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  • 2人~4人
  • 40分~60分
  • 14歳~
  • 2017年~

クルセイダーズはいぺりおん!さんのレビュー

508名
10名
0
16日前

2~4人どの人数で遊んでも楽しい、しかも比較的短いプレイ時間で充実した体験を得られ、高いリプレイ性も誇る画期的なゲーム。結構気に入ったので今更ながらレビュー。とりあえず、幾つか注意点があるため先に述べておく。


拡張入れるべきかどうかは、好みによる

このゲームの拡張「神の影響力」は、影響力アクションの改善をはじめ、建物の種類が倍になるなど大幅な変更を加える拡張で、よく言われがちなのは、基本の影響力アクションが強すぎる(から拡張を入れてはじめて完成する)ということだが、私はこの意見には反対だ。だって別に基本の影響力アクション強くないもん。

つまるところ、影響力アクションが強いと言われているのは、1.盤面の影響を受けず、しかも2.パワーがそのまま得点となる点にある。が、ロンデルである以上、影響力だけを連打するわけにもいかないため、どうあがいても盤面との相互作用は考えなくてはならないし、パワーがそのまま得点となるのは十字軍も同様だ。あまつさえ十字軍は盤面の影響を受ける分、敵対国優勢タイルや城のLv4ボーナスといった得点効果、早取りや敵レベル上昇による他プレイヤーへの干渉など、さらなる作用を生み出すポテンシャルがあるため、BGGでもちょろっと開発者が言及していた(ソース)が、むしろ十字軍の方が強いまである。

ただし、初心者同士だと話は変わってくる。というのも十字軍戦略はある程度の経験がないと本領を発揮しづらく、お手軽に得点を稼げる影響力が相対的に強くなっているからだ。十字軍をするゲームなのに、西ヨーロッパに篭って影響力を稼ぎまくられるという負け方は、些か興醒めが過ぎる体験だろう。そこで、まだ数を試せてはいないが、初心者がいる場合のバリアントとして、「教会のレベル1を効果なしに変更する」という調整はいかがだろうか。こうすることで、影響力アクションにデバフをかけて理不尽さを抑えられる気がしているが、データが集まったら後々追記してみるつもりだ。

とにかく、拡張に関しては入れても入れなくてもよい。入れると重量級感がかなり増すため、正統進化というよりも味変の趣が強くなっている。というか、建物に関しては種類が半分なだけあって、基本の方がバランスにおいて優れている節もある。要するに、入れるか入れないかは完全に個人の好みだ。


どの人数でも面白いしバランスは取れているが、ゲーム性が多少変わっている(特にキルムーブ関連)

まあ後半については当たり前かもしれないが。とにかく、ベスト人数とかは特になく、何人でやっても楽しいというのはこのゲームの評価ポイントとして非常に大きい。ただし、次の手番に建築や十字軍を実行しようと思っていた土地を後から「移動+建築」「移動+十字軍」で封じてくるといったキルムーブは、人数が多ければ多いほど発生しやすくなる。これらはゲーム体験としては普通に不快に感じる人もいるだろうし、時に大幅な計画の軌道修正を余儀なくさせられることは間違いない。2人戦でも発生するときはするが、人数が多いと気を配る相手が増え、警戒しなくてはならない状況も増えてくるため、潰されるかもしれないという緊張感は否が応でも増大する。逆に言うと隙を見せた他人を潰すことが普通に最適解たり得る。こうした不快要素のある駆け引きを楽しめるかどうかは、当然人によるだろう。私個人で言えば、2人戦の先の読める落ち着いた展開も好みの一方、4人戦で誰かが「移動+建築」のウェッジを改良した瞬間から卓全体に張り詰める緊張感にも堪らないものがあると感じている。


騎士団タイルは概ねバランスが取れているが、一部の騎士団がやや強い説あり?

これに関してはかなりの回数遊ばないと分からないことではあるが、極端にどれかが強かったり弱かったりということはないだろう。ただし、フレーバーからして主人公感のある「テンプル騎士団」は頭一つ抜けた強さがあるように感じる。その癖の強すぎる能力故に忌避されがちな「カラトラバ騎士団」は確かに難しいが、決して弱くはない。あと、同じ騎士団でも人数によって若干強さは変わってくるだろう。

とは言え、BGGでデザイナーが「テストプレイでは強すぎる騎士団はなかったし、ひょっとしたらそれはgroupthink(集団思考、即ち同卓者間での思考の偏り)かもしれないよ?」(ソース)と言っていたので、後々研究が進んだら、意見は変わるかもしれない。その場合は追記する。



と、私が個人的に声を大にして言いたかったことはここまでで、ここからが普通のレビューとなっている。読んでくれればもちろん嬉しいが、率直に言って飛ばしてくれても構わない。既にかなりの長さとなっているからだ。

さて、このゲームの何がそれほどにも魅力的なのだろうか。そこには、「1.戦略性と戦術性」、「2.個人プレイとインタラクション」、「3.新鮮さと経験値」といった対立要素同士のバランスが関係していると私は感じている。

1.戦略性と戦術性

セットアップを除き一切のランダム性がなく、非公開要素もないため、ゲーム開始時点でセットアップ時の盤面に応じた最適な戦略を考え抜くことになる。具体的には、どの辺りに侵攻して、どの建物を強化するかなどだ。

