- 1人~6人
- 90分~120分
- 13歳~
- 2020年~
スピリット・アイランド:ひび割れた大地(拡張)はいぺりおん!さんのレビュー
マストバイかはともかく、より深く楽しむには絶好の拡張
スピリット・アイランドの第二拡張だ。便宜上、第一拡張「鉤爪と枝」による新要素(4種のトークン、イベントシステムを含む)もひっくるめてレビューする。本拡張単体でもそれら新要素の導入が可能だからだ。
はじめに、本拡張並びに「鉤爪と枝」により追加される要素は、ゲームを大幅に改変することはないものの、そこそこ複雑度を上げるということを断っておかなければならない。そして、ただでさえ複雑なスピリット・アイランドというゲームが、これ以上に複雑化されることをどこまで許せるかは、人によるとしか言えないだろう。あまつさえ、そういった複雑化は、明確なゲームバランス修正を意図したものではない。むしろ、さらなる要素を足すことで、個性豊かな種々の精霊や能力カードをもっと追加できるようにするためのものに過ぎないと、言い方を悪くすれば私はそう捉えている。
しかし、スピリット・アイランドというゲームに深く入れ込んでしまった人間にとって、バラエティに富んでいる、即ちリプレイ欲を刺激することは、須く歓迎すべきことと断じて問題はないだろう。複雑化するとは言っても、基本の完成されたゲームシステムの上に、程よく刺激を与える程度に要素が足されていく感じは、さながら豪華なトッピングで煌びやかに彩られたホールケーキを眺めるような満足感を与えてくれる。元の味をより一層活かしてくれる拡張という意味では間違いなく「鉤爪と枝」と併せて名拡張と言えるだろう。
以降、各新要素についてざっくりとした説明に私の個人的な所感を述べていく。公式でアナウンス済みのバランス修正についても最後で軽く触れておく。
新精霊
本拡張だけで計10体の新精霊が追加される。「鉤爪と枝」の2体に比して圧巻の量だ。しかも、「鉤爪と枝」による2体は新要素の導入が必須だったのに対し、こちらは10体中4体が新要素なしでも使用可能と、敷居は下げられている。(尤もその4体中2体は複雑度超高だが)
基本よりもプレイ難度は高めな傾向にあるが、「奥深き原野の誘惑」あたりは個性的ながら割と扱いやすいように感じられた。一方、えげつないレベルでゲームルールに干渉してくる精霊もいるので、腕に覚えのあるプレイヤーの眼鏡には十分かなうだろう。
中には特定のトークンへの依存度が強い精霊も多いので、同種のものに依存する精霊同士でパーティーを組めばシナジー的に若干強くなるのではないだろうか、逆に依存するものが全く異なる精霊だと噛み合いがイマイチとなってしまうような気もしている。
各種トークン
島ボード上に配置するトークンとして、「鉤爪と枝」で登場の獣、大自然、疫病、対立の4種が、そして本拡張で登場の悪地の計5種が追加される。このうち大自然と疫病はそれぞれ「遠征」「建設」を1回阻止と、至ってシンプルな効果だ。対立は侵略者駒ごとに付与されるちょっと特殊なトークンだが、対象の侵略者の次の略奪時のダメージを0にするだけと、まだ分かりやすい方。獣にしても能力やイベントで参照されるぐらいで、それ自体では特に効果を持たない。曲者は悪地で、「アクションごとにに1回、ダハンおよび侵略者へのダメージに+1する」と、いまいちピンとこない効果。そもそも「アクション」という用語がわかりづらい。例を挙げれば、ある土地での略奪1回は1つのアクションだし、ある能力の使用1回も1つのアクションだし、イベントによって発生したある1つの土地での効果1回も1つのアクションだ。ルールブックの最後の方に1アクションと見なされるもの一覧が載っているのでそちらも参照されたし。後半の説明も嚙み砕いて言えば「人間へのダメージ+1」ということで、土地へのダメージは変化しないし存在マーカーにも影響は与えない。ダメージを与える要因が侵略者でも精霊の能力でもイベントでもなんであろうと、とにかく人間の両陣営へのダメージが1アクション全体でともに+1されるのだ。ダメージが0なら適用されないことも注意。このように複雑な仕様を持つ悪地だが、なんなら悪地(と獣)は受動的に取り除かれることがないため、悪地付与能力持ちがいるとどんどん累積していく。まあ、悪地にいる侵略者にはダメージを通しやすいということと、悪地には極力ダハンを近づけないようにすることを意識しておけば良いだろう。
イベント
