- 1人~4人
- 45分前後
- 13歳~
- 2023年~
チョコボの不思議なダンジョンボードゲームはいぺりおん!さんのレビュー
チョコボの不思議なダンジョン好きにはたまらないが、そうでない人にも強くお薦めできる意欲作
はじめに、私はチョコボの不思議なダンジョン(以下チョコダン)のシリーズ中でも、とりわけ2をやり込み、そして2を心から愛していると自称する人間である。よって、このチョコボの不思議なダンジョンボードゲーム(以下、紛らわしいので本ボドゲ)のレビューはどうしてもチョコダン2の経験に軸を置いてしまうと思うが、そこはどうか温かい目でご容赦願いたい。
さて、まずはこのゲームに出会った経緯を話そう。
チョコボシリーズのボードゲーム化作品としては第四作品目となるこのゲームが出ると知って、とりあえずルールブックに軽く目を通してみたが、面白いかどうかあまりわからなかった。なので、予約購入をポチったのは、まあチョコダン2好きとして持っておくだけ持っておいてもいいかぐらいの気持ちでしかなかった。正直、そこまで期待はしていなかった。
そして先週、ついに到着したのだが、いくら持つだけと言っても、やはり積んだままにするのは些か寂しいので、かつて一緒にチョコダン2をやり込んだ戦友の妹たちを説き伏せて、とにかく1ゲームやってみようという流れに持っていくことに成功した。インストは早かった。最初は手探りだ。頭を寄せ合って相談しつつ、チョコボを動かし、モンスターどもを蹴散らし、ボスに遭遇し、そして見事に討ち破った――ゲームが終わったのと、2ゲーム目をという号令がかかるのはほぼ同時だった。
そう、私たちは戻っていたのだ。敵の大群に挑み、死神の恐怖に怯え、無我夢中にエキスを採取していた"あの頃"に。心を空にして没頭しているうちに気づいたら、もう二度とは味わえないと思っていた童心に、帰ってしまっていた。
(ちなみに、この辺で雰囲気をぶち壊しにしておくと、1ゲーム目はモンスターの湧きルールを盛大に誤解しており、大幅に難易度が下がっていた。ゲーム終了時にようやくそのことに気づいたため、それもあって2ゲーム目をとなったのだ。でもそれがなくてもまた遊びたいと思うぐらいにはみんな楽しめていたと思う。)
ポエムに浸るのもいい加減に、このあたりで大事なことを言おう。このゲームは、割と難しい。パッケージ自体は、チョコダン2に登場するモンスターたちの彫りの深いグラフィックに比べればだいぶ可愛らしく描かれており、私はやや牧歌的だなという印象を受けてしまったが、それもゲーム開始まで。ゲームが始まると、待っているのは容赦なく攻撃を加えてくる敵の大群に近づいてくる死神の足音、そして息の詰まるような手札管理に絶え間なく選択を迫られるジレンマ。私たちは思った。「これまんまチョコダン2の復活ダンジョンじゃん!」て。
ちなみに私たちの2ゲーム目は、ルールミスなしでボスフロアに辿りついたは良いものの、激しい攻撃から逃げるばかりで1ダメージも与えられないうちに、やがてリソースが尽きて敢え無く敗北だった。あの時の絶望感はDORASURE初プレイ時以来かもしれない。
3ゲーム目の1F。だいぶ慣れてきて、HPは満タン付近、野菜にも余裕があり、おまけに死神ゲージはまだ半分ちょっと。この調子なら今度こそいけるか…?/post_image_d10bec40-6e1c-477c-ba3f-1808b83b6b1c.jpg)
ところが3Fを抜けきりボスフロアに突入したときにはHPは半減、野菜も底を尽きかけ、何より深刻なのは手札が3枚ぐらいまで減ってしまい、ほぼ満身創痍の状態。しかしファイアの本2冊を温存してきたのが生きて開幕ボスに大ダメージ。あとは倒れる前に倒すだけだ!(訳:ごり押し。これぞチョコダン!)
