- 2人~4人
- 60分~90分
- 10歳~
- 2022年~
カッラーラの宮殿:第2版真夏。さんのレビュー
「カッラーラの宮殿:第2版」(原題:The Palaces of Carrara (Second Edition))は、名匠デザイナーであるヴォルフガング・クラマーとミヒャエル・キースリングによる傑作ボードゲームの改訂版です。イタリアの都市カッラーラを舞台に、大理石を産出する有名な地域から可能な限り安く資材を購入し美しい建物を建設していくゲームです。
ゲームの魅力と特徴
- ユニークな資材獲得メカニズム
本作の最大の特徴は、回転する「円状の資材市場」です。プレイヤーは手番で回転ホイールを操作して資材(建材)を購入します。ホイールの位置によって資材の価格が変動し、時には無料で入手できることもあります。このダイナミックな資材市場が戦略の要となりいつどの資材を取得するかの判断が重要になります。各プレイヤーはこの制限された資源を効率よく管理し、建物を建設するための最適な組み合わせを模索します。
- 建物の建設と戦略性
獲得した資材(建材)を使って各都市に建物を建設していきます。建物の配置場所は使用する資材の色によって制限されるため、どの資材を獲得し、どの建物をどの都市に建てるかという戦略的判断が求められます。また、資材交換のルール(2つの同色資材で1つ上位の色と交換可能)も戦略に深みを与えています。
- 多様な評価システムと得点ルート
ゲームの醍醐味は、「評価(スコアリング)」にあります。プレイヤーは建物を建設した後様々な方法で評価を受けることができます。
- メインボードでの評価: 特定の都市や建物タイプ別に評価
- 個人ボードでの評価: 自分の建設した建物の価値に基づく評価
- 景観(都市または田園)による評価: 建物の配置パターンによるボーナス
第2版では評価のタイミングがインタラクティブになり、他プレイヤーの動きを見ながら最適なタイミングで評価を受けるかどうかの判断が求められます。
- アドバンスルールの充実
基本ルールと上級ルール(アドバンスルール)の両方が用意されており、プレイヤーの習熟度に合わせて楽しむことができます。特に第2版では、新たに「装飾(デコレーション)」や「像(スタチュー)」の要素が追加され、より多様な戦略と得点ルートが提供されています。
第2版の特徴と改良点
初版と比較して第2版では多くの改良点が加えられています:
- 評価システムの変更: 第2版では評価を行うと「+5金」や「+3点」などの追加ボーナスを獲得でき、他プレイヤーも次の手番で同じ評価アクションを選ぶことで同様のボーナスを受けられるようになりました。
- 物品駒の扱いの変更: 初版では決算時に収入として得られ得点源だった物品駒が、第2版では建物に配置することで決算ボーナスが付くようになりました。
- ゲーム終了条件の変更: 初版では3つの終了条件を全て達成するとゲーム終了でしたが、第2版では「誰かが決算駒を使い切る」かつ「建物タイルの山が尽きる」とゲーム終了になり、ゲームの長さがより安定するようになりました。
- 新要素の追加: 「彫像」や「装飾」といった新しい要素が加わり、マジョリティ争いや再決算のチャンスなど戦略の幅が広がっています。
- 視覚的改良: コンポーネントの質が向上し、プレイボードのレイアウトも分かりやすくなっています。
良いところ
1. 戦略の深さと多様性: シンプルなルールながら奥深い戦略性があり、毎回のプレイで異なる戦略を試すことができます。
2. ユニークなメカニズム: 回転する資材市場というユニークなメカニズムが、資源管理とタイミングの妙を生み出しています。
3. プレイヤー間のインタラクション: 特に評価フェーズでは他プレイヤーの動きを見ながら最適なタイミングを見計らう必要があり、対戦相手との駆け引きが楽しめます。
4. 上級ルールの充実: 基本ルールと上級ルールが用意されており、初心者から上級者まで長く楽しめます。
5. 美しいコンポーネント: 色彩豊かな資材や建物、ボードなど、見た目も美しいコンポーネントがゲーム体験を高めています。
気になる点
1. 初心者には複雑: 「ガードレールのない大人のゲーム」という表現があるように、初心者には戦略の把握が難しい面があります。基本ルールを十分に理解していないとゲームの面白さを引き出せない可能性があります。
2. 資材取得の制限: ゲーム後半では1手番で獲得できる資材が限られることがあり、やや物足りなさを感じることがあります。
3. 評価タイミングの早取り性: 評価のタイミングが早取り要素を含んでおり、のんびりプレイしているとあっという間にゲームが終わってしまう可能性があります。
4. 運の要素: 資材市場の回転による資材の出現に運の要素があり、時に理想的な戦略が実行できないことがあります。
5. 第1版との違い: 第1版からプレイしていたファンにとっては、ルール変更に適応する必要があります。特に、急にゲームが終わる荒々しさが減りより整った展開になったことで好みが分かれる可能性があります。
プレイした感想
「カッラーラの宮殿:第2版」は、手番ごとの選択肢が多く、毎回悩ましい決断を迫られるゲームです。資材を安く効率的に獲得し、建物を建設し、最適なタイミングで評価を受けるという基本的なサイクルがとても面白く、プレイするたびに新しい戦略が見えてきます。
特に魅力的なのは評価のタイミングです。早めに評価を受けて小さな得点を重ねるか、じっくり建物を建設して大きな評価を狙うか、常に他プレイヤーの動きを見ながら判断する必要があります。また、他のプレイヤーが評価アクションを行った後に自分も同じ評価を行うべきか、それとも別のアクションを選ぶかという駆け引きも興味深いものです。
第2版では上級ルールが充実し、装飾や像の要素が加わったことで戦略の幅が一層広がりました。特に像による決算の追加チャンスはタイミングを見計らって使うことで大きな得点差を生み出せます。
一方で、初心者には戦略の把握が難しく、最初の数回は「何をすべきか分からない」という状況に陥ることもあります。しかし、回を重ねるごとに戦略が見えてくるため、グループ内で何度かプレイすることをお勧めします。
総評
「カッラーラの宮殿:第2版」は、クラマー&キースリングの傑作に様々な改良を加え、より洗練されたゲーム体験を提供しています。シンプルでありながら深い戦略性、ユニークな資材市場メカニズム、多様な評価システムなど、ユーロゲームファンにとって魅力的な要素が詰まっています。
初心者には少し敷居が高いものの、基本ルールをマスターした後は長く楽しめる奥深さがあります。特に、資源管理とタイミングの妙を楽しみたいプレイヤーにとっては必携の一作と言えるでしょう。
第2版では様々な改良が施され、より遊びやすくなった一方で、初版の荒々しさや予測不能性が若干失われた感もあります。両方の版を持つことができれば気分に応じて選べるのが理想的ですが、第2版だけでも十分に楽しめる完成度の高いゲームです。
戦略性とインタラクションのバランスが絶妙な「カッラーラの宮殿:第2版」は、ボードゲーム愛好者の棚に是非加えたい一作です。
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