- 1人~2人
- 60分~120分
- 13歳~
- 2014年~
アルルの丘下村ケイさんのレビュー
【評価:8.0/10】箱庭×自由度=「アルルの丘」豊かな村で、やりたいことはなんでもやろう
ワーカー数は5人で固定。お互い全てのワーカーを置いたら1ラウンド終了。
9ラウンド終了時、勝利点が高いプレイヤーの勝ちです。
●感想
〇やれることてんこもり。俺はいま何アクションの気分なんだ?
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最初は戸惑うと思います。なにせ選べるアクションが大量にありますし、それぞれのアクションが少しずつ相互に関連していたりするので、いささか呆然とするといいますか。ただ、その戸惑いや呆然は決して不快なものではなく、むしろ嬉しい悩みと言いますか。ワクワクを伴う戸惑いなんですよね。
なぜか。
多分、総合的に見てマイナスになる行動があまりないからだと思います。アグリコラだと「手番数 is 正義」なところがあり、そのためにはまず部屋を増築しないといけないよね→部屋を増築したら貴重な一手番を使って子供をつくらないといけないよね→飯ノルマ増えるよね……と言うしんどさがあります。
(無論、そのしんどさが楽しさにつながり、うまくいったときの達成感にもつながる。と言う点は今更語るまでもないと思いますが)
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対するアルルの丘は、最初からワーカーが5人揃っていますし、何手か打ったらすぐに分かると思うのですが飯ノルマもそこまできつくない。加えて「野菜or家畜が一匹もいない? ほなそこ減点ね」と言うマイナス点数の条件もアグリコラと比較すると結構ゆるいです。(敢えてこの単語を使いますが)ストレスとなり得る負の要素がいろいろな場所からがっつりと排除されているのです。
つまり、なにをやってもいいんだと。
何やってもそこそこ点数あげるから、自由にやってごらんと。
そういうスタンスな気がするんですよね、アルルの丘は。
だから、目の前に広がる大量のアクションに対して
「何をすれば失点を回避できるんだ、、?キリキリ」
ではなく
「何をしちゃおうかな、、ワクワク」
と思うことができる。
そしてひとたび全体像が見えてきたら、
「次はこのアクションとこのアクションを組み合わせてみよう」
と前向きに戦略を思い描くことができる。
居並び、絡み合う選択肢の中から、自分だけの最適解を組み立てられる。
無論、慣れないうちは手探りだし、うまくいかないこともあるでしょう。
でも、いやだからこそうまくいったときの嬉しさみたいなものは大きいですし、個人ボード含め分かりやすく賑やか且つ豊かになるので楽しいのです
〇言うなればクラシックなワカプレ
早取りで駒を置いて、駒が置かれた場所は占有される。
ゲームの構造自体はとてもシンプルなワカプレです。
ただ、アグリコラほどキリキリしないタイプのワカプレです。
アグリコラとの比較ばかりで恐縮ですが、アグリコラと比較すると単純に配置できるアクションスペースの数が多い上に、仮に「やりたいアクションを取られた!」となっても、飯を支払うことで占有されているアクションスペースを発動できる「模倣」が存在します。加えてアグリコラよりも取り得る戦略の幅が広いため、あなたと相手が今回のゲームでとろうと思っている方向性がかぶらなかった場合、そこまでシビアな場所の奪い合いはあまり起こりません。
なお、起こらないとは言っていない。
例えば荷車を作るために必要な「馬」や、様々な建物のコストとしていの一番に挙げられる「木材」なんかはどんな方向性で農場を発展させるにせよ必ず必要になってくるものなので、いくら棲み分けができているからといって悠長に構えすぎていると肝心なタイミングを逃したりします。そして、ボドゲにおいて雌雄を決するのはタイミングの差だったりもします。
シビアじゃないけど、要所要所でシビアなワカプレ。
メリハリあって良いです。
〇荷車を起点に深まる戦略性と広がる豊かさ
先ほど増員は不要と書きました。増員が必須なことによって生じ得るストレスがアルルの丘では排除されているとも書きました。
