- 2人~6人
- 15分前後
- 6歳~
- 2021年~
トリオ18toyaさんのレビュー
【レビュー】心理戦や駆け引きもあって、大人も楽しめる神経衰弱!
【評価8/10】
神経衰弱
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本作は日本生まれの小箱ゲーム「ナナ カードゲーム」を海外の出版社さんがアレンジし、フランスのボードゲーム賞である「アスドール賞2024」を見事勝ち取った作品。
フランスは割とコミュニケーションゲームや軽めのゲームを好む傾向があるらしく、こうしたお国柄も賞の獲得を後押ししたとは思うが、それにしても日本の作品がこうした国際的なゲーム賞を受賞するというのは素晴らしい事だ。
神経衰弱と聞くと、子供が小さい頃に家族で遊ぶトランプゲームの1つ、というイメージが無いだろうか?それゆえ「ルールは易しいだろうけど、本当に大人も楽しめるの?」と思われるかもしれない。しかし本作は記憶力だけではなく「相手がこの行動を取ったということは…?」など、心理戦や駆け引きも楽しめる作品となっているのでご紹介したい。
基本の流れ
本作は1〜12の各数字が3枚ずつ、計36枚のカードを使って遊ぶ。/post_image_26fcf3d9-71aa-43df-938e-0d02fb7373dc.jpeg)
ルールは「シンプルモード」と「スパイシーモード」の2種類があり、慣れていない人はシンプルモードから始めることをお勧めするが、読み合いを好むゲーマー同士のプレイなら、いきなりスパイシーモードで遊んでも問題はないだろう。
どちらのモードでも共通した流れは、遊ぶ人数に応じて36枚のカードを各プレイヤーの手札および場札として一定枚数準備し、これらの中から同じ数字のカードを3枚公開することが出来ればカードを獲得できるという点だ。
「同じ数字を当てればカードを獲得できる」点はトランプなどで遊ぶ神経衰弱と同じだが、その他は色々と異なる点がある。
手札がある!?
まずパッと見て「違う」と思うのは「場札と手札」からカードを公開する点だ。場札を開いて何の数字があるかを確認する際は通常の神経衰弱と同じように「どこが何の数字か」を覚えておく必要がある。しかし各プレイヤーは手札も持っていて、みんな個別の「初期情報」がある状態からゲームが始まるのだ。
これにより、数字を揃えてカードを獲得するために、皆は「自分だけが知っている手札情報」を元に動くこととなる。だが、逆に「あのカードを公開させたということは…ほほう?」と意図を読み取られる可能性もある。一方で「意図を読まれる可能性まで考えた上で裏を取ってる」のかもしれないし、裏の裏かもしれない。気分はすっかり「賭博黙示録カイジ」である。
たった36枚のカードからなるこのゲームだが、「大人も楽しめる心理戦と駆け引き」とはコレの事か、とご理解いただけるだろう。
カードの公開
カードを公開する際、場札の公開であれば普通の神経衰弱と同じように、伏せたカードのどれを捲っても良い。しかし誰かの手札からカードを公開する場合は「最小の数字カード」または「最大の数字カード」しか公開させることができない。このルールは自分の手札にも適用される。
従って、特に序盤は真ん中あたりの数字(6、7あたり)は、よほど手札が偏っていない限り公開させることは難しく、スタートは1、2、11、12辺りの「端の数字」からの公開が現実的という事になる。上手くいかなかった場合も、「Aさんの手札には12が1枚はあったな」とか「Bさんの最小数字は4か、偏ってるな〜」など、部分的な情報は得ることができる。
この「手札公開は最大か最小のみ」の縛りが、本作を記憶力頼りや運否天賦のゲームではなく「情報戦」に仕立て上げている。
カードの獲得
本作では同じ数字を3枚公開できれば、その公開した数字カードを獲得できる。ただし1枚目の数字と2枚目の数字が違ったら、3枚を同じ数字で揃えることはもう不可能だ。そのため、この時点で手番は終了となり3枚目を公開する事はできない。こうした点は「2枚を揃えればカードを取れる通常の神経衰弱」よりも厳しい。
首尾よく3枚同じ数字を揃えてカードを獲得できた時に、連続手番(同じ数字を揃えられたので、続いてまた自分の番!)が発生しないのも本作の特徴だ。つまり、1手番では最高に上手くいっても同じ数字1組の獲得にとどまり、そこで手番は終了する。
よって、一気に獲得枚数を増やすという展開はない。コレにより下記の項目で説明する勝利条件も相まって「一発逆転がどこからでも起こる、ヒリつく展開」が担保されている。
