- 2人~4人
- 40分~60分
- 10歳~
- 2024年~
ザハブ18toyaさんのレビュー
【レビュー】ランダムな盤面を何度も周回しながら誰よりも勝利点を稼げ!
【評価8/10】
ロンデル✖️ハンドマネジメント✖️拡大再生産
本作は元々同人作品だった「銅と銀の交易者」をアソビションさんが調整し、製品版としてリリースした作品である。元の作品は2019年のゲームマーケットで大変話題となったようだが、さもありなん。現時点でもユーロゲームの日本語版ではないかと感じるような、同人離れした軽め中量級の良作だった。
タイトル名の「ZAHAB(ザハブ)」もアラビア語で「黄金」の意味だそうだ。アソビションさんのディベロップが渋くて痺れる。
以下では本作の魅力についてレビューしていこう。
基本の流れ
本作のフレーバーは、中東の雰囲気が漂う「ある砂漠で発見した幻の黄金都市」を舞台に、金や宝石を使って有力者に影響を与え、精霊の力も借りながら当代一の大商人を目指す、というもの。
開始時に、2つのマスが描かれた7枚のロンデルタイルと、スタートマスが描かれたロンデルタイル1枚の計8枚を裏返してシャッフルし、ランダムにメインボードの周りに設置する。こうして1周15マスがランダムに円環に配置され、毎回アクションの並びが変わるのでリプレイ性が担保されるという寸法だ。
黒い面はロンデルタイルの裏側。毎回アクションの並びが変わる。
各プレイヤーの最初の手番では自分のラクダを他のプレイヤーとは重複しないマスに置き、そのマスの効果を得るか、または1金を得る。
全員がロンデルマスにラクダを置いたら、次の手番から各プレイヤーは時計回り順にラクダを1〜3歩進め、そのマスの効果を得るか、または1金を得る。
やがて、誰かが終了フラグを切ったら、全員が同じ手番数になるよう手番を行いゲームは終了。最後の得点計算を行い、最も勝利点が高かった者がゲームに勝利するという、シンプルな流れである。
勝利点を稼ぐには?
本作では、メインボードにある赤・青・黄の3色のゲージが勝利点の大半を占めており、得点計算時に「3色のゲージで自分のコマが置いてある数字」がそのまま勝利点となる。
勝つためには自分のコマを出来るだけ高い数字に上げていきたい。これには2つの方法がある。
1つは、ロンデルマスでコマを右に動かす場所が2箇所ある。ラクダ駒をこれらのマスに置いて効果を発動し、勝利点を上げていく方法。
もう1つは「交易カード」を使ってコマを動かす方法。
基本的にはどちらの方法も「何かの資源」を差し出して勝利点を得るアクションだ。従って、プレイヤーは「いかに資源→勝利点の変換を効率的に、強力に行うか」を模索することとなる。
ラクダの進み方
上記で見た通り、プレイヤーたちは基本的に、1周の中で2か所ある「勝利点を得るロンデルマス」で赤/青/黄の勝利点を伸ばしていくか、または「交易カードを使えるマス」でカードを打ちたい。では、そうしたマスまでラクダはいかに移動するか。
ラクダは基本、時計回りに動く。そして自分の手番では1歩は強制的に進む必要がある(同じ場所に居続ける事はできない)。ただし、この時、資源である金1個か、または手札1枚を捨てる事で進む歩数を2歩にできる。更に「金1個+カード1枚」をセットで捨てれば歩数を3歩にできる。
このように、カードは単に「交易カードとして効果を発動する」だけではなく、早くラクダを進めるための資源代わりにもなる。序盤に高いレベルの交易カードを取っても「交易カードとしては、今の段階では使用できない」場合がある。しかしラクダをたくさん進めたり、他の交易カードを使用するための資源として流用できるため、手中で腐るということがない。
使用したカードは自分のラクダ駒がスタートマスに止まったか通り過ぎた時、再び手札に戻ってくる。従ってラクダを進める資源としてカードを使う事にそこまで過敏にならなくても良いが、「後でそのカード、使用しないかな?」という悩みは難しくも本作の面白みとなっている。
