ソクラテスラ～キメラティック偉人バトル～krmさんのレビュー

プレイヤーに何も求めない大喜利系ゲーム

歴史上の偉人の名前・肖像を3分割したカードを組み合わせ、オリジナルのキメラ偉人(というよりは偉人のコラージュ)を作るゲーム。コラージュされた偉人の肖像には、学生時代に国語や社会の教科書に施した落書きの様な味わいがある。

一応カードに書かれた数値を使って勝敗を決めるルールは存在するが、カードの数値の合計をぶつけ合うだけで、特筆する様なルールでもない。多くの場合はゲーム進行上便宜的に勝敗を決めるだけで、専ら生み出された偉人の名前やその下に書かれたエピソードの面白さを競うことになる。

結果的に大喜利系に属するゲームだが、7枚しか手札が無い中で3種類のカードをそれぞれ1枚ずつ出す必要がある為、プレイの選択肢は極めて少なく、そもそもカードが揃わずゲームに参加できないケースも度々発生する。カードが揃っていた場合にカードをプレイしないことも認められない為、良いカードをキープしておくことも難しい。
(これらは普通の数値をぶつけ合うゲームとして遊ぼうとした時にも障壁となる)

このゲームの笑いのパターンは大きく分けて4種だ。
・「～ザウルス」「ポーランドを消滅させた」等、言葉の強さで押し切る
・何度も同じオチを繰り返し使う(いわゆる天丼)
・下ネタに走る
・名前に「リン」「ニュ」等の脱力系の響きがある言葉を混ぜる

どれもカードの組み合わせで笑いを生み出すというよりは、カード単体に書かれた言葉で笑うだけのデザインだ。

例えば、偉人の来歴で「ポーランドを消滅させた」よりも面白いオチを付けられるだろうか。SNS等で「ソクラテスラ」で検索して出てくるキメラ偉人達の来歴は、オチでポーランドを消滅させた方が面白くならないか。
もし納得がいかなければ「自分が一番好きな左腕カード」に置き換えてもらっても良い。
これは来歴において、右腕・胴体の記載内容との組み合わせが面白さに寄与することが稀であることを示している。

カードゲームとして面白ければ、もしくは童心に帰って数値のぶつけ合いを楽しむことが出来れば、真剣勝負の中で偶然生み出されたキメラ偉人の名前やエピソードで笑うことが出来るのかもしれない。しかしそれをさせるにはカードゲームとして見るべきところが無い上、サブシステムであるはずの大喜利の誘引力が強すぎる。

プレイ感は、古臭い例えになるが、一生バカパクだけで押し込まれるボキャブラ天国だった。本作で出来ることは、何の機転も、教養も想像力も必要とされない、無限の猿定理から半歩だけ抜け出した大喜利。カードを並べた光景がSNS映えするだけの侘しいゲームだ。 

仮に本作を面白いと感じるならば、おそらく箸が転げても面白いだろう。
その場合必要なのは本作ではなく、雑談の為のお茶とお菓子、もしくは転がす為のお箸のどちらかだ。