グランドオーストリアホテル：レッツ・ワルツ！（拡張）clevertrickさんのレビュー

最初にお断りしておくと、あまり好意的ではない内容を含んでいますので、あらかじめご承知おきください。

また、個々の細かいルール説明は省いております。

本拡張の目玉と思われる【ウィーンのダンスホール】モジュールの評価は、このゲームに求めているものによって変わるのではないかと感じています。

空き部屋がない時や、適切な色の部屋を準備できなかった時に、客をダンスホールに送って勝利点や資金、料理等を獲得し、ゲームを先に進めることができるという話を聞いた時は「お、いいじゃない」と思いました。

しかし、実際に得られたものは「ダンスホールにも客を送った結果、あまり部屋が埋まらず中途半端なホテル」 と「数人の客が送られた中途半端なダンスホール」でした。その様はまるで寂れた観光地のホテルのようです (苦笑)
ホテル運営はあくまで得点の一手段に過ぎず、様々な方法で勝利点を獲得して競争できればいいという人には問題ないかもしれないですが、私はこれだったらホテル運営に集中したいなと感じてしまいました。 

基本セットをプレイ済みの方ならご存知のとおり、このゲームでは皇帝の不興を買うとペナルティがあるので、ホテル運営だけでなく皇帝対策にもそれなりのリソースを割かなければいけませんが、本モジュールが加わることで更に「ダンスホールに客を送らなかったペナルティ」 も加わるため、選択肢が増えたというよりは「ホテル運営の邪魔をする要素が増えてしまった」 という感覚のほうが強いです。客をダンスホールに送るためのリソースであるシャンパンの獲得コストが高めなことも相まって、トータルではダウナー系の調整になってしまっているように感じます。

これでダンスホール自体に盛り上がるゲーム性があるならまだ救われるのですが、ホールによる違いは多少あれど、やっていることはシンプルな椅子取りゲーム（一部ボーナス付き）にすぎないので、個人的にはあまり楽しい要素ではなかったです。

と、いきなりまぁまぁ強めのディスから入ってしまいましたが、もちろん良いところもありますよ。
たとえば【スタートプレイヤー】モジュール。

１ラウンド２手番で変則的な折り返し制だった手番順が、シンプルに１人１手番ずつ順繰りに２周回す方式に変わり、更にスタートプレイヤーを取るアクションが追加されるというものです。この変更を嫌だと感じる方はおそらく少ないのではないかと思います。

ただこれって、「拡張か？」と言われると心情的には結構微妙なところもあるんですよね。
コンポーネントもこのルールが書かれたタイルが１枚と、スタートプレイヤートークンの追加、あとはダイスを置くミニタイルが差し替えられただけなので、ぶっちゃけコンポーネントがなくても対応可能な「ルール変更」 の色合いが強いです。

一度導入したらそれ以降はおそらく必須級になるであろう変更点ではありますが、ではこれのために拡張を買うか？と言われれば正直そういう感想は持ちにくいです。

軌道修正しようとした結果、またディスみたいになってしまいましたが、気を取り直して。
ダイスの一部を３色のカラーダイスに差し替えることで、１ラウンド限りの特殊効果を持った有名人を招くことができる【名士】モジュールについて。

名士を招くには基本的にコストがかかりますが、ペナルティなどは無いので純粋に選択肢の追加であり、また挙動として「手番のアクションを消費しない」フリーアクションタイプのものなので、使った方が良い状況であれば追加で使うし、そうでなければ無視しても構わない類のものです。

上手くハマった時はプレイが加速しますが、ご存知のとおり１ラウンド２手番しかないのに、招いた名士の効果はそのラウンド中しか発動しませんから、コストも考えると戦略的に取りに行く場面は結構限られますね。わずかながら勝利点にもなるので、コストがかからない or 低い状況ならば貰っておくか、ぐらいの付き合い方の時も多いかと思います。でもまぁこれに関してはあまり名士が暴れまくるとバランスが崩れると思うので、このぐらいの影響度がちょうど良いのかなとも思います。

プレイヤーごとにスタート時点の所有物が変わったり、個別の能力が付与される【個性的なホテル】モジュールは割と好きな方向性で、個人的にはあると嬉しいモジュールかなと思いますね。

全部で9枚とバリエーションも豊富で、それぞれがなかなかクセが強めで味変としても機能しますし、初動の指針になりそうな能力も多いです。基本的にはプレイを加速させる方向に働くアッパー系の調整になるので、楽しさアップに寄与するモジュールだと思います。

とまぁ、純粋なカード追加である【もう少しいかがですか？】モジュール以外の４つについて軽く触れてみました。

やっぱり今のこのモヤモヤとした感情は、メインである【ウィーンのダンスホール】モジュールが個人的にまったくピンと来なかったことに起因しているんだろうなと、改めて考えてみても思います。

その他のモジュールも、それぞれあって困るものではないですが、マストというほどのものでもないかなぁと。
基本セットだけでも十分に素晴らしいゲームなので、本拡張がなかったとしても個人的には特に問題はないです。
（【スタートプレイヤー】のルール変更だけは、基本セットのみのプレイでも採用してしまうと思いますが）

そもそもこのゲームって、フリーアクションがあるとはいえ、7ラウンド14手番しかないので、やれることが結構限られてくるんですよね。基本セットの時点で既に、やりたいこと全部には到底手を回せない「手番カツカツ」系だと思っています。そこに手番を奪い合う要素を追加で投入すれば、当然の帰結として手を回せる領域は更に分散し、個々の要素が薄まってしまうというのが今のところの感想です。

モジュール追加系の拡張なので、「好きなモジュールだけ入れて遊べばいい」と言われればそれまでですが。

繰り返しになりますが、ホテル運営をメインに据えたい人間の感想です。
最終的に出来上がったホテルを眺めて「今回はいい感じに埋められたな」とか言いたい人間の感想です。

方法は何であれ、コンボをガンガン決めて、勝利点を得て楽しめればいい。
その結果、ホテルが多少スカスカだろうが別に気にならないという方は、違う評価も出てこようかと思います。

そもそも上手いプレイヤーはコンボを駆使してダンスホールもホテルも同時並行で埋めていくのかもしれませんが、私はそこまで到達できそうな感触を今のところ得られていないので、このような感想になってしまいました。
（もし今後違う感想を持つようになったら、その時は訂正したいと思います）

平凡なプレイヤーの一感想として捉えていただければと思います。