もう一点、1つのマスにはラクダは1頭しか止まれない。そのため、他プレイヤーのラクダが居るマスは飛ばして進む事になる。これは、2人3人のプレイヤーがお互い近い場所にいる場合は互いの上を飛び越えていって移動が捗ることを意味する反面、「他の人に先に踏まれたマスのアクションを、自分は使えない」ことでもある。こうした、抜きつ抜かれつ、時として金やカードを使って相手を出し抜き、使いたいロンデルマスを先取りしたり、逆に相手に出し抜かれたり、というのも本作の面白ポイントの一つだ。
オレンジのラクダは緑のラクダがいるマスには止まれない。よって、1歩目で緑のラクダがいるマスを無視して飛び越えて進む。
ロンデルマスの効果
ロンデルマスの構成は大きく分けると次の5種類となる。
- 勝利点を得るマス
- 交易カードを使えるマス
- 金を得るマス
- 金を捨て資源(カード・宝石)を得るマス
- とにかく進むマス
これらのロンデルマスは毎回ランダム配置となるため、並び順を見て作戦を練る必要がある。また、交易カードの使用、金の獲得、前進する各マスの中には「貢献度」で効果が上昇するものが幾つかある。
青の貢献度を上げると「青を参照して金を貰えるマス」が強くなる。
赤の貢献度を上げると「赤の貢献度に応じて強力なカードを使えるマス」が強化できる。
黄の貢献度を上げると「黄を参照して前進するマス」の効果が高まり、移動が早くなるので周回スピードを上げられる。
これらの効果はどれも魅力的で、各色とも勝利点を得れば得るほど貢献度も上がるので終盤に向けて一気に加速する仕組みとなっている。
ロンデルマスの効果を一見すると赤黄は勝利点を得づらいように思えるが、交易カードには様々な色の勝利点を得られるものが存在するので、こうしたカードを上手に使って各色の勝利点をどんどん伸ばしたい。
貢献度と勝利点
ここで一応、用語について整理しておこう。貢献度は赤・青・黄の各ゲージの上に書いてあるギリシャ数字のもの。各色ごとに、各プレイヤーの勝利点コマの場所によって貢献度が幾つか、分かるようになっている。
例えば上の写真で言うと、最下段の黄色の貢献度はオレンジのプレイヤーが2で、緑・青は1だ。
ロンデルマスでアクションを実行する時、もらえる資源や使えるカードのレベルや前進できる歩数などアクション効果を強くするために参照するのは貢献度の方だ。このアイコンが貢献度を参照する事を表している。
一方、ロンデルマスによるアクションやカード効果で獲得するのは勝利点の方だ。各色ごとに最大は10点となっているが、勝利点が溢れた場合は他の色に点数を割り振れるため無駄にはならない。勝利点を獲得するアイコンはこちら。
貢献度と勝利点の違いがあやふやだと本作のキモがよく分からなくなってしまう。この2つの違いをキッチリ抑えよう。
終了条件
終了条件は誰かが以下のどちらかを満たした時となる。
- 2色の勝利点が9点以上になる
- 3色の勝利点が全て6点以上になる
この写真では青プレイヤーが2色で9点以上、緑プレイヤーが3色で6点以上のため、どちらも終了条件を満たしている
アソビションさんのHPには幾つかエラッタ情報が載っているが、終了条件についてはボード種類の言及(個人ボード→メインボードに修正)はされているものの、点数については修正がない点にご注意を。
得点計算
最後の得点計算はシンプルで、
- 3色のゲージそれぞれの勝利点
- 残った宝石1個につき1点
- 金5個につき1点
の3種を合算して、最も勝利点が高いプレイヤーがゲームに勝利する。もし最多勝利点のプレイヤーが複数人いる場合はタイブレークとして「赤>黄>青」の順番で勝利点を確認し、高い方が勝つ。それでも差がつかないなら勝利を分かち合う事となる。
本作の醍醐味
本作の醍醐味はズバリ「勝利点獲得エンジンの構築」だ。序盤はどのプレイヤーも似たり寄ったりの手札で資源も少ない。勝利点もまだ稼げていないので貢献度も低いことからどのマスのアクションでも強い効果を発揮できず、ゆったりとした立ち上がりとなる。
しかしカード同士の噛み合いを上手に作り、いかに勝利点を稼ぐかの「自分なりの方程式」を組み立てることが出来れば、中盤から徐々に気持ちいい動きができるようになってくる。カードを獲得し手札を増やせば強い効果のカードも打ちやすくなるし、素早くロンデルを1周するためにカードや金を惜しみなく使えるようになる。
