- 2人用
- 120分~180分
- 1981年~
砂漠の狐Bluebearさんのレビュー
40年も前から展開されてきた国産ウォーゲームの巨頭《エポック社》&《レックカンパニー》の一大シリーズ《ワールド・ウォーゲーム・シリーズ》の3作目です。
このシリーズは、現代においても再販を繰り返すくらいの見事な完成度を誇り、精密路線のツクダホビーと共に日本のシミュレーションウォーゲーム界の隆盛に多大な貢献を果たしました。
当時の私は、輸入品のアバロンヒル社、SPI社のウォーゲームの洗礼を受け、完全に首までハマった状態でしたが、そこにいきなり登場した純国産の展開に小躍りして喜んだものでした。(ほとんどの輸入版が安くても5800円~6800円という価格帯だったところに、国産メーカーから3500円~3800円だったので、一気に手を出しやすくなりました。)
それまでの日本の、運任せのファミリーゲームと一線を画し、現実を再現したリアルなルール、歴史を背景とした重厚な設定など、大人同士の本格的な《対戦》に耐えうる新しい遊戯としての魅力に溢れていたのです。
当時の店頭で、同じシリーズの《バルジ大作戦》と今作を見比べ、どちらを購入すべきか、真剣に思い悩んだ末に、パッケージイラストがカッコいいという単純な理由で今作を購入しました。(結局、翌月にはバルジも購入するわけですが…笑)
今作は、1941年の北アフリカ戦線におけるトブルク救出を目標としたイギリス軍の《クルセイダー作戦》を描きます。ドイツ・イタリアの枢軸軍を担当するプレイヤーは、あの有名な《砂漠の狐》こと、知将ロンメル将軍となってアフリカ軍団を指揮します。
対するイギリス軍は、中東軍総司令官オーキンレック将軍となって、イギリス第8軍を指揮します。
ゲームボードにはリビア、エジプト国境付近が描かれ、1ヘクスは約3km、1ターンは1日を表します。
広大なアフリカの砂漠は遮蔽物が少なく、戦車部隊の足を生かして刻々と戦線が変化する激しい《機動戦》となります。
これを再現するために、相手の位置が完全には分からない《ダミー方式》を導入し、相手がどこから来るのか?を推察し作戦を読み、こちらの戦力はどの方面に振り分けるのか?を悩み、互いに死力を尽くして戦います。
トブルクに残されたイギリスの守備隊の運命は?
不慣れなイギリス軍の集積基地は大丈夫なのか?
強力なドイツアフリカ軍団と《ロンメル》コマはどこに居るのか?
勝利条件も、◯◯を占領すれば勝ち、と言ったシンプルなものではなく、トブルク要塞などの重要拠点の確保によるポイントだけでなく、ドイツ軍を東から突破させてしまえば、イギリス軍はアレキサンドリアを押さえられ敗北してしまいます。対して西側からイギリス軍が突破すれば、ベンガジ港を押さえられドイツの補給は壊滅し敗北となります。
このおかげで、油断の許さないギリギリの対決が堪能できます。
このようにゲーム性もたっぷりの今作は、私の大好きな1作です。
今回は、長年の友人と対戦。私の癖を見抜いた彼は、私のダミーを見事に看破し、あえなく我がイギリス軍は敗北しました。
【補足】
ようやくこのゲームにも再評価の流れが来て、2021年4月に『コマンドマガジン158号』に、グラフィックを美しく、ルールをさらに明確化させた新版として再販されました。これでまた少しでも多くの人にプレイされるようになるのは嬉しいですね。
【余談】
最近は、初心者&女性陣とのプレイが多く、運やノリ中心の軽めのゲームがほとんどだったため(これはこれで悪くないのですが)、本来が重量級での真剣勝負が好みの私としては、ちょっと不完全燃焼気味で、このところ昔のウォーゲームを掘り出しました。
本格的なシミュレーションウォーゲームは、序盤〜中盤〜終盤戦とそれぞれ流れがあり、それなりの長時間に意味があること。(まさに大河ドラマや長編映画のような重厚な味わい深さだと思っています。)
また、勝敗も単なる勝ち負けではなく、そこには歴史背景的に意味があり、負けるにしても《どんな流れで負けたのか》《どこまで善戦できたのか》《歴史にはどう影響したのか》など、感想が尽きません。決して、負ける=不服ではないのです。(往々にして、見事に負けた戦いの方が深く印象に残っていたりするものです。)
これは、最近のアナログゲームに薄れてきた要素ではないかと思っています。(軽いルール、短いプレイ時間、絡みの少ないソロ風味、が多すぎるように感じるのは私だけ?振り返ってみた時に1ゲームあたりの印象が希薄なんですよね。もうそんな時代なのでしょうかねぇ…。)
でも、だからこそウォーゲームはやめられん♪
- 16興味あり
- 34経験あり
- 9お気に入り
- 31持ってる
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