- 3人~6人
- 30分前後
- 8歳~
- 2021年~
ステラ:ディクシットユニバースkaramiさんのレビュー
付きまとうディクシットの幻影・もしくはディクシットへの糸口
「ステラ:ディクシットユニバース」は、場に出されたカードとお題を比較し、お題に沿っていると思われるカードを選ぶという、連想ゲーム風の作品である。
「ディクシットユニバース」と銘打たれている通り、デザイン・ゲーム内容共に名作「ディクシット」の流れを汲むものとなっている。カードの規格も同一で相互に流用が可能。少しお高い代わりにサブゲームがついてくる拡張キット、という見方もできなくはない。
大まかなルールは以下の通り。
- 場に15枚のカードと1つのお題が出される。
- お題に合致すると思われるカードを秘密裏に選択する。選択したカードは個人ボードに記録する。
- 何枚のカードを選択したかを宣言する。一番多くのカードを選択したプレイヤーは、手順4での得点獲得にペナルティが発生する。
- スタートプレイヤーは、選択したカードの内1枚を発表する。他プレイヤーは、発表されたカードを自分が選択していたかどうか宣言する。
4-1.2人以上選択していた場合、選択した全員が2点を獲得する。
4-2.1人だけ選択していた場合、3点を獲得する。
4-3.発表したプレイヤー以外に誰も選択していなかった場合、得点を得られない。発表したプレイヤーは、以後このラウンドが終わるまで、得点を得ることができない。更に、手順3で一番多くのカードを選択していたプレイヤーは、手順4-1、4-2で獲得した得点がそれぞれ1点、2点に減点される。 - 手順4に戻り、左隣のプレイヤーが自分が選択したカードを発表する。このラウンドで既に発表されたカードは選択できない。
- 以下の条件を満たすまで、この手順を繰り返す。
6-1.全員が手順4-3の条件を満たす
6-2.手順4-3の条件を満たしていないプレイヤー全員が、選択したカードを全て発表・宣言した - 場のカードの内5枚を入れ替え、新しいお題を発表し、次のラウンドを行う。
- 合計4ラウンド行い、合計得点が一番高い人が勝利。
これは「ディクシット」を成人6~10名程度で幾度となく楽しんだ(そしてまあまあ毒された)ファンの感想として読んで頂きたい。
実際に遊んでみると「ディクシット」のような創造性、俗な言い回しをするならば「エモさ」はほぼ無い。
一つに、お題を自ら創造できた「ディクシット」と比べると、先に提示されたお題ありきのゲームとなってしまい、場にあるカードがお題と合致しているかどうかを査定するだけのプレイに陥りやすい。
もう一つ「回答が他プレイヤーと一致した場合に得点を得られる」「誰とも一致しなかった場合にペナルティ」というシステム上、どうしても他プレイヤーと協調せざるを得ず、無難な選択に終始しがちになる。
カードの選択にプレイヤー間のギャップが生まれないと、どうしても地味で淡々としたゲームになってしまうし、連想ゲームなのに自分の直感・第一印象とは異なるプレイを強いられるというのは幾ばくかのストレスを感じる。
また多くのカードを選択することにやや強いペナルティが課せられており、ハイローラー的な立ち回りが不利なことも地味な展開を助長する。(プレイ人数が多ければこの傾向は緩和される。5人以上でのプレイを推奨。)
遊びやすくはあるのだが、物足りない。
「ディクシット」を分かりやすい、よりボードゲーム的なシステムに落とし込むにあたって、持ち味は殺され、代償として得たゲーム性は作業めいたファミリーゲームに留まっている。
いや、対象年齢が8歳以上であることを考えれば、本来は適正なデザインと言えるかもしれない。自分はこのゲームを遊ぶには年齢を重ねすぎているのだろう。ただ、その一言で両断してしまうには「ディクシット」が名作過ぎた。更に言えば、そもそも「ディクシット」の対象年齢8歳以上という記述は明らかに誤りである。
本作は、とてもファミリーゲームとは言えない遊びになった「ディクシット」を、ファミリーゲームの領域に引き戻したとも言える。ゲームの進行は非常に軽快でプレイ時間も短い。せっかく買った「ディクシット」を持て余す様なコミュニティに属しているのであれば、カードを本作の拡張として利用することもできる。将来的に「ディクシット」のプレイに辿り着くための一助となるかもしれない。
ここでは掲載しないが、カードデザインもキャラクター・オブジェクトをはっきりと描いたものがほとんどで、ダーク・アンビエントな雰囲気のカードや、抽象的なモチーフを描いたカードは見当たらない。これも、おそらくは低年齢層でもプレイしやすいようにという配慮からくるものではないだろうか。
本来「ステラ」という単体のゲームへのレビューとして「ディクシット」の影を追い過ぎてはならない。しかし作品が自ら「ディクシットユニバース」と謳っている以上、どうあっても比較は免れない。そんな中でなんともゲームゲームした作品がお出しされたことに、複雑な思いがある。
完全に余談だが、このレビューにはこの段落の手前までで「ディクシット」という言葉が16回登場する。過去の名作の名前を冠するというのは、そういうことである。
私の個人ブログにて、数枚の画像付きのレビューと、得点計算例付きのルール解説を掲載しております。
レビュー:http://mirroruniverse.blog17.fc2.com/blog-entry-472.html
ルール :http://mirroruniverse.blog17.fc2.com/blog-entry-471.html
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