勝利条件
当面の目標はカードを3枚揃えて公開しカードの獲得を目指すことだが、最後にゲームに勝つためには以下の勝利条件を満たす必要がある。
勝利条件はモードによって異なる。シンプルモードだと
- 3種の数字カードを獲得する
- 数字の「7」を獲得する
のどちらかを満たしたプレイヤーが勝利する。
一方スパイシーモードは
- 足したり引いたりすることで7になる組み合わせの2種の数字カードを獲得する
- 数字の「7」を獲得する
のどちらかを満たしたプレイヤーが勝利する。
条件2の「7獲得」はどちらのモードでも共通しているが、1の条件の違いによりゲーム性は大きく変わる。
特にスパイシーモードでは如何に多くの数字を揃えて持とうが、足し引きをして7になる組み合わせを獲得できなければ意味がない。当然、他のプレイヤーはこれを阻止しようと動いてくる。「3+4」は一番危険な組み合わせだが、「11-4」「10-3」「9-2」なども比較的成立しやすいのでケアが必要だ。これらをケアする事によって場は混戦状態となるため中盤以降は「7の3枚」も勝負を決める鍵になりやすく存在感を発揮し始める。
いずれにせよ、どれだけリードしていても一発逆転があり得る「7による勝利」が、本作をピリッと引き締めたプレイ感に仕上げていることは疑いない。
チーム戦
また、本作では「4人または6人で遊ぶとき限定」とはなるが、チーム戦ルールも存在する。これは対面で座るプレイヤー同士がチームとなり、獲得したカードはチームで共有して勝利条件を目指すものだ。
個人戦との違いは「同じチームのプレイヤー同士は獲得カードを共有している」という点だけであり、勝利条件は個人戦のシンプルモード、またはスパイシーモードの条件を適用する。
チーム戦においては、チームメイトであっても言葉でコミュニケーションを行うことはできない。そのため「カード交換」で互いの意思疎通を図らなければならないのだが、これがなかなか難しい!だが、この容易ではない意思疎通自体も面白味となっている。
本作が「情報戦」「読み合い」「心理戦と駆け引き」が主戦場であるからこそチーム戦も熱くなる。チームメイトと他チームプレイヤーの絡み合った意図を読み解いて勝利できた時は、個人戦の勝利とは一味違った濃厚な喜びを噛み締めることができるだろう。
ナナカードゲームとの違い
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冒頭で述べたように、トリオはナナカードゲームの海外版である。しかし、ルールや対応人数は微妙に変更されており、元の素材の良さがベースにありながらデベロップ(調整)の力も光るゲームとなっている。
ナナカードゲームにおける勝利条件は
- 3種の数字カードを獲得する
- 足したり引いたりすることで7になる組み合わせの2種の数字カードを獲得する
- 数字の「7」を獲得する
の3つである。つまり、本作で言うシンプルモードとスパイシーモードの合体版だ。これにより、1を目指している人が2で条件を満たしたプレイヤーに足元をすくわれる展開というのは割とよく起こった。ただ、ナナカードゲームで遊んでいた時に7の獲得で勝利した展開を、筆者自身はあまり見ることが出来なかった。そういう意味で言うと、本作ではスパイシーモードで「3種の数字カードを獲得する」ことを勝利条件から除いた事により「7」はより存在感を持つようになったのではないかと思われる。
また、チーム戦も本作からの導入だ。実際に遊んでみたが、これも絶妙に楽しかったので良いルール追加だと思う。
対応人数もナナカードゲームでは2〜5人、本作では3〜6人となっている。この人数変更により少人数で遊ぶ際も一部のカードを取り除く必要がなくなり取り回しが楽になった。
最後に、箱の大きさや雰囲気、カードの大きさなど、コンポーネントが変わっている。どちらが好みかは人によるだろうが、ナナカードゲームはファンシーなイラストが可愛く目を引く。家族ゲームや女性が混ざった卓で遊ぶなら恐らくナナカードゲームに軍配が上がるだろう。勝利条件もモード別に分かれていないのは初心者にとってはむしろ有り難い。/post_image_2e72b389-adda-4b0c-840a-e5c4fc0cdfc9.jpeg)