ただ、増員による楽しさがない訳ではもちろんありません。
うまくいくかどうか分からないからこそ、緊張感が発生する。ボドゲにおける緊張感はゲームを盛り上げる良いスパイスになるし、大変だからこそ、うまくいったときの達成感もまたひとしおなのです。
ではアルルの丘にそういった要素が全くないのかと言うとそうでもなく、
散々言及してきた「荷車」が実質的な「増員」に相当します。と勝手に思っています。荷車が作れないと木材や粘土の加工も滞り、それによって建物も満足に建てられなくなる。まとまった食料を集めることもできないため、ともすると飯供給のために手番やリソースを割かねばいかなくなり、そこそこ手間のかかる立ち回りを求められる。
と言う訳で、荷車が擬似的な増員のポジションなのだと私は思っています。
ただ、アグリコラが「1人の増員」に「1手番と5木材と2葦」をほぼ一意的に要求するのに対し、アルルの丘では「大きな荷車を作るのか、小さい荷車を作るのか」、「それに伴って馬をどう確保するのか(繁殖する基盤を整えてから馬を使うか、それともスピードを優先するか)」など、ある程度の選択の幅が存在します。
(木材の集め方も
①木材を獲得するための道具である斧を改良して一度にたくさん得られるようにするのか。いやでも道具の改良に手番を先過ぎてもよいのか。そもそも道具の改良にも木材が必要だ、、
②ラウンド終了時に一枚につき木材1個を湧かせる「森」を積極的に配置するのか。いやでもそれだと木材が集まるのに時間がかかってしまう。しかし「森」は単体で勝利点にもなる、、
など、幅が広いからこその悩ましさがあります)
故に、擬似的な増員に相当する「荷車の作成」に臨む戦略にも多少の自由度があり、これがまた先述した「慣れるまで良い意味で呆然とする感じ」の演出に一役買っています。そして慣れてきたら慣れてきたで、自分がやりたい戦略にどういう形で「荷車作成のための手順を盛り込むか」を楽しく悩むことができます。
●誰がこのゲームを好むだろう
多分、このゲームが特別嫌い、と言う人は存在しないんじゃないだろうか。
いや、変に断言するとそれはそれで失礼になりそうなのですが、それくらい「楽しい」と思わせる要素がたっぷりとちりばめられ、尚且つ自然に溶け込んでいます。
・多様な戦略が取り得る
・適度に悩ましいインタラクションが存在する
・拡大再生産により少しずつリソースが加速していく
・リソースマネジメントの物量が膨大なので延々とこねこねを楽しめる
などなど。楽しいがたくさんです。
特に、重量級ボドゲに手を出してみたばかりの人なんかは、その特筆すべき物量やそれらを束ねるバランスの良さなど、更なる沼へ引きずり込むための要素はバッチリそろっているので、そういう人にはぜひおすすめしてみたい。ボドゲの世界ってすげぇ、と思わせてくれることだろう。
強いて言うなら、アグリコラのあのシビアな感じ——刺すか刺されるかのインタラクションやコンマ数ミリで転落を切り抜けることでしか生のよろこびを実感できないような生粋のゲーマーには、アルルの気候は少しばかり温和に過ぎるかもしれません。
●レビューチェックリスト
1:深さ/複雑さ
「意思決定において、どれほどの困難≒楽しさが伴うか」
4.5点。膨大なアクションが存在し、相互に関連しあっているため次の一手を考えるのが大変=楽しい。そしてバランスの偏りがあまりないため、裏を返すと優柔不断に陥る可能性もあるが、そういう中から自分の一手を選び決めていく楽しさはとても秀逸。慣れていったらいったで、効率的な行動の組み合わせを考える楽しさがある。
2:メカニズム
「ゲームの設計はどれほど美しいか」
4点。ワカプレ部分は特に斬新という訳ではない。しっかり優等生タイプ。だが、荷車という要素がとても好き。製品の出荷でも資源の加工でも一度荷車に積む、と言うプロセスが挟まる。そして資源が手元に戻るのはラウンド終了後というのがまた良くて、これによって本当に「出荷している」感が楽しめるし、すぐに手に入る訳ではないので計画的な資源の運用を求められる。また「馬をどのタイミングで消費して荷車にするか」「いかにして相手に先んじて荷車を作るか」という駆け引きも良き。いたずらに奇をてらうことなく、さりとてしっかり面白い。
