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  • 2人~6人
  • 120分前後
  • 12歳~
  • 1989年~

でっかい馬鈴薯toribirdibonさんのレビュー

262名
4名
0
約1年前

でっかい馬鈴薯。

こんなにインパクトのあるゲーム名はなかなかない。「馬鈴薯」なんて単語は普段使わないのに、それに「でっかい(訳によってはでっけぇ)」をつけてしまった。

もはや声に出して読みたい日本語である。


そんなインパクトのある今作だが、中身は骨太の経済ゲームだ。


ジャガイモを育てて売る。ただそれだけのことがどれだけ厳しい世界なのか。それを感じさせてくれる、いわば追体験ボードゲームである。


まず、みんなで終了年数(ラウンド数)を決めていいというのがすごい。初心者なら4年でいいかもしれないけど、楽しみたいなら6年はやれ。みたいなことがルールブックに書いてある。

しかも協議の結果、年数を増やしてもいいとされている。


強い。


最近のゲームにはないおおざっぱさ。そして、何より「ゲームはプレイヤーが遊びたいように遊ぶのだ」というメッセージ性を感じる。


その割に1年を12月で分けたとか言いながら、全然季節感が合わない。単純に12フェイズでラウンドが構成されているだけである。


強い。


畑にはミミズがいなければ良い土壌にならないし、肥料や農薬を撒くと畑の環境は一気に下がる。でも、肥料や農薬がなければ、安定してジャガイモは育たない。

シンプルでいて、リアル。12か月の適当さと比べると、圧倒的にリアルだ。ルールが現実と矛盾していないため、非常に直観的に内容を把握できる。


一度走り始めると、ゲームにググっと入っていけるのだ。


そして、何をするのにも金がかかるところも農家の苦労さを感じさせる。ミミズを堆肥で育てるためにも金がいるし、耕すのにも、種芋を買うのにも収穫して売るのにも金がいる。


とにかく金がいるのだ。


それなのに、収入は基本的にジャガイモを売った収益だけ。

圧倒的リアルな流れだ。


金を支払う先はたくさんあるが、得るのは1つだけ。プレイヤーはとにかくジャガイモを売ることに全神経を集中させる。一応、ミミズを増やして売ってもいいが、金額は微々たるものだ。

だから、芋を売る。


ところがそれも他のプレイヤーが同じ品種を売ってしまうと需要に対して供給が過多になってしまって価格が下がる。


種芋の購入も、販売計画も秘密裏に行われて一斉に公開されるため、どのジャガイモを仕入れて育てるかは他のプレイヤーとの兼ね合いを見なければいけない。


ライバル農家同士のバチバチ感がよく出ている。


とにかく金がいるため、借金をしながらでもジャガイモを作り、その収益で借金を返す。


おどろくほど1年の収支がトントンだ。かなりきつい。


しかもイベントによってはなけなしの金が吹き飛んだりする。


自然と社会の厳しさをひしひしと感じる骨太の一作だ。


だが、面白い。


何かを作って売るということが、こんなに面白いのか。と感じさせる一作だ。


当然、こんなゲームの世界にいる消費者は現実には存在しない。しかし、プレイしていると消費者の顔が想像できてくる。そして売れた時には、本当に商品が消費者に届いたかのような嬉しさがある。


システムとしては非常に厳しい。拡大再生産?ほぼしないぞ。みたいなゲームだ。

でも、その厳しい波を上手く乗り切っていくと、少しずつ拡大していく。

社会と自然に抗い続け、無い知恵を絞って良質なジャガイモを作ろうと努力していると、ほんの少しの利益として返ってくる。


それが、何より嬉しいのだ。


時間は4年で2時間ほど。それでも同時に行うことが多いため、時間に対して濃密なプレイ体験ができると思う。


このレビューではほぼ経済面の話しかしていないが、実はこのゲーム、環境に配慮した畑を作っていると、そこでも点数をもらえる。経済面で何位になったか、そして環境面で何位になったかによって勝利点がもらえて、その合計で競うのがこのゲームの特徴だ。


しかし、経済面の方が1位の点数が高いため、やっぱりしっかりジャガイモを売った人が勝つシステムになっている。


この感じも絶妙でいい。金を得た人が単純に勝つのではなく、金を得つつ、ちゃんと環境面も頑張った人が勝つのだ。


なかなか手に入らないゲームだが、古き良き重ゲーというのはこういうものか、と感じさせる。


名前だけで有名なのかと思っていたが、しっかりと楽しいゲームだった。


まさに、名作である。

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カシスオレンジとスクリュードライバー♂
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