一方で、読み合いが好きな大人の卓ではトリオがやや向いているかもしれない。カードのイラストはオシャレながらも落ち着いており、スカルにも通じる「大人の渋さ」がある。カードサイズもナナカードゲームよりトリオの方が若干大きいため、子供にはやや取り回しが悪いかもしれないが、大人であれば手に収まるサイズだろう。この層は最終的にはスパイシーモードで遊ぶのが常態化しそうだ。/post_image_c6ce56a7-246f-47f3-bc22-1c7bcfaa81d1.jpeg)
筆者は今後も、本作とナナカードゲームの両方を持ち続け、一緒に遊ぶ相手によって両者を使い分ける予定である。
本作の醍醐味
何度も書いてきたが本作の醍醐味は「情報戦」「読み合い」「心理戦と駆け引き」にあると筆者は考える。時間はあまり無いけど読み合いを楽しみたい、という時などに本作はフィットするだろう。人数幅が3〜6人と比較的広めで、収束性も高く切れ味の良いゲームのため時間以上の満足感を得られるものと思う。
しかしながら、記憶や読みを深く使わなくても「何となく」軽く遊べるところも良い。
本作の読み合いや駆け引き要素は本レビューの前半でたっぷりと記載してきたが、そうは言っても本作のコンポーネントは全36枚のカードのみであり、基本は神経衰弱だ。元となったトランプゲームを遊んだことがある人は相当いると思われるため、こうした「皆が知っているルール」をアレンジした本作はカジュアルに遊ぶことも比較的容易であり、その際はシンプルモードが活躍するものと思われる。
誰もが知っている「神経衰弱」をベースにしたシステムの懐の深さも本作の魅力であろう。
弱点
正直に言うとあまり弱点は見当たらない。小箱として、短時間ゲームとして非常に洗練されていると感じる。
あえて言うなら、カードが箱にジャストフィットサイズなのでスリーブを付けると収まらなくなる点が残念だった。
片側にカードを思いっきり寄せても余剰スペースはコレくらい。流石にスリーブ着用は厳しい
本作は裏向きのカードの中身が何か分からないことが大前提のゲームであり、角が少し綻びたり、裏面に傷がついてしまうといった、いわゆる「ガン付け」が大敵のゲーム性である。よって筆者は出来ればカードをスリーブに入れて遊びたかったのだが、スリーブ無しで内箱にピッタリ過ぎるため、箱を開封した時点でスリーブ封入を諦めた。今後もプレイはなるべくカードに触れずに済むカードスタンドを使用するだろう。
内箱を外してしまうにはデザインが凝ってるので、剥がしたり、自分で加工するのはちょっと勿体無い。
正直、プラスチックカード製とか、「プレスリーブ(出荷時点でスリーブに封入)」等があったら欲しいなぁと思ってしまった 笑
内箱の雰囲気も良いので外すには勿体ない…
まぁ、これはほんの些細な「玉に瑕」の話であり、小箱ゲームとしては弱点はほぼ見当たらない良作と言えるだろう。
まとめ
以上、本作「トリオ」について見てきた。本作は
・大人も楽しめる神経衰弱であり
・手札と場札から3枚、同じ数字を公開すればカードを獲得できるが
・手札から公開させるときは「最大または最小のカード」に限定される
・他人が何を公開させるかによりお互いの意図や手札を読み合う心理戦や駆け引きを楽しめるし
・連続手番がないので、7獲得による大逆転もどこから起こるか分からない、スリリングな展開となる。
・2つのモードが用意されており、勝利条件は微妙に違うが、カジュアルに遊ぶならシンプルモード、読み合いを楽しむならスパイシーモードとなるだろう。
・また、チーム戦ルールもいい味を出している。
・ナナカードゲームを既に持っていたとしても、使う場面が異なると想定されるため、大人同士で遊ぶ場面がある人は本作を追加で購入しても良いだろう。
・スリーブを付けると元の箱に収まらなくなる点だけが惜しいが
・総じて広い層が楽しめる、弱点の少ない良作小箱である
以上です!「18toyaはまた小箱に長文かよ!」とツッコミを受けそうな長いレビューになってしまって申し訳ないのですが(遊んだ方が早いよ!と言われそう^^;;)、でもたまには小箱を熱く語るレビューがあっても良いですよね?
最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございました!そしてデザイナーの宮野華也さん、受賞本当におめでとうございました!☺️
このレビューを読んでいただいた方の良きボドゲライフに少しでも貢献できましたら何よりです♪
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R6.12.30 スパイシーモードも遊べたので一部内容を修正しました🙏
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