3:相互作用
「他プレイヤーとの絡みの量、質」
3.5点。強過ぎる訳でもなく、かといって弱過ぎる訳でもなく。どんなボドゲを比較対象に持ち出すかで印象が変わるとは思うが、良く言えば模範的なワカプレ。時折刺すような奪い合いが楽しめるが、詰まるところ場所を取り合っているだけ、という言い方もできる。彼我の盤面を見比べながらじわじわと競るようなインタラクションが好みなら、きっと気に入る。
4:オリジナリティ
「戦略、メカニズム、テーマはどれほど新鮮でユニークか」
3.5点。全体的に「このゲームでなければ」という要素が目立ち、そして多いタイプのゲームではない気がする。だが、その神髄は「膨大な物量」と「良質なバランス」にあり、それらが高い次元で何の違和感もなく混ざり合うことで「このゲームならではの魅力」を醸成しているのも事実。
5:ムード
「テーマやアートワークはボドゲ体験をどれほど彩るか」
4.5点。豊かなアルルの丘で、思い思いに農場を発展させる。アートワークは他のウヴェ作品の例に漏れず秀逸だし、何よりシステムの上で「思い思いに発展させる」と言う部分を遺憾なく発揮している。点数に天井がない都合上、その気になればいくらでも賑やかになる家畜駒や、イラストつきの建物タイル、納屋に並ぶ機材と美しい色合いの布タイルなど。決して煌びやかではないが、どこか春先の麗らかな日を思わせる優しくも楽しげなムードに満ちている。ウヴェの農場系ボドゲが特に好みならムードは満点と感じるだろう。
●主観的点数:4.0点(5点満点)
〇その理由
病気をしてからしばらく遠ざかっていたボドゲと言う趣味に、もう一度がっつりハマらせてくれるキッカケになったボドゲ。う~ん、主観的。でも好き。やっぱり好き。ボドゲという遊びが持つ本質的な豊かさと、どこまでも追いかけたくなるような奥深さをもう一度ハッキリと思い出させるキッカケとしてアルルの丘はこの上なく良いゲームだった。
●評価点の算出方法
チェックリストの平均点+主観的点数
👉4.0点+4.0点=8.0点
●総評
しっかり個性はあるけど、しっかり優等生タイプのボードゲーム。
ボドゲよっては、ある層からは猛烈に好かれるけどそうじゃない層からは少しだけ合わないみたいなタイプのものがあるけど、アルルの丘はその優等生的な性質からきっと万人に好かれるだけのポテンシャルを持っていると思う。加えて、同作者の恐らく最も有名な代表作であるアグリコラと比べると「苦手意識」を持つキッカケになり得るような要素もほとんどない。その物量に圧倒されることはあれど、自分のやりたいことを自由に模索できる楽しさはとても素晴らしいものがあるので、ボドゲに慣れた方に限らず、ちょっと重めのボドゲを試してみたいと言う人にも是非プレイしてもらいたい一作。
僕みたいに友達が少ない人には気にならないかもだけど、最大2人と言うプレイ人数(拡張を入れると3人まで対応する)がネックになるケースもあるとは思う。だが、例えば親友と、或いは恋人や家族と二人きり、休日の昼下がりか。さもなくば家の仕事を終えた夜にしっぽりと豊かなアルルの牧歌的な空気を楽しむ、なんて遊び方はこの上なく贅沢だと思う。
●サイズ感
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縦幅60cm × 横幅120cm のテーブルを使用しています。
我が家のテーブルは若干だけ細長い形なので、個人ボードがほんの少しだけはみでていますが、互い違いに置けばそこまで縦幅はとりません。
横幅に関しては120センチでちょっと余るくらいですかね。
ただ、拡張を導入した場合もしかしたら60cm × 120cm でかなりぎりぎりになるかもしれません。(拡張込みのレビューはいつか書く予定です)
ルールの概説やその他の詳細は以下にて
- 611興味あり
- 470経験あり
- 172お気に入り
- 462持ってる
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