- 1人~4人
- 120分~180分
- 14歳~
- 2017年~
陸海空の英雄達chacoさんのルール/インスト
『Heroes of Land, Air & Sea』において、各プレイヤーが担当することになる種族(ヒューマン、オーク、ドワーフ、エルフと、『Order of Chaos』のライオンキン、スケルトン、リザードマン、ゴブリンに、『Pestilence』のバードフォーク、半魚人の合計10種類)毎の移動可能なユニットは、20体のミニチュアと船舶2隻(艦船と飛行船)だけであり、他に拠点として三層からなる首城と、3個の塔【例外:ゴブリンの塔だけは移動可能】しかありません。20個あるミニチュアの内訳は、農奴12駒、戦士5駒、3体の英雄となっており、ゲーム開始時点で農奴2駒と戦士1駒が、まだ一層目しか建設されていない首城と共に首都エリアへ配置されています。このゲームではプレイ時間を2時間以内に収めるための工夫として、4種類のゲーム終了条件が存在しています。その一つが、1プレイヤーでも英雄以外の17駒がマップ上に存在することなのです。プレイヤーが1ラウンドに実行できる召集アクション1回だけですが、農奴は2駒同時に召集できるので、9ラウンドもあればほぼ間違いなく条件を満たして、続く10ラウンド目でゲームは終了します。しかも、17体のユニットを維持するために必要な食糧は、プレイヤー毎に与えられている10エリアで構成された大陸だけで完全に事足りる様になっている上に、各ラウンドで少なくとも1枚は補充される呪文カードや、ユニットを行軍させることで強制的に解決を促される冒険トークンによっても、農奴や戦士を増やせるので、通常は10ラウンドも必要ありません。プレイヤーが必ず実行できるアクションは1ラウンドに2つだけなのですが、首都に農奴が居れば、その回数を増やすことが可能です。アクションは大きく2つのグループに分けられます。ユニットを入手できる「召集」、都市機能などを拡張できる「建築」、呪文カードの入手や儀式呪文の準備を行う「研究」、食糧/鉱石/魔力に分類されている資源を追加入手する「徴税」の4つに関しては、他のプレイヤーが実行する際に、首都の農奴1駒を投入することで、相乗りする事ができます。一方、5駒以下のユニットによる軍を編成して陸上移動や海峡の横断を実行できる「行軍:このアクションだけは農奴を同じラウンド中に2回選択可能」、艦船に乗船して海域を移動する「航行」、飛行船に搭乗して陸地や海域を移動できる「飛行」、準備しておいた儀式呪文を発動させる「詠唱」と言ったアクションでは、首都の農奴1駒を余分に投入すれば、1アクション中に2回連続で実行できます。つまり、このゲームで最も重要なのは1駒が1戦力にしかならない農奴を如何に早く召集するのかということになります。農奴を召集するには食糧が必要です。食糧を効率良く入手するには、大陸毎に2ヶ所ずつある平原エリアへ農奴を移動させるのが一番なのですが、これはアクション数を増やすために農奴を首都に残しておくことと矛盾するため、序盤でのやりくりが勝敗に大きく直結することとなるでしょう。と言うのも、ゲーム開始時点で全てのプレイヤーが3種類の資源を2個ずつしか保有していません。一方で、農奴を2駒召集するには食糧が3個必要なので、足りない分に関して、どのように第1ラウンドで対応するかで展開が変わってきます。取りうる作戦としては、1)徴税アクションをできれば相乗りで実行して食糧を確保する。2)召集アクションでは食糧1個だけを消費することで農奴1駒だけを入手する。3)召集アクションでは食糧2個の消費で戦士1駒を入手する。4)アクションフェイズ終了時の食糧確保に全力を注ぐ。5)行軍と建築を実行して、大陸中央の砂漠に塔を建築し、周囲の隣接エリアに配置されている合計7個分となる冒険トークンの内容を確認する。6)行軍アクションに農奴を組み合わせて、2ヶ所ある湿地エリアで合計4個分の冒険トークンに挑み、食糧が確保できることに期待する(確率上の期待値は1個以上)。と言った6つぐらいの作戦を思いつきますが、6番目の選択をしたプレイヤーが幸運に恵まれた場合、他のプレイヤーに対してかなり有利な状況となるでしょう。大陸毎に11個ずつ裏面で初期配置される冒険トークンですが、その全てが公開されることも終了条件の一つとなっています。解決ではなく公開と言うところがミソで、VPでリードされているプレイヤーは、自分の大陸内に未確認の冒険トークンを残しておくため、少なくとも1エリアは未開拓のままとなってしまい、より不利な状況に追い込まれます。1人のプレイヤーが3つめの塔を建設することも終了条件の一つですが、どの種族も1つの大陸毎に1つの塔しか建設できません。このルールは同盟関係にある2つの種族間で互いに相手の大陸に1個ずつの塔を建設することを促します。前述した通り、塔に隣接するエリアの冒険トークンは公開されるので、互いに大陸の1エリアを同盟相手に譲ることで、危険な冒険トークンに挑む必要性が減少するのです。このような同盟が成立するのは、ゲーム特有の戦闘ルールも大きく関わってきます。
