- 1人~4人
- 60分~90分
- 12歳~
- 2020年~
西フランク王国の子爵maroさんのレビュー
日本語版も発売された西フランク王国3部作の3作目。
今回も、相変わらず不思議なプレイ感が印象に残る作品となっている。
まずベースとなっているのはロンデルであり、ワーカー代わりといえる子爵が時計回りに移動していく。ただ一般的なロンデルゲームと異なるのは、行えるアクションの種類とその強度は自分の場にプレイされたカードによって決定されることである。
それでは子爵の位置は何なのかいうと、各アクションの内容に関わる。つまり、各スペースごとに設定されている、どのようなリソース変換(獲得)ができるか、どのようなカードが雇用できるか、写本が手に入れられるか・・・などに影響してくる。
ということで、デッキ構築がもう1つのキモである。プレイされたカードによりロンデルの歩数、採れるアクションのほか、リソース・借金/権利書・美徳/汚職など各種ボーナスが与えられ、この選択が大きなウェイトを占める。ただし、一般的なデッキビルドゲームと比べるとカード獲得の選択肢が狭く、1枚1枚の重みが強いように思える。
アクションは交易(リソース獲得)、建築(テラミスティカのようなボーナス開放)、労働者配置(城のエリアマジョリティ)、写本獲得の4種類と意外にシンプルである。ただ、先に述べたカード、ロンデル、リソース消費によるアクション強化などいろんな要素が絡み合っており考えるのが楽しい。
勝利点獲得法も建築、写本、城のマジョリティ、権利書、と、アクションとうまく対応していて、余計な煩雑さからは開放されている。ただこれも写本のセットコレクションや、権利書と借金カードのバランスなど細かい工夫があり、悩みどころはしっかり残されている。
今回はプレイヤー間のインタラクションは全体的にやや弱めであるが、城まわりのエリアマジョリティはかなり直接的な押出しが採用されている。
聖騎士と同様、特化が有効な得点形態でありながら、簡単には特化できないような仕組みが印象的であった。聖騎士ではワーカープレースの循環構造により特定アクションの連続を阻んでいたが、今作ではロンデルによる同一リソース獲得の制限(子爵の移動は強制のため同じマスにとどまって同じリソースを獲得することができない)と、デッキビルドによるアクションの制限の組み合わせにより偏りを排除している。
近年、デッキビルドとワーカープレースメントの融合型で評判の高いゲームがでてきているが、この西フランク王国の子爵もそれらと充分比肩しうる出来栄えである。この3部作全体としてみても、一貫したテーマをもちつつ、異なるメカニクスでこの世界を表現しておりとても興味深い。
苦言を吐くとすれば、デッキビルド部分。デッキ構築がひとつのウリであるゲームであるが、ものにできるカードが少ないため、他のデッキビルド、たとえばドミニオンやクランクのようにどんどん買って、バリバリ使って、不要なものを破棄する、という感覚とはかなり異なる。状況によっては入手性がランダムに左右されると感じないこともない。自由なデッキ構築、というよりはハンドマネジメントの側面の方を強く感じてしまうのは私だけだろうか。
また、終了フラグが借金・権利書カードの枯渇というものであるが、意図的に制御可能であるめ、特に2人プレイ時には終盤ややだれることがあった(デウスを思い出させる)。また2人プレイでは、強力な得点要素の1つである城のマジョリティが消化不良気味でもある。
shem氏の作品は聖騎士、建築家、北海がすべてBGGの100位以内にランクインしており、子爵も間違いなく入ってくるだろう。どこまで順位を伸ばせるか楽しみである。
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