トリニダッド山本 右近さんのレビュー

ブエノスアイレスの成り立ちをテーマにした作品。ワーカープレイスメントの形を取ってはいるものの、排他的なアクションは殆ど無く実質的にはアクションポイント制と言って差し支えない。

コンポーネント品質はとても良く感じるが、UIデザインに関してはプレイアビリティが低く、お世辞にも良いとは言い難い。まずアクションスペースの文字が小さく何のアクションなのかが非常に見辛い。建物フィギュアの出来は良いが、塗装はされていないためどれがどの建物かがわかりにくい。ただでさえ長時間かかるので、プレイヤーにとっては疲れるゲームになりそうだ。

基本的にはマップに建物を建てていくリソースマネジメントのゲームだ。しかし一度に多くのリソースを獲得できることは殆どなく、1アクションごとの効果が例を見ないほど渋い。そしてカードを集めることにより強力なアクションが可能になりゲームを有利に進めることができるが、カードに対しラウンド毎に少なくない賃金の支払いが課せられるし、お金というリソースの入手もかなり難しい。

このゲームは単に街づくりをするだけではない。ある意味侵略がテーマのゲームとあって、戦闘も発生する。戦う相手は海賊と原住民だ。プレイヤーのアクションやリソースの取り方によって彼らとの関係が悪化していき、緊張が一定以上になると戦闘が発生する。この戦闘はプレイヤー毎に行われ、結果によって最大70以上のVPを失う可能性もある。この戦闘のタイミングは故意に誘発することも可能で、常に緊張感がある点が非常に面白い。

また、ラウンド毎に1回だけいずれかのプレイヤーが法案を提出することができる点も特徴的だ。この法案が可決されると全体に影響がもたらされる。この投票においてはプレイヤー同士の交渉が可能で、ルール上交渉内容を守らなければならなくなる「血の契約トークン」の使用もゲーム中1度だけ可能となっている。この要素はプレイ時間をかなり伸ばしてしまうが、プレイ体験としては面白い。

更に上級ルールとなるとメインアクションを行いながら同時にミニマップで兵士を移動させながら戦闘を行うため、1日がかりのゲームとなるだろう。

酷いUI、6時間近くかかる長いプレイ時間、交渉要素とかなりのレベルで人を選ぶゲームだし、ゲーム内容も終始苦しく地味なゲームだ。人にも勧めづらいが個人的にはリプレイしてみたいゲームのひとつだ。