また、上記「ロンデルマスの効果」で説明したように、本作では赤青黄の勝利点を伸ばすことで「貢献度」も上がるため、ゲームが進むごとに貢献度を参照するアクションがどんどん強化されていく。これにより、さらに効果的に各色の勝利点を得やすくなり、これによって貢献度が上昇し…とゲーム展開のスピードが見るみるうちに上がっていく。
やがて最終盤ではゲームを始めた時点では想像もできないほど怒涛のスピードでゲーム終了条件が踏まれる。イメージで言えば「序盤:中盤:終盤のラウンド比率=6:3:1」くらいの比率と感じるかもしれない。
こうした終盤の加速による疾走感とテンポチェンジも本作の持ち味だ。終盤の加速があまりに速いので「拡大再生産でせっかく気持ちよくアクションが打てるようになったんだから、もっと堪能したい!早く終わり過ぎ!」と思うプレイヤーもいるかもしれない。が、拡大再生産というシステムは「上手く噛み合った側のプレイヤーは楽しいが、逆の立場にとっては針の筵にいるようなもの」だ。上手くいかなかったプレイヤーにとっては、こうした加速でサッと終わるゲーム性はむしろ有り難い面もある。
以上の、終盤の加速による突然の終焉というゲーム展開により、本作は見た目よりも遊び感が良い意味で軽い。筆者は拡大再生産が得意ではなく、本作で勝ったことは一度もないが、それでも意外と負の感情は湧かないし、もう一戦!とも思う。個人的な感想ではあるが、本作は拡大再生産が得意ではない人でも気軽に遊べる作品と感じた。
未プレイの方は一度、本作のアップテンポなプレイ感を試してみて欲しい。
弱点
一方、拡大再生産のオレツエータイムが好きな層からすると、この超加速度を弱点や不満点と捉える方がいて当然とも思う。終盤の進み方が怒涛の勢いなので、高レベルの交易カードをゆっくり何度も打っている暇がなく、やや「死にカード」と化している面も否定できない。
実際、ゲーム展開次第ではあるものの、5レベル以上の交易カードを打てる回数は1ゲームで多くて2、3回という事が多いのではなかろうか。となると、序盤に取った5レベルカードはゲーム中のほとんどの時間、「交易カードを打つ時のコスト」もしくは「ラクダの移動を一歩伸ばすための資源」としての意味しか持たない事になる。ここは残念な点だ。
ただし、本作のアクションは「ロンデルタイルの入れ替え」で変更できる可能性がある点を忘れてはいけない。今後もしかすると、拡張等で新たなロンデルタイルや追加交易カード、プレイヤー個別能力などが追加され、高レベルカードを使いやすい環境が実現する可能性もある。今後の展開を楽しみにしたい。
まとめ
以上で見てきたように、本作は
・各プレイヤーがロンデルタイル上でラクダを周回させてアクションを行い、勝利点を稼いでいくゲームである
・プレイ内容は意外とシンプルで、ラクダは1歩移動が基本だが、金かカードのどちらかを消費して2歩、「金+カード」を消費して3歩まで移動できる。
・盤面には勝利点を稼ぐマス、交易カードを使えるマス、資源を得るマスなどがあるが、毎回マスの配置が変わるのでゲームごとに作戦を考えるのが楽しい。
・また、勝利点を稼ぐためのエンジン構築も本作の醍醐味だ。
・拡大再生産が中盤から終盤にかけて一気に進むため、疾走感がありテンポが速く
・最後の急加速によりゲームが一気に終わるため遊び感もサラッと軽い。負けてもあまり尾を引かないのも長所。
・終盤の圧倒的加速により高レベルカードがやや死に札ぎみという弱点もあるが
・疾走感、加速感、軽快感が光る、軽めの良作中量級と言えるだろう。
以上です!
2024年はボドゲ大豊作の年!そんな中でも本作はSNSで見るとなかなか人気なのですが、何故かボドゲーマさんでのレビュー数は多くなかったようでしたので、拙作ながらレビューを書かせていただきました☺️🙏
文中にも書きましたが高レベルカードが少し打ちやすくなる拡張とか出るなら胸熱!楽しみに待ってます^ ^
最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました!皆様の良きボドゲライフに少しでも貢献できましたら何よりです♪
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