フォートチャンコスズメさんのレビュー

かわいらしいフレーバーやデザインのわりにクレバーな戦い方が求められる「クセ強デッキ構築」ゲームです。

一回遊んでみましたが、なかなか面白い！

システムやルールの１つ１つはしっかり考えられているんですが、プレイしているとなんだか「子どもの気ままさ」をすごく意識させられます。「お友達を集めて秘密基地づくり」という、子ども特有のフレーバーが盤面から香り立ってくるかのようで、大変好みです。

いわゆる「デッキ構築系」にやり慣れている状態で臨むと、「あれ？」と思う仕組みが色々。良くも悪くも（？）既存のデッキ構築と一味違うので、その点を楽しめないと、「へんなゲーム！(´ﾟдﾟ｀)」で終わってしまう可能性もあるなと思います。

なので、このレビューではシステムのユニークさやフレーバーとテーマなどのフォートの魅力を伝えたいと思います。

ゲームの基本的な特徴

・デッキ構築システム
カード10枚をデッキとし、そこに新たなカードを加えたり、はたまたカードを除外したりしながらデッキを改良し、勝利を目指していく・・・というオーソドックスなデッキ構築システムが根幹です。

カード＝子ども、デッキは「お友達グループ」というイメージですね！

・カードはスート（属性）とパワー（能力）を持っている

↑カード左上のスート（王冠・水鉄砲・ショベル・接着剤等）を集めると、中央のパワーが強力に使えるように

子どもたちはそれぞれスート（左上のアイコン）とパワー（上部）とを持っています（あと、ユニークな名前と、個性強すぎる見た目）。
スートはパワーを増加させたり起動できるアイコンです。
パワーは、基地レベルを上げるためのトークンを取得したり、基地レベルを上げたり、VPをもらえたり・・・など。上段は他のプレイヤーもフォローできて、下段は自分だけが仕えるパワーです。

・シンプルなターン進行

↑プリンス。お前、確かにプリンスって顔してるよ。

毎ターン、5枚の手札から1枚プレイして、最後に1枚を勧誘（獲得）して捨て札に置き、終わります。これだけ。
ただし、自分の番以外にも他プレイヤーのプレイしたパワーを自分も使える（フォローできる）ので、暇な時間は少ないです。
アイコンが多いので覚えるのに少々手間取りますが、やること自体はかなりシンプルです。

・「基地レベル」を上げてゲームを有利に進める
子どもたちが集まって秘密基地をつくりやいのやいの、がテーマなので、基地が存在します。

↑ダブルレイヤーの個人ボードが大変すばらしい質感

ピザとオモチャというトークンを集めると基地レベルを上げることができます。ゲームを有利に進められたり、大量VPがもらえたりするほか、基地レベルをマックスにするとゲーム終了トリガーになります。

・一番VPを集めたものが勝ち
VPの獲得には基地レベルの上昇他、いくつかの方法が用意されています。それらを使って、もっともVPを集めたプレイヤーが勝ちます。

Fortのユニークなシステム

・勧誘フェイズで、他プレイヤーのカードを勧誘（獲得）できる

デッキ構築では珍しいのではないでしょうか？　他プレイヤーのカードを奪えます！
自分がプレイせず「裏庭」という場所に置いたカードは、他プレイヤーにカード獲得フェイズ（勧誘と呼びます）で奪われる可能性があります。フォートならではの特徴的なギミックです。

このため、フォートは自分の勝ち筋を通すだけでなく、いかに相手に利を与えないか？ 相手の動きを阻害 or 制限するか？ という思考が働きます。

「カードは取られたくないからこのターン使っておこう・・・あ、あの人の裏庭にいるカード、キーカードっぽくね？　自分はいらないけど勧誘しておけば邪魔できるんじゃね？」などなど、自分の盤面だけでなく相手の盤面も気にして展開していきます。

「あー、この子は持っていってほしくない！ だが今は出さざるを得ない・・・頼む、どこにも行かないで―！」の図

フレーバーとしては、一緒に遊んであげなかったお友達はスネて裏庭に行ってしまい、他のお友達グループに勧誘されてそっちに行ってしまう、みたいな感じ。

デッキ構築系の中ではインタラクション強いほうなのかなと思います。
３人以上でやった時に、２人が１人の裏庭からカードを勧誘しまくるなどの集中攻撃みたいなのも一応可能。１位っぽい人をみんなで寄ってたかって・・・という状況が発生すると、あまり気持ち良くないプレイになってしまいそうですね。
プレイにおいては、子どものような無慈悲さはわきに置き、大人の分別を働かせましょう・・・。

