- 2人~8人
- 30分~60分
- 10歳~
- 2016年~
あやつり人形:新版karamiさんのレビュー
オールドゲームならではのハードなゲーム性
「あやつり人形」は2000年初出の名作カードゲーム。
本項で紹介されている製品は数回の拡張・再販を経て2016年に発売された、いわゆる「全部入り」の製品である。
基本のシステムはドラフトと若干の拡大再生産、正体隠匿。
ラウンドはドラフトから始まる。1組のカードセットを用い、スタートプレイヤーから順に1枚ピックする。ドラフトを行う役職カードには1~8の番号が振られている。ドラフト終了後、昇順に役職カードを公開し、プレイヤーごとに手番を行う。
手番の中では収入獲得(金or建物カード)、役職カードごとのアクション、建物カードのプレイが可能。全員の手番が終わったら役職カードを回収しラウンド終了となる。前のラウンドで役職カードの4番が出ていれば、次のラウンドから役職カードの4番を出したプレイヤーがドラフトのスタートプレイヤーとなる。
役職カードの1,2番は妨害能力を持っているが、能力はプレイヤーを対象として指定するのではなく、その時点ではまだ公開されていない老番の役職カード名を指定する。この部分に正体隠匿の要素も含む。
1人のプレイヤーが7枚目の建物カードを場に出したら、そのラウンドでゲームは終了、点数計算を行う。
ドラフトは1組のカードセットから1枚抜いたものを全員で回すという形式になっているため、離れた対戦相手がピックしたカードの予測は極めて複雑で一筋縄ではいかない。故に読みが的中した時の喜びは大きい。
一方で、手札の内容以外のリソースは全て公開されているため、上記のドラフトも合わせるとかなり多くの手がかりが提供されている。自分の都合に任せて最大効率の手を打ち続けるプレイヤーの足元をすくう事は極めて容易で、それでいて実に気持ちが良い。
そして自分の手を読ませないための非効率な一手は、どこまで読まれているのか、また最大効率で動くプレイヤーに速度で負けるのではないか、といった疑心暗鬼の中で指される。卓上から自分の存在感を消して進み、小目標にたどり着いて漏らす安堵のため息もまた格別だ。
つまるところ本作の醍醐味は「誰がどの職業カードを取ったのか」という読み合いに集約されているのだが、一点読みは困難ではあるものの、ヒントは山の様に提供されており不可能ではない、というバランス感覚が名作たる所以ではないだろうか。
旧版基本セットとの比較になるが、役職カードを入れ替えることによってゲームにバリエーションが出せる。特に、金を払うだけで他人の建物を破壊できる「将軍」を外してプレイできることは大きい。いかに「将軍」がプレイ感を重くしていたのかがよく分かる。
「暗殺者」「盗賊」も代替となるカードが追加され、直接的過ぎる妨害効果が緩和された。受け側の努力で妨害を回避出来たり、妨害失敗時にリスクを負わせることが出来るようになっている。
一方で、適当に入れ替えてしまうと建物と職業の強力なコンボが生まれ、ゲームバランスが破綻することもある。基本的にはマニュアルに記載のある組み合わせで入れ替えることを推奨する。
間違いなく名作だが、現代的な感覚で見ると難点も多い。
1組のカードセットを全員で1枚ずつドラフトするというシステムから、ダウンタイムが長引く傾向が強い。6~7人でプレイすると2時間以上掛かることもある。役職カードや建物カードの引きによっては数ターンに渡ってロクに動けないこともある為、 ダウンタイムはより長く感じられる。
関連して、将軍がコストの安い建物を大した代償も払わずに破壊し続ける展開は気が滅入る。この重苦しいプレイ感は陰鬱な世界観にはマッチしているのだが…。
妨害を受けた時のダメージが深刻で、1ゲームで2回、暗殺者(指名された場合そのターン行動不可)や盗賊(指名された場合手番開始時に金を全て奪われる)などの致命的な妨害を受けると、逆転が難しい程の差がつく。救済措置と呼べるものは存在しない。
このため「何となく」の一手や、感情的なプレイで場の熱が冷めやすい。 現代においては「不出来」と評価されかねないハードなゲーム性から、ボードゲーム熟練者向けのゲームと言わざるを得ない。
プレイ人数も2~8人とはあるが、最低でも5人ぐらいでないと本作の妙味は味わえない。4人以下ならば別のゲームを遊んだ方が良いだろう。そういった意味でも敷居の高いゲームではある。繰り返しになるが、面白さは折り紙付きの名作。腕前を信用できる対戦相手を4人以上集められるのであれば、現代のゲームでは中々見ることのできない、湿度の高い読みあいを楽しめるだろう。
余談ではあるが、この新版と旧版のレビューの差が興味深い。
古いレビューでは総じて好評だが、時が下るにつれて 「干渉要素が強すぎる」等のネガティブな意見が増え、総合すると賛否両論に見えてくる。
古いレビューから順番に読んでいくのも面白いかもしれない。
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