ここらで、少し本家の話をさせて欲しい。本家、チョコダンシリーズは、FF本編ではゲームに彩りを加える要素に過ぎなかったチョコボに焦点を当てたFFのスピンオフ作品だ。正確には、チョコボを主人公としているのはチョコダンだけではなく、そうした作品群をまとめてチョコボシリーズと呼ばれたりするのだが、チョコダンに関して言えば、名前通り不思議のダンジョン恒例のシステムを取り入れつつも基本的に難易度は下がっており、元祖不思議のダンジョンたる「風来のシレン」のライト向けフォロワーと言って差し支えないだろう。
そもそも不思議のダンジョンとは何だろうか?私も何を以てして不思議のダンジョンと呼ぶのかはあまり分かっていないが、なんとなくの理解だと、ランダムに生成されるマップが、それを1フロアとして、何フロアにも渡って続いている一連のものを、不思議のダンジョンと呼ぶのだろう。最深部まで抜けることでクリアとなるが、どのフロアも挑むたびに異なった構造となるため、経験に裏付けされた高いアドリブ力を要求されることとなる。その攻略はまさにトライアンドエラーといった感じで、時に理不尽な状況に殺されつつも、着実にプレイヤースキルを高め、状況判断力を鍛えることで、やがてクリアが見えてくるという楽しさがある。
そして、そんな不思議のダンジョンの面白さは、協力型ボードゲームに通じるものがあると思う。様々な状況下で何が最適解かみんなで頭を悩ませつつ、苦難の果てにボスを倒した暁は揃って歓声を上げるという、協力型の醍醐味を味わせてくれるのが本ボドゲだ。その点は同じ協力型のDORASUREの系譜にあると言えるだろう。
さらに本ボドゲの特徴として、主人公チョコボは、プレイヤー全員が番号の振られたカードを手札から1枚ずつ出し、それらをアクションホイール下に昇順に並び替えて、低い順に該当するアクションを実行という感じに行動するのだが、この際、出すカードの具体的な数字を言ってはいけないという制約がある。細かくはルールブック参照だが、伝えられる情報に制約があることで、誰もが話し合いに参加し、主体的にクリアに貢献できるようになっている。協力型ボドゲにありがちな奉行問題も軽減されているということだ。
つまるところ、チョコダンもとい不思議のダンジョン共通の面白さを、複数人かつ紙製ボードの上でも存分に味わえるように作り上げられたのが本ボドゲと言えよう。もっとも、本ボドゲは不思議のダンジョンの代名詞とも言える肝心のランダムマップを取り入れていない。モジュラーボードを使えば近いことはできなくはないのだろうが、そこはプレイ感を洗練するためか意図的に取り入れなかったものと思われる。とはいえ、手札やモンスターがランダムであることで、不思議のダンジョン特有の"アドリブ感"も高い。アクションホイールの存在も特筆に値する。毎ラウンドごとにちょっと違ったゲームになるのだ。
ついでに、本ボドゲのジレンマのあり方もチョコダンに酷似したものを感じる。最初の方のフロアは簡単で、資金稼ぎや宝物集めも容易、しかし後の方のフロアは強敵ばかりで、稼ぐどころか走り抜けるだけで精いっぱいというのがチョコダンの基本的な図式だが、それは本ボドゲにも言える。強敵蔓延る3Fを抜ける時の、4Fに待ち構えるボスのためにHPなどリソースをできるだけ温存しなければならないという緊迫感は、まさにチョコダンのそれだ。最初の方のフロアも、いくら簡単とは言っても長く居座るのは危険。HPや満腹度(本ボドゲでは野菜がこれに近い)がジリ貧に陥ってしまったり、逆にアイテムを持ちきれず泣く泣く残していくことになったり(本ボドゲでは、強力なアイテム「本」の所持上限が3ということで、この感覚すらも味わえてしまう。なんという再現度だ!)、もちろん死神に襲われもする!!(ちなみに死神は、不思議のダンジョンにはないチョコダン独自の要素だ。アイテム集めに勤しんでいるとき不意に現れる「死神の気配がする…」のポップアップに心臓がドキッとなるのはチョコダンプレイヤーならあるあるだろう)
そのため、どのタイミングで次のフロアに移るか、どのアイテムを今使って、どのアイテムを後のために残しておくか。ゲームプレイは常に選択の繰り返しだ。もっともチョコダン本編は強化要素もあるため、時間さえかければパワーで圧倒することが可能ではあるが、ゲームオーバーのたびに完全にリセットされてしまう2の復活ダンジョンではそれが通用しない。元祖「風来のシレン」に近づけたチャレンジャー向けの本格難易度、それが2の復活ダンジョンなのだ。だから、私は本ボドゲのプレイ感を、2の復活ダンジョンと非常に相通じるものがあると評したい。かつて復活ダンジョンに血を滾らせた同志がいたら、またあの綱渡りの楽しさを今度はみんなで味わえるとして、心よりおススメしたい。