・拡大再生産ではなく、デッキ最適化→最高効率VP獲得

フォートの肝は、デッキ構築のシステムにあります。

この独特なシステムは、「デッキ管理」・・・「デッキ最適化」・・・？
うーん、どんな用語がふさわしいんでしょうか？

デッキ構築系ゲームには、多くの場合デッキパワーをインフレさせて いく「拡大再生産」システムが同居していますすが、フォートは趣が異なります。
効率的にVPを集めるためにデッキの中身を「最適化」させていくプレイ感となっています。

「強いお友達」を集めるんじゃなく「相性の良いお友達」を集めるイメージかな。

フォートは基本的にパワーに優劣はなく、カード獲得にコストがかからないというデザインになっています。同じスートをそろえるとシナジーが発生しますが、あとはケースバイケースで強さが変動します。

↑ただし、最初に配られる「親友」2枚(☆が付いているカード)は、ややパワー低め

デッキ構築の定番「ドミニオン」の銅貨＝1金、銀貨＝3金、金貨＝6金のように、明確な上位互換カードが存在しません。

「最初は弱いカード群でスタートし、強いカードを買い揃えることでどんどんアクションが強くなっていく」というのがデッキ構築系の特徴ですが、この点においてフォートは異色のデッキ構築系ゲームと言えます。

インフレでパワーアップ～コンボで気持ちい～という感覚は少ないです。
むしろ、結構タイトな戦い方を強いられます。

「子どもの気ままさ」を意識するポイント（誉め言葉）

・「裏庭勧誘」ルール（上記に挙げました）
「その子、さっきまでウチにいた子なんだけど」「さっきから行ったり来たりしてるよね笑」的な会話が発生します。子どもってそんな感じよね・・・。

・初期手札はほぼランダム
デッキ構築系は「全員同じカードからスタート」がスタンダードですが、フォートは違います。
「親友」と呼ばれる2枚のカード以外は、お友達の山から8枚ランダムに配られます。これもすっごく気まま。「行ってみなきゃどんな子がいるかわからない」保育園みを感じます。

↑てんでばらばらに集まってくる子どもたち

とっもだっち ひゃっくにん でっきるっかな♪

・毎回勧誘しなければいけない

「もうデッキ完成してるんですけど・・・」といった状態からも、必ず1枚勧誘しなければならない。あるいは勧誘されてキーカードがいなくなり、デッキが回らなくなる。デッキ管理が難しい（面白い）。

お友達はいつでも気ままに生きてる。

コンポーネント・アートワーク

大　変　す　ば　ら　し　い

アートワーク最強です！
子どもたちの個性豊かなイラスト。

これを手に取りたい一心で、買いました。
期待を裏切らないポップなデザインに、愛しさがとまりません。

そしてコンポーネントもすばらすぃ！

個人ボードはダブルレイヤーで、トークンをはめ込めるようになっておりボドゲの立体感を存分に楽しめます。
箱が大きくなく値段もそこまで高くないのですが、コンポーネント・アートワーク含めるとかなり満足感高いです。

まとめ

個人的にはかなり気に入りました！　面白い。

勝ち筋も色々ありそう。
運要素はあまりありませんが、テーマである子どもの特徴、「自分の思った通りにならない」感をシステムでうまく表現できていると思います。
デッキ構築の部類ですが、構築を完璧にコントロールできない。その中で、効率的なVP獲得のためのデッキの形を模索していく。デッキ構築系が好きな方はそこを許容できれば、味変デッキ構築としても楽しいと思います。

逆に「プラン通りに物事を進めて勝つ」というゲームが好きな方は、インタラクションも強めで、コンボや勝ち筋を邪魔されやすいので、 ストレスを感じるかも？
あと、拡大再生産でコンボやインフレを楽しみたい！　といういわゆる「ザ・デッキ構築」ゲームを楽しみたい方にはおすすめしません。

私は「運やランダム性をいかにコントロールして勝ちに持っていけるか？」というゲームが大好きなので、面白く感じました。

初回でわかりやすい楽しさではないかも？　何回もやると、やるべきことが分かってきて・・・という味が出てくるタイプな気がします。

というより、まあなにしろフレーバーとデザインが楽しい。
コンポーネントもしっかりしてる。

ボドゲの立体感！立体感！

カードメインのゲームも楽しいが、やっぱりボドゲなら立体感大事！

小さな子どもの視線の高さをうまく世界観に落とし込んでいる良いゲームです。
かなり気に入ったので、マイフェイバリット入りです。

拡張について

海外では「犬猫拡張」という小箱拡張が販売されてるみたいです。和訳されていないのですが、内容を見る限り、ぜひ加えてやってみたい！　あとかわいい！

フォート拡張「犬と猫」