グルームヘイヴンもけもけさんのレビュー

「ぼくは最近グルームヘイヴンをプレイしているんだけど、君がやっているそのゲームはぼくがやるに足るゲームかい?」のセリフでおなじみのゲームです。

評価が高いこのゲームですが、面白いから評価が高いわけではないので注意が必要です。このゲームの評価が高いのは、その潜在性の高さを評価してのものです。芸術作品に対する評価みたいなものです。よくわかんないけどなんかすげえぞ、これ、でいいと思います。例えば普通のゲームは最高の環境で最高のプレイをした場合、評価の最高点は100点になるとしましょうか。しかーし、グルームヘイヴンの場合、君の好み、努力、他の参加者との連携、ルール理解、シナリオ、運、火星と冥王星の角度、これらが全て噛み合った場合、このゲームは200点の高得点を叩き出すことができるのです。こいつは素晴らしい。だからこのゲームは素晴らしい。だから評価も高得点だ。そんな感じ。うん、でもそれがこのゲームの最大の不幸だったりするのです。ベストを尽くせば最高のゲーム。じゃあベストを尽くさなかったら? まあ、そういうことです。

このゲームは手札を出してそこに書かれたアクションをすることで、モンスターやトラップなどに対処します。そして強敵を打ち倒し、お話を進めてお宝うはうは、町おこしもできてきゃー、なゲームです。しかしアクションをするとそのカードは一時的に使用できなくなります。それを使用可能にするには、自分の別のカードを叩き壊すしかありません。手札を縮小再生産するデッキビルドゲームな感じです。ということは、ゲームを効率良く進めるにはゲームを逆算する必要があります。今回のボスはここだからこのカードを使って、そこに移動するにはこれ、ただそのカードはここでも使うから、その前にここで回復し、このカードを破棄、そんなことをつらつらと考え、どうやら、このカードは1回フリーで使う余地があるから、予備としよう、とかなるわけです。敵の配置等は公開情報なので、ベストを尽くすならそれを全て考慮するのは必須です。でゲームが始まったら、今度はモンスターの行動に完璧に対処します。モンスターは決められた思考ルーチンがあって、それで行動します。それを読み切るのは当然です。等価値の目標(移動先、狙う敵)への選択はプレーヤーたちが話し合って決められることを利用して、なるべくそういった状況にして自分の有利な方へと導くのも当然です。

そしてそれをやってみればわかりますが、自分は一体何をしているのだろうな気分になります。冒険や大河ロマンがテーマじゃなかったのかこのゲームは。旅行に出かけたけど、旅行先でずっとスマホを覗いていたかのような気分になります。ならもっと好きに気楽にやればいいじゃん、となると、まあ普通のゲームだったりするの。本当にそこが気の毒。

さらにこのゲームは、個人個人でお題をこなすことでキャラクターを強化することができます。ということは、ベストな選択よりも、個人目標を優先した方が点がたくさん入っていいかも。そうです。協力型ゲームでありがちな、何故ベストを尽くさない、何故俺の考えた最高の行動をお前はしない、お前はこうすればいいんだ、に対して、だってぼくは経験点がもっと欲しいんだ、だからそれはやらないよ、と言えるわけです。欲は理に勝つのです。この最効率に対する「ゆらぎ」は私はかなり好きです。でもさ、このゲームってベストを尽くさないと、だよね?

このゲームは最高の素材なのでしょう。それを生かすも殺すもあなた次第。挑戦してみる価値は十分にあります。