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  • 2人~4人
  • 45分~60分
  • 10歳~
  • 2021年~

フルティコラ山本 右近さんのレビュー

162名
5名
0
4ヶ月前

その日届いたゲームは、ジャムを作って売るという、午後の陽だまりのように穏やかでどこにでもありそうなのに、他を探しても見つからないテーマを持っていた。

市場の価格は生き物みたいにふらふらと動く。さっきまで価値のあった果物が、次の手番にはもう二束三文になっている。いうならば、ちょっとだけ株取引を思わせるところもある。果物と株式。どこか遠くの農園と、ビル街の摩天楼が、同じテーブルの上で静かに共存しているようだ。

届いたゲームの箱を開けたとき、正直なところ、ぼくは肩透かしを食らった。ぼくが期待していたものとは違っていたからだ。

60年代のアメリカを思わせるアートワークは素晴らしかった。だが、果物のコマはどこか頼りなく、組み立て式のアクションスペースには、デザイナーがうたた寝をしながらいくつかの夢を中途半端に組み立てたようなものもある。印刷された情報は微妙にちぐはぐで、それはぼくを不安にさせた。BGGで調べてもみたが、スレッドは曖昧な情報と無言の溜息で満たされていた。

パンチボードの裁断は、ぼくがかつて住んでいたアパートの床みたいにガタガタで、タイルを抜くときには指先に神経を集中させなければならなかった。ほんの少し気を抜くだけで、裏面の紙が裂けてしまいそうになる。そうして世界のどこかで幾人ものプレイヤーたちが、さっきまで宝物のように思えていたその「裂けてしまった厚紙」を撫でながら、小さくため息をついたことを、ぼくは勝手に想像した。

ゲームの根幹はワーカープレイスメントだ。だけど、他とはちょっとだけ、でも大きく変わっている。

ラウンドが始まる前に、各プレイヤーはカードを1枚ずつ一斉に出す。そのカードが、そのラウンドの運命を決める。順番、使えるワーカーの数、特別な能力、あるいは小さなペナルティ。多くを望めば、代償が伴う。慎ましさには、早さや恩恵がついてくる。そういう構造は、人生というものの断面図を表しているのかもしれない。

しかもそのカードは、ゲームの開始時にすべてドラフトで選ばなければならない。まるで旅人が、風向きを知る前に目的地を選ばさせられているようなものだ。その選択が、のちのちまで響いてくる。

ゲーム中には特殊な能力を持ったタイルが得られるし、ワーカーにも性格みたいなものがあって、できることとできないことが段々とはっきりしてくる。そういうところがぼくは好きだった。だけど、使えるワーカーが自分だけ極端に少ないときには、他人の手番をただ黙って見守る時間が生まれてしまう。それは、田舎の駅のホームでちょうど逃してしまった次の電車を待つときの、あのぽっかりと空いた時間に似ていた。

総じて、このゲームは魅力的だ。でもコンポーネントは、その魅力をほんの少し曇らせてしまっている。たとえばそれはクニツィアの『オロンゴ』みたいなものだ。ルールは精巧で、システムは詩的ですらあるのに、パッケージに詰められた物理的な部分が、どこかでつまずいてしまっている。

それでも、ぼくはこのゲームが嫌いになれない。

ジャムという、甘くて、手間がかかって、でもどこかあたたかいテーマ。懐かしさのあるアートワークと、ルールに仕込まれた皮肉のような悩ましさ。そして「他とちょっと違っている」ということの美しさ。

完璧ではないし、少し憎たらしくもある。だけど、それもこのゲームの魅力のひとつなのだろう。

とりあえず、ぼくは棚の上にゲームを戻した。「また、いつか遊ぼう」そう言って、コーヒーを淹れに行った。そしてジャムの代わりに、ぼくはパンにバターを塗った。

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ハナチャ
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じむや
荏原町将棋センター
びーている / btail
山本 右近
山本 右近
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