- 3人~6人
- 60分~120分
- 12歳~
- 2022年~
開廷!脳内裁判Yamashnikov [JP]さんのレビュー
とある銀行強盗犯の裁判を舞台にした、正体隠匿系のゲームです。
完全な対戦ゲームではなく、そしてまた完全な協力ゲームでもない、プレイヤー同士はそれぞれ妙な関係性で自らの勝利目標の達成を目指す、そんなクセのある作品です。
投稿時点では、4人で2回プレイしました。
一言でお伝えするならば、【変なゲーム】です。いえ、決して悪い意味ではなく…
裁判を舞台としていますが、その実、ストーリーもシステムもフレーバーテキストもシリアスではありません。
プレイヤーの1人は検察官となり、銀行強盗犯であるガイなる男を有罪にしようとします。検察官のプレイヤーはゲームの進行役となるため正体を明かします。その他のプレイヤーはそのガイの脳内に存在するペルソナ(人格)となり、その正体を隠してそれぞれのペルソナが求める判決(勝利条件)へと導こうとします。そう、コメディなどでしばしば目にする、【財布を拾ったとき、頭の中の天使と悪魔が「警察に持って行け」「いや、もうお前のもんだ、持ち帰れ」と言い争いをする】アレです。例えば、【身勝手】のペルソナは無罪判決が勝利条件となり、【誠実】のペルソナは判決が有罪となれば勝利、と言った具合です(厳密にはもう少し要素が加わります) 。これにより、複数のプレイヤーが勝利することもあります。
判決については法廷内に数名存在する陪審員の多数決を採ることとなります。彼らは完全なるNPCで、検察官プレイヤーとペルソナプレイヤーのプレイ内容に応じて各々の心証を変え、最終的な判決を下すことになります。各プレイヤーは如何にしてこの陪審員の心証を望む判決の方へ導くのかを目指すことになります。
審理は全8ラウンドから成り、検察官はラウンド毎にガイを尋問しますが、ガイの脳内はいくつかの領域に分かれており、その尋問に対応が可能な脳内領域を支配する1つのペルソナのみ、回答(プレイ)権を持ちます。例えば、発言を促す尋問には【発話】の領域を支配したペルソナ、行動を促す尋問では【運動神経】を支配したペルソナ、と言った感じです。では、どうやってガイの脳内の領域をコントロールするのか、それは各ペルソナが持つ数字の書かれた支配マーカー(チップ)を、他の誰よりも多く領域内に留めておくことです。つまり、それは至ってシンプルなエリアマジョリティを採用していると言うことです。ただ、このゲームが変なゲームたる理由は、このエリアマジョリティの競い方にあります。
ガイの脳は、メインボードに置く小さな台のようなものの上に乗せられ、少し高い位置にあります。ここに、ゲームセンターの定番であるメダルゲームの要領で、自らの望む領域に自らの支配マーカーを押し込んでいくことになります。当然、他のプレイヤーの手順で押し出されて落下すれば支配権を失います。その逆もまた然りです。ね、変なシステムでしょう。
めでたくそのラウンドの回答権を得たペルソナは、検察官から提示される選択肢の中から、より自らの望む判決の側に陪審員の心証が傾くよう、それらしいものを選ぶことになります。
かくして、毎ラウンド検察官は尋問を行い、ペルソナは自らの求める判決に導くべく回答権を得るためにエリアマジョリティを競い、そしてその勝者が回答し、陪審員の心証を操作してゆく、そんなゲームです。
先述の通り舞台は裁判ですが全然シリアスではなく、日本語版のタイトルも相俟って非常にカジュアルな、敢えて言うならばフザけたゲームです。
判決を左右する裁判カードの選択肢は決して多くはありませんし、英語のノリを日本語訳したものもあるため、時に思った通りの結果を得られないこともあります。自虐的な皮肉やジョークを言って陪審員を笑わせたのか、その陪審員の心証は無罪に傾く、なんて、日本人の感覚とズレた流れになることも…
繰り返し遊び続ければその選択肢の結果も覚えてしまい、他のプレイヤーのペルソナを推測するのも容易になるかと思います。尤も、自分だけが勝つと言うゲーム性でもないので、「たぶん、あいつは同じ判決を望んでいるな」と思えるペルソナ同士で緩やかな協力をしよう、程度の軽い気持ちで遊ばれるのが良いのかな、と考えています。
基本ルールに従い、2回とも4人プレイ用のペルソナ4種を回して遊んだのですが、2回目のプレイではそもそものペルソナの種類が限られていたために他プレイヤーの正体の推察が容易で、早めに目的とする判決結果を同じくするペルソナを持つプレイヤーとの共闘体制を取れてしまい手応えがありませんでした。ペルソナ自体は、複雑な勝利条件を持つものが10種類強あるので、次回はそれらを混ぜて遊んでみたいと思います。
有罪にしたい側と無罪にしたい側が露骨に衝突するようなゲームではなく、また正体を暴いてどうこうしようというゲームでもないので、どんな方が求めているのか、ハマるのか少々想像しづらい、そう言った点でも変なゲームです。何でか嫌いじゃないんですが。名状し難い魅力はあります。そう言う意味でも、やっぱり変なゲームです。
何とも言えない、少し変わったゲームをお求めなら、一度体験されてみては如何でしょうか。
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