「鉤爪と枝」より登場したイベントだが、率直に言って、我が家での初お披露目では不評だった。やはり、各ターンの処理が1つ増えることでプレイタイムが長引いたというのは、まあ嬉しくないことだろう。内容がランダムということで単調なゲーム展開に「揺さぶり」を加えるというのは分からなくもないが、にしても処理が煩雑なものが多いため、倦厭されるのも無理もない。しかしそこは公式も流石で、ルールブック内にイベントを導入しない場合の選択ルールが記されている。イベントカードを一切使わないのでは獣トークンが弱体化してしまうが、その選択ルールならちゃんと使い道が生まれるようになっている。ただでさえ新要素が多いのだから、さきにトークンだけ追加してみてイベントカードは使用しないというルールで最初の数回をやってみるのもお薦めだ。
まあ、好みが分かれる点だと思う。予想外の事態に対処したいか、ある程度決まった道筋を辿っていきたいか、少なくとも何がなんでも導入しなければならない要素だとは思わない。その時折の時間的余裕と相談してもいいかもしれない。
ちなみに、「鉤爪と枝」からの変更点として、1ターン目はイベントカードをめくるだけで処理はしないというルールが追加されている。1ターン目は略奪が発生せず、したがって略奪に影響を与えるイベントが意味を失ってしまうのと、序盤から極端に盤面が変化するのを避けるためと思われる。
シナリオ・敵国
シナリオは3つ、敵国は「ハプスブルク君主国」「ロシア・ツァーリ国」の2つが追加される。ロシア・ツァーリ国に至っては最高難易度が11となっている。いつか挑戦する日は訪れるのか…
地味にありがたい変更として、本拡張から難易度が敵国シートに直接記されるようになった。これまでは逐一ルールブックを確認しないと難易度が分からなかったため、ユーザビリティへの配慮を感じる。まあ、自分で書き込んでしまえばよかったといえばよかったけれど。というか最初そのつもりでルールブック見たら難易度表が載っていなくて焦った。
様相
基本セットの初心者向け精霊4体の複雑度を上昇させる様相カードが追加された。中でも難しめだった「炎のごとく揺らめく影」に関しては逆に易化することもできる。まだ触っていないので何とも言えないが、パッと見た感じ大幅に性質を異にしてしまうようなものもある。とにかくバリエーションが増えるのは楽しそう()
以降、公式でアナウンスされているバランス修正
初期の荒廃マーカー数
荒廃カードの健常な島面上に置かれる荒廃マーカー数が、「人数×2」から「人数×2+1」に修正された。
これにより、荒廃カードがめくられるまでの猶予が人数に正比例するようになった(人数×2までなら許される)。ソロプレイに至っては猶予が1個から2個へと倍増する。ていうかめちゃくちゃクリティカルな変更やんけ…難易度下がる分には有難いけれど…(出典:公式FAQ)
禁止カードや置換カードなど
「鉤爪と枝」による新規カードのうち、イベントカード「獣たちの奇妙な狂気」「戦争が島の海岸に触れる」「追い越されて」 、荒廃カード「転換点」の計4枚が除外カードとされている他、大能力カード「海の怪物」は本拡張で、小能力カード「犠牲による成長」は第三拡張で置換カードが追加される。また、本拡張で登場の大能力カード「貪り食らう虚無」も第三拡張で置換カードが登場する。除外カードについてはデッキから省いておくのが賢明だが、置換カードは置換カードを入手しないうちから置換する必要はないとのこと。但し、「犠牲による成長」だけはそのあまりの強さから除外するプレイヤーもいるそうだ。(出典:公式FAQ)
「鉤爪と枝」は基本と同時に出たというのもあり、バランス的に頂けない部分も幾つかあった模様。
↓要点整理
種類 |
カード名 |
状態 | 備考 |
イベントカード | 獣たちの奇妙な狂気 | 除外 | |
イベントカード | 戦争が島の海岸に触れる | 除外 | |
イベントカード | 追い越されて | 除外 | |
荒廃カード | 転換点 | 除外 | |
小能力カード | 犠牲による成長 | 第三拡張で置換 | 予め除外するプレイヤーもいる |
大能力カード | 海の怪物 | 本拡張で置換 | |
大能力カード | 貪り食らう虚無 | 第三拡張で置換 |
まあね、このゲームを最初から100%完璧なルールで遊ぶのは到底不可能だし、数回どころか十数回やったところでルールミス0はまず実現しないんじゃないだろうかと。というか公式が随時バランス修正や明確化のアナウンスをしている中で完璧なルールなどあってなきが如しの気もするのだ。なので、肩肘張らずに気楽に遊びましょう。以上!!
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