戦闘解決の手順は、まず移動系のアクションを実行したプレイヤーが攻撃側として1VPを獲得します。次に両陣営が手札から戦闘呪文を1枚ずつプレイして、消費しなければならない魔力量をVPとして受け取ります(相手の戦闘呪文に対して対抗呪文もプレイできれば、更にVPを獲得できます)。その後、7種類ある戦術カード【2024年の再販時に出版された拡張の『Battle Booster Box』も追加すると、更に種類が増えます】の中から1枚ずつを同時に公開し、必要な資源を消費した上で戦闘力の修正値を導き出し、戦術の内容に応じたVPを互いに獲得します(「撤退」や「徴兵」で増援が来なかった場合にはVPを失う)。敗北した側は参加兵力の半分(端数切り捨て)を失って、残存ユニットを自分の首都か塔のあるエリアまで撤退させます。ここで注視すべきは、1戦力しかない農奴1駒だけの軍は、「火球」のように戦術カードを選択する前に駒を除去できる戦闘呪文が使用されない限り、戦闘で敗北しても損害が発生しないことなのです。例えば、「行軍」を実行するプレイヤーが農奴1駒を首都に配置転換したくなったとします。その旨を相手側に伝えて、互いにに損害が出ないような戦闘呪文【例えば、任意の組み合わせで資源6個を入手できる祈り(=2VP)】と、確実にVPを取れるような戦術カードをプレイすれば、手番プレイヤーは距離に関係なく農奴の配置転換を実行でき、相手プレイヤーは自分のアクションを消費せずに、各々が資源をVP化できることになります。このゲームでは戦闘でも実行しない限り、1回のアクションで5VP以上獲得できるのは建築による首城の増築か、塔の建設しかありません。そして、順調に領土経営をしていれば、5ラウンド目あたりから最大保有値の10個に到達してしまう3種類の資源を効率良くVPに変換できる戦闘は重要な要素になっているのです(このような軍事演習のごとき戦闘も、中性の王国による年中行事のような戦争を再現していると考えれば面白いシステムと言えるでしょう)。因みに4つ目の終了条件は他勢力の首都を占領する事ですが、攻撃側には1回の行軍で5駒と言う制限があるので、アクション数を増やすために大量の農奴がスタックしている首都を攻略するのは困難です。最後に、このゲームの船舶ですが、ヒューマンにおける帆船と飛行船のような建造物とは限りません。例えば、オークにとっての艦船とは巨大なワニであり、隣接する内陸エリアへ移動して、そこで陸上戦闘に参加できます。あるいは、ドワーフにとっての飛行船となるグリフォンは、英雄が単独で騎乗している戦闘力が上昇します。同様に、リザードマンにとっての飛行船となる巨大カブトムシは、破壊されると食糧4個に変換されるのです。中でも移動可能な塔を建設できるゴブリンであれば、「潜航」と言う特殊なアクションが実行できる潜水艦や、敵のいるエリアを素通りできるヘリコプターを有しています。種族毎に3体ずつの英雄達も個性的です。例えばヒューマンの無法者であれば、戦闘で敗北した敵の船舶を拿捕できるため、拡張の『Booster Pack』に入っている龍鱗製のヨット(他の船舶が2駒を上限とするのに対して3駒まで乗船でき、なおかつ「航行」と「飛行の」両方を実行可能)も召集していれば、合計で7駒+3隻による首都攻撃(=首都は必ず海岸エリアに存在する)が成立するので、他勢力の首都を占領できるかもしれません。プレイ時間の割にプレイヴァリエーションが豊富なわけですが、ワーカープレイスメントのシステムを利用した、他人のアクションに対する相乗りが認められているおかげで、多人数ゲームにありがちな待ち時間の退屈さも軽減されているのが嬉しいところです。
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