しかし、大まかな戦略を決めたからと言って、残りのゲームプレイがその戦略をいかに効率よく達成できるかという、良く言えばパズル、悪く言えば単純作業に陥ることもない。なぜならば、1土地1個しか建てられない建物、誰かが倒すとレベルが上がる敵、おまけにたまに妨害してくる他プレイヤーなど、必然的に他者との駆け引きを、それも一歩間違えれば大幅に遅れを取りかねない深い読み合いを、要求されるゲーム設計となっているからだ。それはむしろ大局的な戦略というよりも、局所的な小競り合いという意味で、戦術に近い。

優れた戦略を練る必要があるが、優れた戦略の達成には同じぐらい優れた戦術が欠かせない、この点こそが重量級と中量級の"いいとこどり"たるこのゲームの魅力に外ならない。

2.個人プレイとインタラクション

個人ボード上でマンカラをやり繰りするという、ソロプレイ感の強いシステムがウリとなっているこのゲームだが、随所に潜む強烈なインタラクションから目を逸らすわけにはいかない。それは、前述した他者との駆け引きの数々に加え、得点プールが無くなったら唐突に終わるというゲーム終了条件すらも、だ。そのため、完全には予測できない他人の動きに対して"受け"られる余裕を持たせたりとか、逆にこちらが他人の動きにただ乗りできるような"攻め"の姿勢を見せて圧をかけたりとか、マンカラ操作の目的はただのパズルにとどまらない。人数が多い時などは、常に他人の動きを見て自分の動きを決めなくてはならないだろう。

効率的なマンカラ操作を決めた上で、他プレイヤーとバチバチに睨み合いをするという、個人プレイとインタラクションの有機的な接続が美しい。

3.新鮮さと経験の蓄積

これまではメカニクス的な話ではあったが、こちらはリプレイ性に関係する話だ。

そこそこ深い戦略と戦術を要求してくるゲームのため、繰り返し遊ぶ過程で、より効率的な動きが分かってきたりとか、新たな動きに気付けたりとか、そういった成長の喜びを噛みしめられるのはもちろんのことだろう。しかし、それだけではただ上達して、上達しきったらおしまいという、寿命の"たかが知れている"ゲームとなってしまう。そこに一気に深みを加えているのが、「ランダムセットアップ」と「騎士団タイル」という2つの要素だ。

まず「ランダムセットアップ」についてだが、ただ敵タイルと建築ボーナスタイルをかき混ぜて配置するだけという大人しめのセットアップによって生まれるゲームプレイの幅は、確かに大きくはない。ただ、遊んでみると、どの種類のサラセン人がどこにいるかとか、銀行のコスト-2の土地がどれだけあるかとか、意外と戦略への影響が生まれる要素が多いことに気づかされる。

とは言えそれだけでは展開のパターンは数えるほどしかない。やはり大きいのが「騎士団タイル」の存在で、基本のシステムは一緒ながら、騎士団が違うだけでガラッとプレイ感が変わる。どれほど変わるかと言われると、「テンプル騎士団」とか「ホスピタル騎士団」はわかりやすくゲーム性を変更するが、お互いがマイナーチェンジにしか見えない「アルカンタラ騎士団」「サンティアゴ騎士団」「アヴィス騎士団」すらも、使ってみると、1つ1つがちゃんと異なるゲーム体験となっていることには驚かされる。ゲームごとに騎士団が変わることで、ある程度経験にもリセットがかけられ、向上心を刺激される設計となっているのだ。極めつけは尖りに尖った性能の「カラトラバ騎士団」。この騎士団に関しては是非とも研究してみて欲しい。少なくとも私にとってはかなりお気に入りの騎士団の1つだ。

まとめると、「経験の蓄積」という横の軸に、ランダムセットアップや騎士団タイルといった「新鮮さ」を足す縦の軸が加わり、結果としてこのプレイ時間では考えられないほどのリプレイ性を生み出しているのがこのゲームと言えよう。

要するに、1本で6回美味しい、が、1つ1つの味は控え目

これまで述べてきた通り、戦略に戦術、個人プレイにインタラクション、新鮮さに経験の蓄積と、様々な種類の味わいをひと息に楽しめる中量級として、とても優れているこのゲームだが、1つ1つの要素を切り出して見たとき、「もっと突き詰めたかった」という消化不良感を覚えることがあるのもまた事実。フレーバーとの接続も緩めで、浪漫を追い求めるには向かない。それでもなお、そうした弱点を補って有り余る充実した時間がこのゲームには約束されている。ボードゲームを遊んでいる時に感じるあらゆる種類の"楽しさ"が、この1時間程度のゲームにぎゅぎゅっと詰め込まれているのだ。


長くなってしまったが、最後に、拡張を入れないでも既に何十戦もしている中量級ゲームとして、私の家族には大刺さりだったゲームだ。もう流行りではないかもしれないが、長く愛される名作ゲームとして評価されて良いものだと私は信じている。


私お気に入りのカラトラバ騎士団と、ゲーム終了時の盤面(軍隊タイルだけ元に戻してしまった) 。建物3種類を解放しきってのゲームエンドはなかなかに爽快だが、結果は辛くも3人中2位に留まる。

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