と、ついレビューのふりをしてチョコダン2経験者にしか伝わらない思い出話集にしてしまった。さんざん語っておいて、もはや誰も信じてくれないかもしれないが、とにかく声を大にして言いたいのは、本ボドゲは今までチョコダンシリーズに1ミリたりとも手を触れたことはないよ!という人にも自信を持ってオススメできるということだ。それはなぜなら、不思議のダンジョン自体がボードゲーム的な問題解決の面白さを多分に味わせてくれるシステムであり、そんな不思議のダンジョンの"エッセンス"を見事に再現しているのが本ボドゲだからだ。もしチョコダンはじめ不思議のダンジョンに馴染みがなかったとしても、最適解をひねり出す面白さ、仲間とのコミュニケーションの楽しさ、ボス戦における一体感、親しみやすいグラフィック、触り心地のよい木製ゴマといった数々の要素で、私のような中~重ボドゲ好きにもしっかり響くような作品となっている。決してただのファン御用達キャラゲーではない。いつも遊ぶ仲間内でポンと出してみたって、好みを押しつけやがったと顰蹙を買うような目にも合わないだろう。
ここまでファン目線もあり、だいぶ好意的な観点から書いてきてしまったが、気になる点もある。一番は、リプレイ性だろう。2F3Fは裏面もあり、ボスも2種類と、多少リプレイ欲を刺激するようにはできているが、やはりマップが固定で、攻略の道筋も多くはなく、お世辞にもあるとは言えない。ルールが易しめなゆえか、ちょっと深みに欠ける感じもある。しかしシステム自体は面白く、ルール難易度が低めなのも取っつきやすい、どこへでも出しやすいという評価点に繋がるので、それはそれで将来的に上級者向けの拡張を出してくれはしまいかと期待してしまう。追加ボスやモンスターなどはもちろんのこと、チョコダンには独自要素として、チョコボの後を追従して一緒に戦ってくれるNPCキャラがいるが、そういった要素を追加したらもっと面白くなるのではないだろうか。先述のモジュラーボードで疑似ランダムマップも大歓迎だ。いかがでしょう、スクエニさん??
難易度調整も、Easy、Normal、Hardの3段階があるが、違うのは初期手札と初期から獲得済みの本の数だけと、些か味気ない調整に感じる。初期のリソースだけ違ってゲーム進行に特に変化がないのなら、わざわざ難易度を上げて挑戦してみるのも億劫に感じてしまう。そこはもう少し、モンスターの湧き数、レベルが変化するとか、或いはアクションホイール自体が替わるとかの工夫が欲しかった。
他に若干気になるのは、ストーリー性の乏しさだ。どうでもいいと言えばそうなのかもしれないが、本家ファンとしてはどうしても目についてしまう。そもそもチョコボたちはなぜダンジョンを攻略していたのか?それは、宝さがしというごく普通の動機からだ。1でも2でも、時忘れの迷宮でも、最初はそうだった。後になって、仲間を救うためとか、もっともらしい理由がついてくるが。ところが、本ボドゲのルールブック曰く、「無事にチョコボをダンジョンから脱出させられるでしょうか。」とのことなので、つまり本ボドゲの世界観においては、チョコボは何らかの事情でダンジョンに閉じ込められてしまい、ボスを倒して脱出する以外ないということらしい。ここで本家ファンならどうしても突っ込んでしまう。「いやいやテレポのしおり拾えよ!」と。それに、美味しいナッツを求めて旅する無垢なチョコボも、仲間を助けに恐ろしい敵の中を突き進むひたむきなチョコボも、その両方を見てきた身としては、ただ自分の身を守るためだけに行動するチョコボというのは、いささか物足りないものに思えてしまう。そこはやはり、レアなお宝(ナッツ?)を求めてとか、そんな動機が一応は欲しくもあった。いや…どうでもいいと言えばそうなのかもしれないが、ちょっと気になってしまったのだ。厄介オタクでごめんよ…でもこのゲームは気に入ったぜ…
本家ファン目線を交えての長文レビュー、ここまでご一読いただきありがとうございました。
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