フィンスパンR（アール）さんのレビュー

魚たちが泳ぐ縦型ボードとスムーズなプレイ感が魅力の「フィンスパン（Finspan）」

■ 筆者の基本スタイル

• 重ゲーが好き
• 論理的に考える要素が好き
• 運要素とプレイ時間のバランスを重視
• ダウンタイムの少なさを重視\

■ プレイ環境

• 5人プレイ
• 全員初回プレイ
• スパン系プレイ済み

■ Good

• 『ウイングスパン』よりルールがシンプル化され、初心者でも遊びやすい
• 既存の“span”シリーズから適度に差別化されていて独自性がある
• カードと卵のリソースだけに絞った設計が分かりやすく、好みに合う
• 垂直方向に広がるボードと全体を使っていく展開が新鮮
• デッキの掘り返しや若魚の移動など空間的な要素が程よいスパイスになる
• ミドル級のゲームとして複数のメカニクス（リソース管理、タブロー構築）をうまく融合している
  　 →ルールがシンプルな分、タブロー構築がしやすい
• 初手用のカードがあり運の要素が緩和されている
• 全プレイヤーへ利益がある効果が自分が最大化できるタイミングで使えると快感を得られる

■ More

• ゲームボードが縦に大きく、プレイには広いスペースが必要
• 運要素が強く、戦略性を求めるプレイヤーには物足りない場合がある
  　 →初手カードがあるもののその中でも差がある
• 『ウイングスパン』と比較してコンボ要素が少なく、物足りなさを感じることがある
• 各ラウンドの得点目標にバリエーションが少なく、繰り返しプレイすると単調に感じる可能性がある
• プレイヤー間のインタラクションが非常に少なく、マルチソロ感が強い
• 配置条件の帯やアイコンが小さく判別しづらい、色の判別が難しいケースがある
• 魚群の移動に関するルールが少し分かりにくい
• 全体としてシリーズの中で最も簡易であり、ゲーマーにとっては物足りなさが目立つ

■ 感想

『フィンスパン（Finspan）』を初めて遊んだ時に真っ先に目を引いたのは、やはりそのアートワークとテーマ性でした。海の中を思わせる縦長のプレイボードは新鮮で、全体の雰囲気づくりにしっかり貢献しています。魚のカードも美しく、見ているだけでも楽しいです。

ルールは全体的にシンプルで、初回プレイにもかかわらずスムーズに進行できました。若魚を移動させて群れを形成したり、縦横の座標制限に気を配ったりと、ちょっとした工夫が必要な場面も多く、思考のバランスがちょうどいい印象です。エンジン構築がテンポ良く進みやすい設計になっていて、プレイ感も軽快でした。

ただ、ゲーマー視点で見ると物足りなさも感じました。引いたカードに大きく左右される展開も多く、戦略を組み立てるというよりは、引きに応じて最善手を模索するようなプレイ感です。初期手札用のカードがあり、少しは緩和されているもののドラフトやX枚引いてN枚捨てるなど緩和するルールだと嬉しかった。

他スパンシリーズと同じように、他プレイヤーとの絡みが少なく、良くも悪くも「個人で黙々と組み立てる系」のゲームでした。ルールもシンプル化しているので、同時プレイした後に他プレイヤーへ影響がある効果を順番に処理するなどラウンド構成にも手を入れてほしかった。

気になる点はあるものの、このテーマでこの遊びやすさ、価格帯を考えれば、かなり満足度の高い一本だと思います。ボードゲームを始めたばかりの人にも薦めやすいですし、何よりテーマに惹かれて手に取る価値は十分にあると感じました。気軽に手に取りやすい“中量級エンジンビルド”として、今後も遊んでいきたいと思います。