- 1人~4人
- 30分~120分
- 13歳~
- 2018年~
オーズトラリア真夏。さんのレビュー
オーズトラリアは、並行世界の1930年代を舞台にした冒険・探索ゲームです。舞台となるのは「オーズトラリア」と呼ばれる大陸。プレイヤーはこの大陸の開拓者として、鉄道を敷設し、資源を採掘し、農場や牧場を開発して勝利点を競います。
しかし、この世界では旧支配者と呼ばれるクトゥルフ神話的存在が潜んでおり、ゲームの途中からこれらの脅威が徐々に目覚め始めます。プレイヤーたちは開拓による勝利点を競いながらも、この共通の敵に対処する必要があるという、競争と協力の要素が絶妙に融合したゲームとなっています。
ゲームの特徴と魅力
1. 独創的なテーマ性
「オーズトラリア」の最大の魅力は、鉄道建設や開拓というユーロゲーム的要素と、クトゥルフ神話的な戦闘要素を見事に融合させた独創的な世界観です。並行世界のオーストラリアという舞台設定に、マーティン・ウォレス氏の「緑色の習作」(A Study in Emerald)からインスパイアされたクトゥルフ神話要素が組み合わさり、他のゲームにはない独特の雰囲気を生み出しています。
2. 二段階の展開
ゲームの進行は大きく二つのフェーズに分かれています。前半は典型的な資源管理と鉄道敷設のゲームとして進行し、後半は旧支配者との戦闘に比重が移ります。この二段階の展開がプレイヤーに様々な戦略の選択肢を提供すると同時に、ゲームに緊張感とドラマを生み出します。
3. 革新的な時間管理システム
プレイヤーの行動順は「時間トラック」という概念で管理されます。各アクションには一定の「時間」がコストとして設定されており、トラック上で最も遅れているプレイヤーが次のアクションを実行します。このシステムにより、効率的なアクション選択と時間管理が重要な戦略要素となります。
4. スリリングな戦闘システム
旧支配者との戦闘は、カードをめくることで攻防の結果が決まる仕組みになっています。この適度な運要素があることで結果の予測不可能性や達成感が生まれ、各戦闘がスリリングな体験になります。また、準備をしっかり行えば勝機があるという絶妙なバランスがプレイヤーの挑戦意欲をかき立てます。
5. 高いリプレイ性
ボードの両面使用(東部と西部のマップ)、ランダムな初期配置、様々な難易度設定、協力モードの存在など多様なプレイ方法が用意されています。これにより何度プレイしても新鮮な体験が得られる高いリプレイ性を誇ります。
6. 美しいコンポーネント
開拓ゲームらしい土臭く渋いデザインと高品質なコンポーネントがゲームの没入感を高めます。木製の鉄道タイル、リアルな金鉱石や鉄鋼、木炭のコマ、そしてクトゥルフ要素を示す紫色のコマなど、実際に手に取って操作する楽しさもあります。
良い点
1. 戦略性と運の絶妙なバランス:計画的な資源管理や鉄道敷設の戦略性と、カードめくりによる戦闘の運要素が絶妙に組み合わさっています。
2. 常に緊張感のある展開:時間トラックの進行によるプレッシャーと突如として活性化する旧支配者の脅威が、常に緊張感のあるゲーム環境を作り出します。
3. 多様な戦略パス:農場建設で勝利点を稼ぐか、軍事力で旧支配者を倒すか、あるいはその両方のバランスを取るかなど複数の勝利への道筋があります。
4. ソロプレイにも対応:1人プレイ用のルールも充実しており、ソロプレイヤーでも十分に楽しめます。
5. 美麗なアートワークと質の高いコンポーネント:渋く土臭いデザインと高品質な部品が、ゲームの雰囲気を高めています。
気になる点
1. プレイ人数によるバランスの偏り:特に2人プレイ時には、旧支配者の数が変わらないため、敵を倒す負担が大きくなり開拓よりも戦闘に偏りがちになります。
2. ダウンタイムの発生:特に多人数でプレイする場合、戦闘の判定に時間がかかるため他プレイヤーの待ち時間が長くなる可能性があります。
3. 少々煩雑なセットアップ:ボード設定に時間がかかり、特に初心者がプレイする場合は準備に手間取ることがあります。
4. ルールの複雑さ:基本ルールは比較的分かりやすいものの、旧支配者の活動ルールなど細かい例外規定も多く、初回プレイでの理解が難しい場合があります。
プレイしてみた感想
オーズトラリアはただの開拓ゲームではない独特の魅力を持ったボードゲームです。前半の鉄道敷設や資源収集のフェーズでは効率化を考えつつ、後半では突如として現れる旧支配者との戦いに備えるという展開にプレイヤーは常に次の一手を考える必要があります。
初回プレイ時には敵の強さに驚かされ、開拓に力を入れすぎると旧支配者に圧倒されてしまう可能性に気づきました。しかし、戦闘システムの適度な運要素が、最後まで逆転の可能性を残す形になっているのも魅力の一つです。
特にプレイ人数によって体験が大きく変わり、2人プレイでは戦闘主体になりがちですが3~4人プレイではよりバランスの取れた展開になります。また、ソロプレイモードも充実しており、1人でも十分に楽しめる作品です。
まとめ
オーズトラリアは、クトゥルフ神話的な世界観と開拓ゲームの要素を融合させた独創的なボードゲームです。時間管理システムとカードめくりによる戦闘機構が特徴的で、戦略と運のバランスが絶妙に調整されています。
初心者には少々複雑に感じられるかもしれませんが、ルールを理解すれば非常に奥深いゲーム体験が得られます。特に鉄道敷設ゲームやクトゥルフ神話に興味がある方、あるいは開拓と戦闘のバランスが取れた戦略ゲームを探している方にはぜひ試していただきたい一作です。
プレイ人数によって異なる体験が得られるため様々な人数で遊んでみる価値があります。特に3人プレイが最もバランスが取れていると感じられるでしょう。
マーティン・ウォレス氏による洗練されたゲームデザインと、アークライトによる質の高い日本語版で、日本のボードゲームファンにもおすすめできる作品です。
- 87興味あり
- 137経験あり
- 29お気に入り
- 147持ってる
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