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ミラクリアMyraclia

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  • ミラクリアの画像

行動範囲が広がる度に、わたしは胸が高鳴るのを感じる。これは多分、わたしだけの感覚ではないだろう。

一人で電車にも乗れなかった頃、親に連れられて数駅先の百貨店に行くことすら、まるで異国の地に向かうような大冒険だった。降り立った駅で見慣れない風景を眺めながら「この道はどこに通じているのだろう」と思いを馳せたものだ。

ミラクリアは未知の惑星への移住計画をテーマにしたボードゲームである。この手のテーマのゲームはテラフォーミング・マーズに代表されるようにありふれているが、人類未到の地への冒険というテーマの創作はいつの時代も人気が高い。それは、広い世界に慣れてしまった大人が忘れかけている、幼い日に感じた胸の高鳴りとは無縁ではないのかもしれない。

このようなテーマのゲームは重量級が多いイメージがあるが、本作はルールは難しくなく、プレイ時間は1時間程度。取り回しのしやすい中量級に分類される作品である。

本作のゲームの流れは、まずラウンド開始時にドラフトフェイズで資源をドラフトにより入手し、次のテラフォーミングフェイズでそれを使用して惑星を開拓するという手順だ。それを1ラウンドとし、ゲーム終了条件が満たされるまで繰り返す。

これだけ聞くとオーソドックスなリソース管理ゲームに見えるが、独自性を出そうという意欲が細かい部分に垣間見える。

ドラフトはあまり見たことがないヘンテコな方式で、詳細は割愛するが、この結果により次の手番順までが決まることになる。手番順ごとにメリットデメリットがあり、資源の獲得と手番順を同時に考えるのは悩ましい。

次にテラフォーミングフェイズ。

プレイヤーが開拓を進める度にマップが広がっていくという方式が取られている。基本的には誰かがテラフォーミングしたタイルに隣接したタイルのみテラフォーミングが可能となる。

プレイヤーのアクセスできる世界は、広がっていくとはいえあくまでも限定されているのだ。

新天地の覇権を争うとはいえ、テラフォーミングは共同作業でもある。

そのようなテーマに意味を持たせるかのように、テラフォーミングしたヘックスタイルに隣接したタイルの所有者は勝利点を得られるという連鎖ボーナスがあり、タイル配置にも多くの考えどころがあるように作られていて面白い。

独自性で言えば、手番を終えた他のプレイヤーが余らせたリソースを自分のものと交換可能という点もかなり独特だが、このフェイズで最も独自性を感じるのは、リソースが次のラウンドに持ち越しできないという点だろう。複数捨ててワイルドカードに変換することもできるが、変換効率はめちゃくちゃ悪く、あくまで非常手段と言える。

ドラフトでは得られた限られた数のリソースしか持てないため、ゲーム序盤は1ラウンド中複数回のテラフォーミングがなかなか難しい。事実上、行動範囲に制限が大きく課せられているのに等しいのだ。

それがゲーム中、収入付きの土地をテラフォーミングすることにより、使える資源の数が増えていく。そして1ラウンドでテラフォーミングできる回数も増していき、まるで子供の頃初めて自転車に乗れた時のように、プレイヤーがアクセスできる世界の広がりが加速していくのだ。

また、勝利点を得ると、それを消費することにより「テラフォーミングするタイルの予約」を行うことができる。これは事実上の資源持ち越しであり、これもプレイヤーの世界を広げてくれるはずだ。

本作はスロバキアのルディ・プリエチンスキ氏がゲームデザインとアートの両方を手掛けている。キックスターター発のゲームではあるが、事実上ひとりで制作しているような作品であり、豪華さとは無縁でインディーズ感が強く出ている作品だ。

クラウドファンディングではどうしても豪華な限定仕様のゲームに目がいきがちだが、このような個人制作に近いゲームも実は少なくない。

本作は色使いは色覚弱者に優しくないし、アート面ではクセが強く視認性がイマイチに感じる点もある。しかしそれを凌駕する味があるし、何より「自分のゲームを世界の人々に届けよう」と思い立って、行動に移す勇気には尊敬の念を抱かずにいられない。そのおかげで我々はゲームを楽しむことができているのだ。多くのリスクもあるだろうし、少し大袈裟に言えばコロンブスの船出のような、それほどの思い切りが必要だったのかもしれない。

だが、その行動にはそれに勝る胸の高鳴りがあったに違いないし、それが人間の行動力の源泉になっているのだろう。

そう考えると、ドラクエ2で船を手に入れた時のあの気持ちをまだ忘れずにいる限り、まだ何かできるんじゃないかと思わずにはいられない。

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  1. 投稿者:山本 右近
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テーマ/フレーバー
作品データ
タイトルミラクリア
原題・英題表記Myraclia
参加人数2人~5人
プレイ時間45分~55分
対象年齢10歳から
発売時期2020年~
参考価格未登録
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行動範囲が広がる度に、わたしは胸が高鳴るのを感じる。これは多分、わたしだけの感覚ではないだろう。一人で電車にも乗れなかった頃、親に連れられて数駅先の百貨店に行くことすら、まるで異国の地に向かうような大冒険だった。降り立った駅で見慣れない風景を眺めながら「この道はどこに通じて...
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山本 右近
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