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  • 1人~4人
  • 60分~120分
  • 12歳~
  • 2022年~

インプレッション山本 右近さんのレビュー

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約1時間前

impressionとは「中へ押し込む」という言葉が変化したものだと言われている。型を使って何らかの痕を残す、あるいは何かを刻み込む。

つまり現在「印象」という意味で使われるのは、こういった物理的な刻印のメタファーが心理的な意味に転用されたものだと言うことができる。

本作は活版印刷の歴史がテーマとなっているが、印刷において「impression」は重要な意味を持つ単語である。本来の物理的な意味においてももちろんだが、活字の「圧」によってその文字から読み手が受ける印象も変化しうるという、この単語の持つ物語そのものを表現する技術とも言えるからだ。

しかし、この印象的なタイトルとは裏腹に、本作からわたしが受ける印象はどこか少しふわふわしている。作者からのメッセージ、というか、印圧がイマイチ伝わってこないのだ。

プレイヤーはまず、アクションタイルがランダムに4×4のグリッドに配置された「街ボード」上でワーカーを決められた歩数動かし、その場所のアクションを行う。これはアクション選択をある程度制限する仕組みではあるが、実際には制限に困ることはあまりない。また、手番順が早いほど歩数が多くなるため選択肢が増え有利になるが、それでもスタートプレイヤーを狙う動機付けにするには少し弱い。それに、手番順で移動歩数が変わるというのもテーマ性という視点から見た時に合理的な説明がなく、頭の上にクエスチョンマークが浮かんでくる。

そして、目標タイルのスロットのアンロック。目標タイルは手番が後ろの方が価格は上がるが先に買える点が有利だ。それは良いのだが、タイルの効果を有効にするにはアンロックされたスロットに配置しなければならず、それには文字タイルを写植ボード上の決められた位置に配置にしておかなければならない。

これは何を意図しているのだろう?

文字タイルを横一列に埋めると勝利点がもらえるのだが、素直に横一列に嵌めさせず、ちょっとしたジレンマを生み出すためと言われれば確かにそうだ。だが、写植をどこに行うかにより得られるボーナスが異なるし、ボードにマッチした文字を写植しないとそのボーナスは得られない。また、それらの内容はゲーム開始時に受け取る写植ボードによって全て異なっている。

つまりそのジレンマを生み出す機能はわざわざ別途用意せずとも既に備わっているのだ。

しかも、写植する文字の並びによって目標タイルのスロットが解放されるわけだが、その並びにも作者の明確な意図が感じられず、何となくこの形にしたのでは、というような印象を受けてしまう。この部分のルールの説明も意外にわかりづらく面倒で、必要な要素とは感じられなかった。

テトリスのブロックのようなアイコン表記も、ただゲームの無機質なパズル性をプレイヤーに印象づけてしまっているようで、あまり良い感じはしない。

個人ボードのテックツリーはどうか?このあみだくじのような連鎖のラインも、ボードごとに変化があるようで実際には似たり寄ったりに感じられる。ラインの引かれ方は少し複雑なように見えるが、そう見えることによるデザイン上のメリットも感じられず、この部分においても作者からの明確な意思を受け取ることがまだできていない。

ここまではどちらかと言うと否定的な面を書いてきたが、本作がつまらないかと問われれば決してそういうわけではない。

テックツリー、前述の通り見た目は不器用に見える。しかしプレイしてみると、工場を配置すると永続能力が得られるがその分連鎖する即時効果の技術を置く場所が埋まってしまうという、永続能力か即時効果の連鎖か、はたまた勝利点かという選択の妙。それに技術タイルの裏返し配置という、複雑化させすぎず選択肢を増やしてくれるトリッキーなルールもある。裏返しに配置すると、そこに配置する技術レベルを落とすことができ、これにより通常の配置だと連鎖が起きないレベル4タイルの置き場に連鎖が起きるレベル3タイルの配置が可能になるなどの戦術も使え、プレイヤーの腕をふるうことができる点が楽しかった。

旅は永続能力を得られる工場の建設が魅力だが、同時に次の手番や注文獲得のコスト、手番順を調整することができる。また、このアクションは先手番にも後手番にも旨みがある。街に置かれたディスクは早取りで先手番が有利だが、手番順トラックを進めることに関しては後手番がかなり得をする仕組みになっていて、そこをどう評価するかという楽しみがある。フリーアクションができる街ディスクは毎回ランダム配置で、それらの配置によってどのルートで旅をするか考えるのも、ありきたりではあるが悪くない要素だろう。

そして結局のところ、写植アクションが最も重要なアクションであることは「活版印刷がテーマの戦略ゲーム」として、ちょっとした納得感があった。かといって活字の入手も気軽にできるものではなく、写植アクションを安っぽく連打すればいいというわけではないので、ゲームの大枠としてはそれなりに考えられている印象を受けた。

ゲームは実際に3回ほどプレイしたが、結局のところ「様々な得点要素にいかに満遍なく効率よくアクセスするか」というゲームに感じた。

フェザータッチのような柔らかなインタラクションに、やりごたえのあるパズル。それは確かに楽しめるしゲームとして纏まっている。だが、旅をしたり、街を走り回って仕事を依頼するという盤上の駒の動きがあるにもかかわらず、そこから物語や住人の息遣いは感じられず、俯瞰した自分がただただ良さそうなコンボを探していた。ゲーム中の時代が進んでも、それを感じられる仕掛けが無かった。

面白い点は少なからずあるが、没入感は高くなく、奇妙に思える部分がそれなりにある割には概ね無機質な効率追求ゲームで、際立った個性、強いインプレッションは感じない。パズル性を強調するようなグラフィックデザインも、このゲームからテーマ性を少し奪っているように思えた。

かつて活版印刷は最小限の圧で紙に痕が残らない「キス・インプレッション」が良いとされていた。しかし20世紀に入ると紙にエンボスが残るほどの「ディープ・インプレッション」が手作り感を生み出し、ある種のステータスとして好まれるようになったという。

プレイした時のことを振り返って考える。本作はどちらを目指したものなのだろう。特徴的な部分は少し空回りしていて、既視感のある部分は面白くまとまっているように見えた。

もしかしたら、キス・インプレッションの時代の腕利きの職人が、意図したほどのディープさを出しきれなかった結果なのかもしれない。

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山本 右近
山本 右近
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