ファーム・ウィズ・ブラウニーズぜろけーさんのレビュー

小箱から広がるバチバチの買い占め合戦。

【概要】

手札と場札をトレードして手札の価値を高めていく、わらしべ長者的なゲームです。

それぞれのカードは「素材としての価値」と「貨幣としての価値」という二つの側面を持っており、３通りの方法でトレードできます：

1. 生産 … 素材にあたるカードを、加工品にあたるカードに交換する（例：石[１] → 石材[３]）※ [] は貨幣価値
2. 購入 … １枚を獲得するために、等価になるように手札を支払う（例：麦[１]＋麦[１]＋木[１] → 石材[３]）
3. 売却 … １枚を支払って、等価になるように場札を獲得する（例：石材[３] → 綿[１]＋麦[１]＋石[１]）

獲得できるカードの中でも特に「建物カード」は「勝利点」を持っており、先に１０勝利点を集めたプレーヤーが勝利になります。

原則、トレードを１回行うとターンは終了になりますが、一部の建物カードを使うと追加行動ができます（たとえば「石切場[６]」を持っているプレーヤーは、通常のトレードに加えて「石[１] → 石材[３]」のトレードを行えます）。

【良いところ：小箱でしっかり戦略ゲーを楽しめる】

カードのみで遊べ、絵柄も可愛らしいので一見ほのぼのしたゲームに見えますが、バチバチの取り合いが発生します。

購入・売却では価値の総量が変わらないので、手札の価値を高めていくためには生産が必須です。しかし生産には「手札に素材、場に加工品」が揃っている必要があるので、「相手の欲しがりそうな素材や加工品を先に買い占めてしまう」のが有力な戦術になってきます。特に建物による追加アクションは野放しにすると大変なことになるので、一層買い占めが有効になります。

これによって、「お互いに相手の勝ち筋をブロックしながら、隙を見て上手に勝利点を稼いでいく」ようなシビアな展開になりやすいです。

ブロック戦術が強力な分、膠着状態を防ぐ「購入・売却」アクションが導入されているのも良いバランスです。必要なリソースがブロックされていてもカネで解決できたり、あるいは手持ちのリソースをいったん売却して別のプランを目指したりといったことが柔軟にできます。

【良いところ：なぜか接戦になる不思議なゲームバランス】

１〜２点の建物をコツコツ建てていくプランを取っても、大量得点の狙える高い建物で一発逆転を狙うプランを取っても、相手の戦略を徹底的にブロックしても、不思議なことに終盤には１ターンを争う接戦になることがほとんどです。「序盤でリードを稼いだプレーヤーに誰も太刀打ちできず、そのまま独走」のような盛り上がりに欠けるゲームは意外と発生しません。相当よく考えられているのだと思います。

【惜しいところ：（特に序盤の）ゲームテンポの遅さ】

相手の狙いや自分の勝ち筋が見えてくるのが主に中盤以降になるので、序盤のテンポはあまり良くないと思います。特に初めてのプレーヤーがいると、序盤は「ようわからんし適当に並んでるもの買うか」といった雰囲気になりがちで若干グダります（それでも中〜終盤にはバチバチの取り合いを楽しんでくれますが）。

また基本ブロック合戦になるので、「建物を買えば買うほどみるみる自国（自牧場…？）の生産力が上がっていく」ような、拡大生産の爽快感には期待しない方が良いです。むしろ「こちらが強力な建物を買うと、相手はその追加アクションを妨害するために必要なリソースを買い占める」といった展開になることが多いです。

いかに自分の勝ち筋を通しにいくかの睨み合いが楽しいゲームなので、自分のプランをのびのびプレイしたいという人には向かないかもしれないです。