスパン」(原題:Wingspan)は、2019年にStone...8日前の投稿
- レビューオルレアン「オルレアン」は、中世フランスの街「オルレアン」を舞台にしたボードゲー...8日前の投稿
- レビュー郵便馬車郵便馬車(原題:Thurn and Taxis)は、17世紀のドイツを...8日前の投稿
- レビューコンコルディアコンコルディア(Concordia)は、古代ローマ帝国時代の地中海沿岸...9日前の投稿
会員の新しい投稿
- レビューグレート・ウエスタン・トレイル星7ボドゲ400種を所有し、軽〜中量級を中心にプレイするゲーマーの感想...44分前by おとん
- レビュースキタイの侵略者「スキタイの侵略者」は、人気作「北海の侵略者(Raiders of t...約1時間前by 真夏。
- 戦略やコツザ・スラッシャー・アイテム山札から複数枚カードを引いた際に、その中から脱出アイテムを優...約2時間前by jam jama
- レビュートリックステークス騎手&ギャンブラーとして、騎乗する馬と馬券を買った馬を勝たせることを目...約3時間前by 七盤のハムさん
- ルール/インストザ・スラッシャー【ゲームの目的】「ザ・スラッシャー」は、80年代ホラー映画の世界を再現...約6時間前by jam jama
- レビューバック・トゥ・バック4/10「テレストレーションを背中でやったら面白いんじゃね?」と思って...約10時間前by 白州
- レビュービッグボス:2023年版5/10クラマーのアクワイアと呼ばれたゲームのリメイク。このゲームが出...約10時間前by 白州
- レビュースシゴー! 10周年記念版7/10箱がめちゃくちゃ目立つスシゴーの10周年記念版。まだ10年くら...約10時間前by 白州
- レビューティラノEX6/10独特なゲームを作るデザイナーによる弱肉強食ゲーム。イラストもシ...約11時間前by 白州
- レビューホーダーズ4/105枚のカードから2枚選んで伏せて、1人ずつカードを公開しながら...約11時間前by 白州
- レビューエティン7/10カタン方式のドラフトデッキ構築+ペア戦のTCG風バトルゲーム。...約11時間前by 白州
- レビュースワイダー5/10ゴールデンボックスボードゲームアワード2023のアート賞ノミネ...約11時間前by 白州