ハダラグレンさんのレビュー

素晴らしい名作です。派手さはありませんが、テーマとシンプルなゲームシステムが高いレベルで見事に融合されています。

■テーマ
ゲーム名の『ハダラ』はアラビア語で『文明』を意味する言葉で、人類最古の文明発祥地であるメソポタミアがアラビア語圏であることに由来します。プレイヤーは『王朝の意志』となり、自文明に取り込む技術を取捨選択し王朝を発展させます。3時代を経て最も王朝を繁栄させたプレイヤーが勝利します。

■ゲームシステム概要
各ラウンドの前半は「5種類ある山札の1つからカード2枚を引き、1枚を自分の場に出し所有するか破棄するか決め、残りの1枚は場に戻す」を5回。後半は「場に戻したカードを1枚引く」を5回。これを3セット(3時代)繰り返すだけです。5種類の山札は軍事[赤]、文化[青]、経済[黄]、食料生産[緑]、特殊[紫]の技術を表しています。
テーマとして見ると『王朝の意志』として世界の新技術に着目し、どれに投資し自文明に取り込むか決断します。取り込むには時間がかかるので、1度に全ての技術は取り込めません。投資を見送った際には初期導入費用として計上していた予算が返ってきます。

■良い点
・ゲームの完成度
冒頭に述べた通りです。ゲームデザイナーは天才じゃないかと思います。
・ゲームの密度
各ラウンドの前半後と後半後の処理などゲームの説明は割愛しましたが、ジレンマ、運、戦略、拡大再生産、値引き、プレイヤーごとに異なる初期状態、複数の勝ち筋とシンプルながらも多くの要素がギュギューッと詰め込まれていてリプレイ性もあります。

■気になる点
・削ぎ落とし過ぎ
壮大なテーマなんですがシンプルにし過ぎたせいか、何だかよく分からないパラメタの管理に終始してるような印象を持つ人も多いようです。かなり想像力で補わないといけません。
・プレイヤーの立場
仮に『王朝の意志』と書きましたが、分かりにくいですよね。分かりやすくするなら『初代王から1000年以上に渡り歴代の王に仕え続けた謎の不老不死の宰相』みたいな架空のキャラを想像すると良いかもしれません。

■総評
とにかく良く出来たゲームです。小学校低学年くらいの子供から楽しめるシンプルさでありながら、大人も楽しめるオススメのゲームです。
ゲーム終了後に自文明に取り込んだ技術を眺めて、自国の歴史について空想を広げるのも楽しいです。