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  • 3人~8人
  • 15分前後
  • 8歳~
  • 2013年~

バン!:ダイスゲームもけもけさんのレビュー

197名
3名
0
2年以上前

「てめぇ裏切りやがったなっ」と大声で叫んでみよう。君はあることに気付くはずだ。気付かないならもう一度叫べ。鏡の前で角度を変えて、愛する人の前で、道端で。何度も叫べばこのゲームの真実がわかるはずだ。

このゲームは、保安官(と副保安官)、悪党(たち)、裏切り者(たち)に別れて戦うゲームだ。君らは銃でダイナマイトでガトリングガンで激しく撃ち合う。さらにそこに誰彼構わず矢を射掛けるのが趣味な通りすがりのインディアンさんたちが加わり(エキスパンションでは墓から蘇ったゾンビも加わり)、ライフ回復効果のあるビールでも飲まなきゃやってられない素敵なバトルを繰り広げることになる。

ところでこのゲームは隠匿系ゲームとしてよく紹介される(元のカードゲームがそうだからってのもあるけど)。参加者はゲーム開始時に役割カードを引く。そこに君は保安官とか、クソのような悪党とか書いてある。そして保安官の人だけ正体を明かし、ゲームを開始する。保安官助手と悪党と裏切り者は正体を明かさないので、誰がどの陣営かわからない、熱いバトルが展開されるってわけだ。まあな。

しかしあれだよな。例えば、保安官を殺そうと悪党たちがリー・ヴァン・クリーフを雇ったとする。彼らは共に保安官を襲う。スクリーンの前の君らは保安官のピンチにドキドキしながらも、同時に、きっとリーは悪党を裏切んだぜ、と安心してもいる。彼はきっと裏切る、ん、リーは裏切り者か。いや、でも彼は正義の味方の側に付くことにしたんだから、裏切り者って言い方はしたくないなあ。

そうなのよ、「裏切り者(renegade)」って語感が何かをおかしくしているわけよ。ゲームの勝利条件を確認すると、保安官は悪党と裏切り者を全て殺す、悪党は保安官を殺す、裏切り者は最後の1人になる、とある。その中の「悪党は保安官を殺せば勝ち」ってところに注目してみよう。悪党は裏切り者とか保安官助手とかが生きていても、仲間の悪党が死んでいても、とにかく保安官を殺せば勝ちなわけだ。だから裏切り者なんてどうでもいいのだ。とにかく保安官に鉛玉を浴びせることに専念すればいいわけだ。それに対して裏切り者がゲーマー的思考で「俺がゲームメーカーだ。時に保安官、時に悪党の味方をしながら正体を隠し皆を翻弄し、そしてゲーム終了時に、ええっお前が裏切り者だったのかーと称賛されるぜ」とか考えていたらゲームはあっという間に終了する。君が左右に反復横跳びしている間に、きっと悪党が保安官を撃ち殺してしまうだろうさね。

裏切り者のプレーヤーがこのゲームで大事なのは間違いない。しかし裏切りの最大効果なんて考えてる表六玉ではどうにもならない。このゲームの裏切り者はダークヒーローだと考えろ。損得で裏切るな。美学に従え。イメージしてみよう。激しい撃ち合いが始まると君はすぐに悪党にぶっ放す。「てめぇ裏切りやがったなっ」悪党が叫ぶ。そう、このセリフは悪党が叫んだセリフってのが重要だ。君と保安官たちは悪党を綺麗に掃除したあと、改めて、サシでヤり合うわけだ。それは過去の因縁か強い者に挑まずにはいられぬ性分か。なっカッコいいだろ? どのタイミングで裏切るだぁ? 最初からにきまってるだろ。

我々は自分たちを善だと思ってる。そして正体秘匿系のゲームは多数の善とそれに紛れ込んだ悪で構成されていることが多い。だから裏切り者と聞くと、そいつは善の側にいて、それがいつ悪に寝返るのだろうかとビクビクすることになる。しかしこのゲームの裏切り者とは「悪を既に裏切っていた者」なのだ。裏切りは君がこのゲームを買う前に決めていたことなのだ。この奇妙な引っ掛けが俺は好きだ(見事に引っ掛かってやらかしてしまったのは内緒だ)。だから正体を隠す必要なんかない(でも本当にカードを見せたりしてはダメよ。それはゲームをつまらなくするぞ)。正体を隠せといいながら全く隠さないままダイスで殴り合うこのゲームが好きだ。

映画「続・夕陽のガンマン」。君も好きだろ? 俺も好きだ。だからこの映画の英語タイトルが「 the Good, the Bad and the Ugly 」ってのも知ってると思う。「善玉と悪玉と卑劣漢」だな。このゲームにそれを置き換えると、善玉(the Good)が保安官、悪玉(the Bad)が悪党、卑劣漢(the Ugly)が裏切り者、そんな感じがしてしまう。多分、このゲームのアイデアの原点もそこなんだと思う。そして映画は3人の男たちの化かし合いだ。それが全部このゲームへのトリックだったとはね。

でもさ、誰かが裏切り者の役をやってた君のことを「the Ugly」なんて呼んだらどうする? もしそんなことがあったら、君はそいつの土手っ腹に風穴を開けるなりこう言ってやれ。「BEST of the BAD、それが俺だ」そして君はゲームでぱんぱんに詰まったカバンを肩にかけると、(電車に乗り遅れないように)ひぃこらとホームに急ぐのであった。

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もけもけ
もけもけ
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