ファーショアハナさんのレビュー

海のエバーデール。最近流行りの「人気作の亜種」系ゲームです。ルールは省略して、エバーデールとの比較を中心にレビューします。

【テーマ、コンポーネント】

エバーデールの派生ゲームだけあって、コンポーネントは最高です。テーマである海の雰囲気がアートやトークン類まで至るところから感じられます。解放的な空気感がとても良いですね。それでいて一目でエバーデールの世界と分かるのは素晴らしいところ。カードに魚介類が増えたせいでエバーデールより少し可愛くない気がするのはやむなし。

【ゲーム性】

ゲーム性はエバーデールの調整版。基本で批判が多かった点を調整し、拡張で得た好評な点を導入した感じです。ルール自体はほぼそのままですが、わりとプレイ感は別物でした。

まずはカードの調整。全体的にマイルドでクセがない感じになってます。

・強かった「クレーン」「歴史家」「裁判所」等はちゃんと弱体化

・「旦那&夫人」「牧師」のような組み合わせ前提で、単体で弱いカードは削除

・「道化師」「牢獄」のようなやや特殊なカード、攻撃カードも削除

効果が分かりやすく当たり外れも少ないですが、やや均質すぎて個人的にはちょっと面白味に欠ける気がしますね。

ファーショアの大きな追加要素の地図と船からも、カードパワーやコンボ重視からプレイング重視にシフトする流れを感じます。地図、船、どちらもカードの性能ではなくタイプ(色、建物か動物か、一般か特殊か)を参照する得点要素で、それぞれが街そのものの得点に匹敵するくらい配点が大きいです。タイミングよく適切なタイプのカードをプレイすれば加点になり、カードの性能自体は問わないので、どんなに能力が噛み合わなそうなカードでも使う動機が生まれます。カードを厳選して街15枠を最大化するのが焦点だったエバーデールと違い、ファーショアは街、地図、船の3つの大きな得点要素から手札や展開次第でどこで稼ぐか選択できる、運に左右されにくい戦略的ゲームになった感じがします。

また、プレイ感がシビアになったと思います。エバーデールより高コストカードが増えたのにリソースは入手しにくくなり、リンクも3回限定。ワーカーは1体減少した上、追加要素の地図に一定数ワーカーを使用しなければいけないので、思った以上に動けません。リソースやワーカーがシビアになった一方でカードは引きやすくなったので、ここでも運要素を緩和してます。徹底してますね。ちなみに、配置場所が減少した影響で目的地カードの地位は向上してます。他人に使われるオープンも削除され、出したらちゃんと自分で使えるようになりました。

エバーデールとファーショア、未プレイの人にまずどちらを薦めるかは微妙なところ。ファーショアはルールが多少増えて重くなっていますが、エバーデールほどカードにクセがなく、カードリストを把握しなくてもある程度遊べるメリットがあります。エバーデールは組み合わせ前提のカードがあるためカード性能を単体で評価しにくく、全カードリストをある程度把握しないと勝負にならない、という参入障壁が大きな弱点だったので、そこは改善してます。

個人的には、それでもエバーデールがオススメですね。エバーデールの方がゲームの焦点が街に集中していて分かりやすいですし、カードゲーム的な楽しさを感じやすい気がします。

【まとめ】

エバーデールはカード運がよく非難されましたが、カードの強弱があるからこそ生まれるドラマ、緊張、興奮があったと思います。カードの残数をカウントして「このカードが引ければ！」と祈りながら郵便局を起動する瞬間。広場にクレーンが飛び出して他のプレイヤーの石トークンを確認する瞬間。冬に宿屋の主人→王妃→裁判所と目眩がするほどブン回った瞬間、、、。それを面白いと取るか運ゲーと取るか。私は何を引いてもあまり差を感じないファーショアより、一喜一憂のドラマがあるエバーデール派です。コンボを回す爽快感や、上振れた時の高揚感はカード系ゲームの醍醐味。それがエバーデールにはあってファーショアには足りなかったと感じました。もちろんエバーデールには、まったく噛み合わなかったり、相手がミラクルな展開をした時のイライラや失望もありますが、、、

一方ファーショアには、引きに左右されずプレイングである程度立ち回れる玄人好みの良さ、取れる戦略の幅と新たな駆け引き軸があり、こちらが好き、エバーデールの上位互換、と感じる人もいると思います。

あとは好みの問題。世界観やコンポーネントは最高なので、エバーデールとファーショア、両方試すのをオススメします。私個人的にはエバーデール>ファーショアでしたが、ファーショアも単独で見たら非常にやり甲斐がある良いゲームだと思います！

※ちなみにソロはファーショアの方が面白いと思います。そこは加点。